「ロートレック展 時をつかむ」展に行ってきた話

本日はある意味王道な「表現」に触れた話。
SOMPO美術館にて開催されている「ロートレック展 時をつかむ」展に行ってきた話です。

少し長めになりますが、今日も友達の家に訪ねるくらい気軽な気持ちで、お話にお付き合いくださいね。

みなさんは「アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック」という方をご存知でしょうか?
フランスを代表する画家のお一人です。
同時代にはゴッホや、少しズレるのかもしれないですが、ミュシャ等が活躍していたようです。
ミュシャと親交が深かった舞台女優のサラ・ベルナールの作品も手がけたことがあったようです(展示会にありました!)
また、SOMPO美術館の常設展示にゴッホの『ひまわり』があるんですが、今回ロートレックとゴッホの関係にも記載がありました。
一時期一緒にアトリエで過ごしたこともあり、共に個展を開くこともあったよう。けっこう仲が良かったそうです。
初めて知ったんですが、ゴッホに南仏アルルを勧めたのはロートレックだったんだとか。
気難しく気性が激しいゴッホと仲良くできたロートレックは、社交的ではなかったようですが、身近な人には懐っこさがあるお人柄の持ち主だったようです。
ロートレック展は、そんな作者の人柄にまで焦点をあてた、身近な人への制作や手紙なども展示してあって見応え抜群でした!

私はロートレックの作品を見たことはあったんですが、この展覧会でしっかり当人について知った感じです。
代表的なポスターなんかは見たことがあって、はっきりとした色使いでおしゃれな雰囲気に一回ちゃんと見てみたいって思っていて、今回新宿で展覧会があると知って滑りこんだ感じです。

実際展覧会に行ってすごく良かったなと思ったのは、いい意味で印象を覆させられたことがたくさんあったことです。

ひとつひとつお話していきますね。
あくまで私の新鮮な感想だと思ってください。

一つ目 「線の画家」
この方は「線の画家」というくらい線、素描に力がある方だったんだということ。
ポスターを見て勝手に「配色、はっきりした色使い」が特徴的な方だと思っていたんですが、その魅力の真骨頂は「線」にあったんですね。
実際、最初の展示室でそう教えられるがままに見た素描はどれもすごい迫力がありました。
私達もよく使う「紙、鉛筆」または「紙、ペン」それだけで描かれた人や動物、人体の一部や仕草は私達にも見慣れた画材だからこそ誤魔化しも言い訳もきかない状態です。
そんな状態で、ちょっと書きかけっぽいものを切り取っても圧倒的な形の上手さ、観察力の鋭さでした。
今にも動き出したり、話だしたりしそうな生き生きとした魅力が素描だけでもありました。
実際、最初に素描を書き出した7歳の頃から晩年36歳までで5000枚弱書き残しているのだとか。
単純計算でも「1日1点素描を書いている」と説明書きに記載がありました。これだけしっかり観察して描いていれば形も上手くなりますよねと納得でした。
また、この後の展示や館内の案内に記載されたエピソード、晩年体調を崩す前後などでも新しい技法を取り入れる様子に「この人はずっと『描くこと』が楽しかった人なのかもしれない。だったら、線だけでも形を捉えた魅力あふれる絵が描けるのもわかるなぁ」と思いながら見ていました。
勝手に想像しただけなので実際どうなんだろう? 今度ちゃんと調べてみますね。

二つ目 「動物の躍動感」
また、最初の展示に戻るのですが、その生まれから「馬」に馴染みがある方だったらしく、馬や馬に乗った騎手の素描が多かったです。
私事ですが、幼い頃ディズニーの一場面、白馬の王子様とお姫様のセットに憧れたり、専門学校の題材で馬を描くことが多かったんですが、めっちゃ難しい。
人が乗れるシルエットも筋肉の流れも、意外と優しい目をしていて、綺麗な生き物然とした佇まいも本当難しい。苦労した記憶があります。
だからもう、あまりにも躍動感溢れる馬の素描だけで感動しました。
「どうしてそんな角度から描けるの?」って思っちゃいます。

またロートレックが最初に師事した画家は動物を得意とした方だったとか。
だからなのでしょうか?
その後出てくる絵に、動物が主題でなかったり、背景に小さく写っているだけであっても本当、動物がうまいんです。
「あ。こんな仕草するする!」「こーいう脱力感あるポーズとる!」「こんな絶妙な表情するよね!」と思うような瞬間が度々ありました。

三つ目 「「性別」でない人物の魅力」
ロートレックの作品に「版画集『彼女たち』1896」という作品がありました。娼館をテーマに幾人かの娼婦を取り上げた作品だったのですが、ロートレックが娼婦を「一人の人間」として捉えた表現を用いたため、当時の読者からは「期待した程煽情的でなくあまり売れなかった」のだそう。
実際の評価はさておき、私がその説明を読んで気付かされたのは「確かに!」と思う
ロートレックの作品から受けた印象です。
説明を読んでそれまで見た同じ展示室の女性の絵を見返すと、裸体などを含めたとしても、本当に「いやらしさ」「性的」といった印象を受けないんですね。
男性も女性もどちらにも言えるんですが、生き生きとした魅力や、動き出しそうな躍動感はあるのに、ラインやシルエットから作者の考える「性の魅力」は本当に感じ取れないんです。
無機質だったり、記号的だったりする作品ならわかるのですが、あれだけ圧倒的に線だけで「人」を表現している画家で、そんな印象を持つのは珍しいと感じました。
それでいて、先程も書いたように線だけでもどんな表情か、何を言っているかわかる作品ばかり。
目の動き、口元の開きや皺の線。それだけで単純な喜怒哀楽以外の複数の気持ちがこもっていそうな表情もこちらまで伝わりました。この人は真に人の内面まで観察して、それを圧倒的な画力で紙に捉えることができる人だったのかもしれないと思いました!

4つ目 「ロートレックの持つ「女性」の美しさ」
3つ目の補足の感想になります。
先程「性的」「いやらしさがない」と記載しましたが、ロートレックの描く女性に女性的な魅力がないわけでは決してないんですよね。
先にお話した「版画集『彼女たち』1896」の中にある「髪をとかす女」という作品でも、髪をとかす女性の仕草を描いているんですが、首を傾げた角度とか櫛を持つ指先とか、すごく覚えのあるポージングです。長い髪の女性なら一度はやったことあるんじゃないでしょうか?
そういったあたりまえの仕草の切り取りなんですが、こぼれる毛束や、髪を抑える指先の曲がった感じとか、腕を曲げた時の白い二の腕のふっくら感とか、露出の多い胸元より煽情的です。
また「イヴェット・ギルベール 1893年」と「54号室の女性船客(白黒版)1896」という作品があったのですが、この女性達、本当に美しいんです。
ギリシャの彫刻を見ている感じとは対極にある(と私は思ってます)生きている女性の美しさ。生命力に満ちています。
露出は少ない作品なんですが、不思議と表情や仕草に彼女達の艶めかしさや、品のある色気が満ちています。
「イヴェット・ギルベール 1893年」のモデルになったのは、歌手のイヴェット・ギルベールです。ロートレック自身彼女を気に入っていたため色々な作品に登場しています。
人気歌手だからこそ見ている人から「ここが魅力的」と言われている部位や、ロートレック自身が観察して捉えすぎたために本人から怒られた体の特徴があるんですけど、そういった部分がポージング以上に雄弁なんです。
個人的には、彼女のトレードマークだった肘上まで隠れる黒い長手袋につつまれた腕の細さだとか「アルバム『イヴェット・ギルベール』のための広告 1894年」という作品の、手袋だけで彼女を表した作品の指先はすごく艶かしく写りました。
薄い唇も本人は気にしていたようだけど、その薄さが本当に引き込まれる横顔を作っていると思います。
「54号室の女性先客(白黒版)1896」はロートレックが旅先で一目惚れした女性。
きっちりした服に身を包んで、船上の椅子に座って本を片手に海を眺めている女性の横顔です。
品のある淑女という出立ちですが、一目惚れした対象だからか、結った髪の筋や力の抜けた表情、顎下から首につながる輪郭線のやわらかさ、横顔から覗く睫毛一つとってもゆったりした雰囲気なのに「さわるとどんな心地がするんだろう?」と想像させるような色気がある作品です。
この人の表現する「人としての生命力」の中に女性を表現する「魅力」も詰まっているなぁと勝手ながら思いました。

5つ目
ちょっと総評じみているんですが、線の話を踏まえた上で、最初に私が「見たことある」と書いたポスターの絵を見た時の印象の話になります。
あの圧倒的な素描力に支えられていると考えるとポスターの「シンプルな一本だけ選び抜かれた線と、色の構成』に納得です。
版画表現や好み、当時の流れや依頼者の注文もあるとは思うのですが、たった一本の線だけであれだけの情報量を含めることができる画家に、たくさんの色はなくても訴えかけるような魅力的な作品が成立するのはあたりまえだよなぁと納得した感じ。

本当に行ってよかったなぁと思う展覧会でした。
当時の時代柄、戯曲や舞台、ムーランルージュ、キャバレーといった文化に馴染みが深い方だったこともあり、作品に描かれた演者の演じていた題材とかも知らないものばかりだったので調べてみたいなとワクワクしました。
また、大衆から芸術好きな上客まで幅広い層を顧客としていただけあり、風刺の効いた作品や、強いメッセージ生のある小説の表紙などにも縁のある画家だったのだと知れました。これを機に少し題材にも目を向けてみたくなりました。
今回改めて絵の「線」にこめられた魅力を認識しました。
久々にドローイングとか人物スケッチとかやってみたくなりますね。この人ぐらい毎日描くつもりでやったら思い通りの線がひけるようになりますかね?

私は展覧会で図録を買うのが好きなんですが、図録にも良し悪しがあったりします。
とはいえ、どんなに良くてもやっぱり作品そのものには敵いません。
今回、改めてその魅力を存分に堪能できました。単純にとても楽しかったというのもありますが、今年はもっと「展覧会」で「本物」に触れる機会を作ってみようかな。

みなさんはどんな作り手が好きですか?
好みの画家はいますかね?
長々とお付き合いくださりありがとうございました。

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