【第56回】3つのお題に空想のひらめきを/【短編】吾輩は大賢者である
【第56回】3つのお題に空想のひらめきを
1. ファンタジー部門
🎈 お題①:「巨大な本の上で眠る猫」
🐾 お題②:「花びらの舟」
⏳ お題③:「ガラスの城と白い鳥」
いつも方向性のズレた作品を受け入れて頂き有難う御座います。
今回は童話っぽくなるように頑張ってみました。
3000字程になります。
ご意見頂けましたら幸いです。
吾輩の名は
『ワー・ガ・ハイワー・ネコデアール』である。
名前の前に『大賢者』、または『大魔法使い』をつけるとなお良い。
旅人よ今日はなんぞ御用かな?
おお、様々な地を巡り、各地の話を集めておると。お若いのに酔狂な事だ。
折角だ、我が元に来たのも何かの縁。
とある亡国の話でもしてやろうかの。
おい、弟子よ!不肖の我が弟子よ!
「……ウッサいわねー。何か御用ですか?師匠」
ここに来てから結構経つのに、まだ口の悪さは治らんなぁ。まあ、良い。あの滅んだ国の話は何処に記したかのう?
「……あの国の話でしたら、師匠が自堕落にベッド替わりに寝そべっておられる、その下に敷かれた日記帳ではないですか」
おお、そうだった。100を超えてからとんと思い出すのが億劫だわい。よっこらしょっと。
えーと、どれどれ……おお!あった、あった。
待たせたの。旅人よ。これは少し前の話だ……
***
あるところに聡明な両親の愛を一身に受けた姫がおりました。
しかし、統治者として優秀だった国王夫妻でしたが、親としてはダメダメでした。
それはもう目に入れても痛くないと言った猫可愛がりで、当然のように甘やかされて育った姫は、それはもう我儘が服を着て歩いているがごとくの状態のため、家臣一同王国の将来は一体どうなってしまうのかと嘆きが聞こえる始末です。
そんな嘆きを、地底の悪魔が聞きいれたのか、ある時国王夫妻が姫を残して遥か高みに昇ってしまいました。
姫はこの時12歳。国は上へ下への大騒ぎ。すわ、王国の滅亡か?それとも下剋上の時代が到来か?
不穏な空気が王国を覆います。
しかし、どうしたことでしょう。蛙の子は蛙。王の嫡子は王の器に相応しい知恵を持っていたのです。
姫はそのもって産まれ持った才能を遺憾無く発揮し、あれよあれよと支配を盤石ものとしてしまい、よからぬ二心を抱いた者はみんな地の底で眠りつかされました。
残った者たちもこれで一安心と、思いきや、至尊の座へと就いたこの姫、とたんにやる気を無くしてしまいました。
全てを家臣に丸投げし、成功するのは当然で、失敗したらけちょんけちょんになじります。
そのうえ次第に我儘心がむずむずと鎌首を上げ、無理難題を言うようになったのです。
西に2つとない宝石の様な花があれば如何なる犠牲を払ってでも入手させ、東にこの世の何より真白な大鳥あらば兵士を動員してペットにしようとするといった傍若ぶりでした。
……今思うと自分がどれだけ愛されているのかを試していたのかもしれません。
民の事を顧みず、この世で出来ない事など無いような姫でしたので、周りがどんどんきな臭くなっていきました。
そしてとうとう、姫を両親の元へ送って差し上げようという計画が姫の耳にはいります。
幸いはかりごとは始まったばかりだった為、事なきを得ましたが、首謀者がいけません。何と姫を幼い時から世話をしていた家臣だったからです。
姫は誰も信じられなくなり、次第に私室にこもり、誰とも顔を合わせようとはしなくなりました。そしてイライラが募った姫は決めました。高名な魔術師を招いてある事をさせることをです。
やがて、大金を贖った姫の元に、偉大な魔法使いがやってきました。
猫です。人ほど大きな猫が、とんがり帽子を被り2本の足でやって来ました。
姫もこの時ばかりは大変なはしゃぎようです。
もふもふしようと少しばかり駆け引きがあったほどでした。
束の間の攻防戦に一段落がついた後、姫は猫に本来の依頼をしました。
それは、城の壁や塀を全てガラスの様に透明にするという奇天烈な依頼です。
さすがの大魔法使いも暫く宇宙猫の様な表情を浮かべていましたが、一応何故その様な事を思いついたのか姫に尋ねます。
すると姫はいいました。お城には私に隠れてよからぬはかりごとをする場所が多すぎる。だからガラス張りにして隠れる場所をなくすのよと。
ロウソクの節約にもなるかしら?と無邪気に笑う有様です。
普通の魔法使いだったら断るところでしょうが、残念ながら大魔法使いは変わっていました。猫ですし。面白いと、悪魔のようにニヤリと笑うとただ一言、『ヨシ!』と言う掛け声と謎のポーズをともに、目の眩む光が溢れだし、気がつけばお城はガラスの様に透きとおっていたのでした。
当然みんな驚き慌てふためきました。それを見ていた姫は大声をあげて笑いだしました。涙で目がいっぱいになり、お城にいる人達、全方位からどの様な目で自分をみているのかもわからずに。
一仕事終えた大魔法使いは、立ち去る前に姫に言いました。貴方はとても面白い方だ。気に入ったのでおまけをつけておきました。その時が来たらきっとお役に立つでしょう。
それではまた何処かで。そう言って煙のように消えたのでした。
さて、革命が起きたのはその後すぐの事です。国の象徴を透明張りとして、常に衆人環視のパノプティコンの様な有様に政治が滞り、徐々に国を統治する機能が果たせなくなって、国は荒んでいきました。
やがてこの暴挙を誰にも相談もせずに行なった姫に怒りが集中し、ある時あっけなく崩壊したのです。今となっては引き金は何だったのかわかりません。ただ皆が、姫を断罪する為に血眼になって探し出そうとしました。
しかし知恵のまわる姫は一向に見つかりせん。巧みに包囲をすり抜けました。それでもやはり小さな女の子に変わりはありません。やがて疲労の為、特別に作らせた温室で休憩を取ることにしました。
そこは東西から集めさせた花や白い鳥が集められた一種宝物庫の様な場所でした。
姫が仮眠から目覚めると、温室の周りが騒がしくなっている気配が伝わりました。
どうやらとうとう退路を断たれたようです。
もはやこれまでと達観した姫でしたが、そこで奇跡が起こります。
何と、宝石の様な花弁がひとひら舞い落ちたと思った刹那、みるみるうちに花弁の小舟へと変わっていったのです。それだけではありません。真白い大鳥が舟に乗るよう促すのです。
これが魔法使いの言っていたおまけに違いないと、姫は早速舟に乗り込みます。すると大鳥がいつの間にか咥えていた、舟に繋がった光のロープを牽引し、高く空へと羽ばたきました。
羽ばたいた後、ガラスの城は振動と共に崩れ去り、キラキラと空気に散らばっていきました。
こうして、王国は滅び、姫は遥か空へと消えたのです。
後に主を失ったこの国は隣国に併合され現在にいたります。
姫は果たしてどうなったのか?それは誰にもわかりません。
おしまい。
***
どうかな?少しは足しになっただろうかの。
なに?聡明な姫がどうして暴君になったかだと?そんな事、猫のわしが知るわけなかろうて。のう、弟子よ。
「何でアタシに振るのさ?……う〜ん。きっとつまんなくなっちゃったんじゃないかな?何でも出来るって、何にも出来ないのと一緒なんじゃない。知らんけど」
そう言うもんかのう。まあ、あれじゃ。他人の考えなんか誰もわからんもんよ。自分自身だって怪しいものじゃて。
「お師匠、最近物忘れホントヒドイよな〜」
客人の前で酷い事を言う弟子もいたものだ。
のう?そなたもそう思うじゃろ?
実際、最近忘れっぽくてなぁ。だから、いくら姫の行き先を聞かれても困るんじゃ。
そう、そなたの雇い主には伝えてくれんかの?
お互いの為にな。
了

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