食べるってすごい、生きたくなっちゃう。「まだ温かい鍋を抱いておやすみ」彩瀬まる
これから寒くなる季節にお薦めしたいと思う
作品をひとつ、選んでみました。
頁も多くありませんし、どなたでも、
普段本をあまり読まない方でも、
するりと読んでいただけるような1冊です。
今回紹介するのは、こちら。

タイトルから優しいでしょう?笑
彩瀬まるさん大好きで、他にも大好きな作品が
沢山あるので、他の作品も紹介したいな。
この「まだ温かい鍋を抱いておやすみ」は、
タイトルからも連想される通り、
それぞれ食べ物にまつわる、6つの物語です。
この6つの物語はまさに、
食べて明日を生きようとする、
食べて一歩を踏み出そうとする、
そんな人たちをどこまでも温かく描いている。
これまで私はnoteの記事の中で何度も何度も、
食べることは、生きること。
美味しいは、しあわせ。
そう書いてきました。
生きてゆく日々には、苦しみや痛みを抱えながら
それでも淡々と歩き続けなければいけないときがある。
食べものは、食べるという行為は、
そんな日々を、そんな人びとを、
根っこから支えるものだ。
泣くという行為と、食べるという行為は、
なんだか似ていると私は思う。
泣きながらごはんを食べたことがある人は強い、
泣くのも、食べるのも、生きたいからなんだ。
この本を読み終わった瞬間、きっと、
今食べたいものが心に浮かぶはず。
6つの苦しくも温かいお話たちを、
心に残った言葉たちと合わせて、
私なりにほんの少しずつ紹介したいと思います。
週に1度来店する、いつも不思議な風を纏う
"鳥が食べられない美人さん"。過去から
一歩踏み出すために、鶏肉料理を口にする。
「ひと匙のはばたき」
ずっと頼ってきたものを捨てるのは怖いでしょう
他には何もいらないからこれだけ作ってほしい、
そう彼女から手渡された"枝豆チーズパン“と
書かれたレシピ。あれがなきゃ生きていけない
と、古い傷をこねて安堵するような、悲しい
存在になってしまっていたパンだった。けれど…
「かなしい食べ物」
家族とはなんだろう。生きて溜めた汚泥を
分け合うことが義務なのか。
不安で心身がすり減る日々、平気な顔をして、
愛人を作っても、ジャンクなピザを食べても、
満たされなかった心のうちを最後に満たしたものは。
「ミックスミックスピザ」
私たちの足はなんて重くなったんだろう。
決して落とせない宝物を背負い、疲れ、
病を得て、無数の問題を引きずり、死ぬまで
口にできない弱味まで抱えた。荷は増え続ける
だろう。それでも、二人で行く。
家族の好みを優先するうちに、自分の食べたい
ものがわからなくなっていたことに気づく。
家族が自分の好物を知らないことにも。
そして自身も、亡き母の好物を知らなかったことを思い出し…
(こちらは裏表紙のあらすじを短くまとめました)
「ポタージュスープの海を超えて」
今を生きている母親たちが、ここではない
場所に住まうかつての母親たちが、
好きなものをたくさん食べますように。
料理家の夜子は、息子を亡くし生きる意味を
見失った中学時代の友人を「好きなだけいたら
いい」と家へ招き、"生きたい"と"消えたい"を
行き来する友人へ、ただ毎日食事を作る。
「シュークリームタワーで待ち合わせ」
「食べるってすごい」
「すごくて、こわいね」
「こわい?」
「生きたくなっちゃう」
さくさくと噛み砕かれ、ごくんと嚥下された温かいかたまりは、否応なしに彼女の血肉を潤す。
これであなたは、明日も死ねない。
生きると決めた以上、この人はこれからも
苦しくて痛みを伴う日々を淡々と歩き続ける
のだ。強い方がいい。濁っていた方がいい。
苦しい時間を耐えていく人の食卓に豊かさを
作りたい。
三十数年の付き合いのある友人が病に伏せた。
離婚した時も、母が亡くなった時も、娘にご飯を
作りに来てくれた優しい、気の良い友人が残して
くれたのは、温かい鍋の音だった。
「大きな鍋の歌」
生きることは食べることで、
食べることは殺すことだ。
個人的には、1話目の「ひと匙のはばたき」が
不思議な、そして意外な展開で、特に印象に残っています。
さらりと読めてじんわりとしみ込んでくる、
温かいスープのような1冊、読書の秋にいかがですか。

それではこの辺で。
今日も1日おつかれさまでした。
最後まで読んでくださってありがとう。
また気が向いたら、来てくださいね。
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