【熊本地震】経済の復興なくして、被災地の復興なし
令和8年7月28日、熊本県氷川町を震源とする震度7の大地震が発生して今日で1週間となります。このたびの熊本地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
1週間経った今も、宇城市・氷川町・八代市では断水が続いており、8月4日05:00時点で44,000戸が復旧していないとのこと。電気は概ね開通し避難所等のエアコン設置など環境はずいぶん改善されつつあるものの、昨日は熊本市で県内初の40℃を超える酷暑日を記録しており、被災者の皆様の体調がとても心配な状況です。
被災者の皆様の支援に関しては自治体や国を中心に多くの支援団体も加わって精力的に活動されていらっしゃるので、私は災害時に焦点が当たりにくい被災地及び周辺エリアの経済活動について書きたいと思います。
止まらないキャンセルの嵐
地震による直接的な被害が比較的軽微だった天草、阿蘇、人吉、山鹿、黒川温泉など、熊本県内の多くの観光地でも、宿泊や観光施設の予約キャンセルが相次いでいます。
当社にも地震発生直後から多くのキャンセルが入りました。当社では船舶や施設の安全確認を行い、営業に支障がないことを確認したうえで通常営業を続けています。公式サイトでリアルタイムに交通情報を更新し、お客様へ正確な情報提供を行いました。
それでも「熊本で地震が起きた」という情報だけで旅行そのものが取りやめられています。もちろん、お客様が地震に対して不安を感じることは当然です。交通アクセスが回復しても余震の可能性など不安要素が拭えなければ、旅行を延期しようと判断する方もいると思います。
しかし、熊本県全体を一つの被災地として捉え、被害がほとんどない地域まで一律に旅行を取りやめる動きには、かなり強い危機感を持っています。なぜなら、被災地以外の観光地では、地震による直接的な被害よりも、風評被害や自粛による経済損失の方が大きくなり始めているからです。
11年間で4度目の大規模災害
私は2015年に株式会社シークルーズの代表取締役に就任しました。その翌年には2016年熊本地震が発生し、2020年には令和2年7月豪雨が人吉球磨地域を襲いました。さらに2025年8月の豪雨災害、そして今回の令和8年熊本地震です。
社長に就任してから11年間で、今回が4度目の大規模災害になりますが、私は自称”日本一災害に強い経営者”だと自負しています。
2016年の熊本地震の際は4月14日、16日の2度の震度7で熊本県が壊滅的な被害を受けた中で、当時内々で就航を準備を進めていた「スイーツクルーズエルミラ」を予定通り就航させようと決め、4月26日に東京へ飛びドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治先生を訪問。そこで水戸岡先生と最高の船を作ろうと決意し、実際に7月15日に就航し大きな話題を呼びました。この就航が天草観光の安心感につながり大きな需要を呼び込むことができました。



また、2020年の熊本豪雨では、当時私が代表を務めていた球磨川くだりが壊滅的な被害を受けました。所有していた12隻の船はすべて流出し、トラックやクレーン車、マイクロバスなどの車両も水没しました。事務所には泥水が流れ込み、パソコンや書類、売店商品など、多くの財産を失いました。文字どおり、残ったのは借金だけの状況。
それでも、被災から4日後には大量の重機を投入して土砂の撤去を開始し、約1か月後には再建チームを発足させました。その後、球磨川くだりの発船場を、単に元の状態へ戻すのではなく、飲食、物販、観光案内、アクティビティを備えた複合施設「HASSENBA」として再建しました。
災害前の施設を復旧するだけでは、地域の衰退を止めることはできません。だからこそ、災害前よりも多くの人が訪れ、地域の事業者や生産者にも利益が波及する施設へ変える必要があると考えました。
お陰様でHASSENBAは人吉の新たなランドマークとなり、人吉観光の中心地として多くの観光客にご利用頂いています。


記憶に新しい昨年8月11日に上天草市に甚大な被害を及ぼした令和7年8月豪雨災害では、いち早く安全及び交通情報を発信。その結果、8月13日には朝から船は満席となるほどたくさんのお客様がお越しになり、周辺の飲食店やお土産店、宿泊施設の売上回復に貢献することが出来たと自負しております。
風評被害によって売り上げが激減する観光業、飲食業、企画会社なども間接的ではありますが被災者なのです。つまり、何が言いたいかというと被災者には最大限の配慮をしつつも、自粛ばかりしても何もメリットはなく、経済を回し続けることも一早い復興に繋がるということです。
インフラが直れば復興したことになるのか
災害が発生すると、道路、橋梁、河川、鉄道、建物などの復旧状況が大きく報道されます。もちろん、生活や事業を再開するためにはインフラの復旧が不可欠であり、最優先で取り組まなければなりません。
しかし、道路や建物が元に戻ったからといって、地域が復興したとは言えない。観光客が戻らず、売上が回復しなければ、事業者は雇用を維持できなくなります。雇用が失われれば、働く人は地域を離れ、地域内の消費も減少します。その結果、飲食店や小売店、交通事業者など、災害の直接的な被害を受けていなかった事業者まで経営が悪化していきます。
災害から数か月後、あるいは数年後にインフラが完全に復旧したとしても、その時点で地域の事業者が廃業し、働く人がいなくなっていれば、復興どころではありません。
観光業は、宿泊施設や観光施設だけで成り立っている産業ではありません。観光客が1人訪れれば、鉄道やバス、レンタカー、船を利用し、宿泊施設に泊まり、飲食店で食事をし、土産物を購入します。宿泊施設や飲食店の裏側では、食材業者、農家、漁業者、清掃会社、クリーニング会社、運送会社など、多くの事業者が関わっています。
つまり、観光客のキャンセルが1件発生するということは、宿泊施設の客室売上が1室分失われるだけではありません。夕食や朝食、交通、観光施設、土産物など、地域内で発生するはずだった複数の売上が同時に失われるということです。
このキャンセルが100件、1,000件と積み重なれば、地域全体に与える経済的な影響は非常に大きくなります。実際に当社も既にキャンセル600件・2,600人となっており、甚大な被害となっています。
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