ワンカップはおっさんの飲み物なんて言わせない|漫画『酒と恋には酔って然るべき』

藤井 松子 32歳 会社員。
周りは結婚・出産ラッシュで飲み友達が減り、いつしか一人晩酌が楽しみになっていた。
「ん〜 今夜は 野口先生っ」
そして最近 私が辿り着いたのがカップ酒
仕事終わりの1杯。
これが松子の至福の時間だ。
ある日の仕事中。
同僚に飲みに誘われ快諾する松子。
しかし、同じように誘われた隣の後輩・今泉は「仕事が残っているから」とやんわりと断っていた。
もしかして飲めない?
2人きりの時にそれとなく松子が聞くと「飲めますよ」という返事。
「飲み会嫌いなんです オレ ここで1番下っぱだから色々めんどくさいですし 時間のムダですし」
ストレス溜めてたのかなぁ……と心配しつつ、松子はサシ飲みに誘うと、あっさりと「…いいですけど…」とやや上から目線での返事が返ってきた。
最近の若い子は……と複雑に思いながらも
かわいいじゃないの!!
意外と笑い上戸。
話も弾む。
更に最近は家飲みにハマっていて、マグロのヅケを作って飲んでいると話すと「今度飲みに行っていいですか?」という今泉。
松子は社交辞令だと思いながら「いいよー おいでよ作るから」と答えた。
しかし、それは社交辞令ではなく、早々に実現する。
私も もう32歳なのでね わきまえてますよ 色々と
と、言いながらも3年ぶりに家に男性が来る、という事実に少し浮かれる松子。
ツマミを作り、「日本酒はわかんないのでお任せします」という今泉に「うちの地元の会津のお酒にするね」とゆめごころカップを振る舞う。
一人もいいけど、二人で飲むのもいいなぁ、と束の間の時間を楽しみ。
帰りがけの
「さみしいなら泊まっていきましょうか?」
という今泉の冗談を、テンション高くかわして。
ときめきは究極の美容液よね なんつって
と、明日の為に眠りについた。
翌朝。
「おっ ワンカップ松子!」
松子が家でワンカップを飲むことを、同僚に知られていた。
出どころは、確認するまでもない。
「すいませんでした 仲良くなれたのを他人に自慢したくて つい」
「え…」
「ワンカップ飲んでる女の人って初めてだったので…」
「あら〜 初めてをもらっちゃった♡」
たやすく家にあげるんじゃなかった、と後悔をしても後の祭り。
「こんな日こそ日本酒よ… 量も形もちょうどいい… カップ酒ばんざい…」
そうして、松子は今夜も一人、家でカップ酒を飲むのであった……。
TL漫画の人気作家の作品
著者は はるこ
TL漫画で活躍されている作家さん。しかも、読み切り作品のアンソロジーとかでも必ず名前が最初に出て来る、TL作品を読んでいる人なら知っている、ジャンルでトップの部類に入る作家さんです。
とても不思議な作家さんで、絵はあまり上手じゃないのですが(すいません)、クセの強いキャラクターと、読み手を翻弄するストーリー展開で“読ませる”作品が魅力です。
見た目重視な女性向けジャンルで、かなり変わった存在だと思います。
本作とは別に月刊Office YOU(集英社)で連載中の『隣の男はよく食べる』はドラマ化もしていました。
よしながふみさんや、水城せとなさんがBL作品から人気作家になっていったように、TL作品出身で同じように人気作家になっていくのかな……と、期待している作家さんです。
出版社は 秋田書店
掲載誌・レーベルは エレガンスイブ
発売は 2018年07月
既刊10巻。連載中。
尚、2023年8月29日までBookLiveで3巻まで無料公開されている。
10巻にして一味変わった?
とにかく、はるこさんの作品といえば、本作に限らず“悪い男”がとことん翻弄してくる、というイメージ。
本作でも後輩・今泉は はるこさんの作品の典型的なキャラクターで、飄々としていて、掴みどころがなく、かと思えば思わせぶりなことを言ったりする。
何せね。
この作家さんの何が油断できない、って。
今泉と松子、何だか良い雰囲気……? って思わせといてフラッと2人とも全然別の人と付き合うからね!!!
えっ、あれっ? そういう話じゃなかったの? この人と付き合うの? と思ってたらまた別れたりして。
しかも「やっぱりあの人じゃなきゃ…!」みたいな別れ方じゃないのよ。
それぞれ、色々事情があって別れるには別れるんだけど、それは他に好きな人がいるから…! とかじゃないの。
で、これも はるこさんの作品に割りとよくある展開ね。
もう、誰と良い雰囲気なのか、よくわからない(笑)
そういう意味ではリアリティがあるんだろうけど、登場人物たちが結構、一途じゃない(笑)
この作品もある意味“お約束”な展開で来たんだけど、今回意外な展開で良かったのは、最新刊の10巻。
色々あった訳ですが、結婚についての今泉のこのセリフが1番印象的でした。
「最高のタイミングを待つより 最悪のタイミングを避けたいなと」
松子の反応は冷ややかでしたが、私は割りと響きまして(笑)。
何かさ。
上手くやろう、上手くやろうとして失敗するよりも、上手くなくても、後悔のない選択をする方が大事、みたいな。
松子の言う通り「どんなタイミングよ…」って言われたら、よくわからないんだけど。
そして、10巻で初登場した、今泉の弟・悠里の存在も大きかった!
今までのらりくらりと正体を明かさないまま終わることが多かった、はるこさんの男性キャラクターの本音が垣間見えた、というか。
飄々としているから、何とも思ってない、というか、その時々で都合のいいこと言ってるの? と思ってしまうけど。
なんか、色々迷ったり、悩んだりしていたんだな、って。あ、ちゃんと人間だったんだ、みたいな。
私は残念ながら、下戸ですが。
飲める方には紹介されるたくさんの日本酒も楽しめる作品です。
そして、このまま順風満帆……と思いきやまだまだ波乱のありそうな松子の生活からも目が離せない作品です!
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