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せりふ三題噺/【短編】性癖の強いお姉様

■セリフ
「これはきついって」
■三題
・氷
・サンバルソース
・豚
いつもお題の発表有難う御座います。
約2500文字で参加させて頂きます。
皆様よろしくお願いします。


お姉様の家に招待されたの。
こんなぽっちゃりで自分でも良いところが一つも思いつかない私をよ。
「貴女、今度の土曜日うちにいらっしゃいな」
沢山の生徒のいる下駄箱の前でよ?
その時の周りの方々の視線の凄い事……神話の蛇女さながら、石にされそうな思いだったわ。
「お姉様✕ポル子さん……これはきついって」
ほうぼうでそんな囁きが聞こえる。
流石に年頃の女子に向かって失礼じゃない?
あ、ポル子は私の名前ね。
何でこんな事にと、思わなくもなかったけど、何せ全校生徒の憧れのお姉様に直接ご指名頂いたら、それはもう諦めるしかないと思えちゃうわよね?
当然、私もお姉様大好きだし。

そんなこんなで土曜日を迎えて、いざ家を出ようと外に出ると、何と、家の前に送迎用の車まで用意されていて、如何にも執事っぽいナイスミドルのオジサマにエスコートされ、圧倒されているうちに気がつけばお姉様のお宅に到着していたわ。
高台の大きなお屋敷。まさにお姉様が住むに相応しい偉容を誇る佇まいで、門から玄関まで車で移動する必要がある程っていえば伝わるかしら?
「ようこそ、ポル子さんお待ちしていたわ」
玄関からエントランスホールに入って内装に圧倒されていると、当然のように2階からお姉様がお声をかけて下さったの。
「お、お姉様。ほほ、本日は……」
「そんな緊張なさらないで?実は少々急用が入りましたの。それで申し訳ないのだけど暫く寛いでいて下さらない?家政婦の市原をつけるから」
「お呼びしたのにごめんなさいね」と言いつつお姉様は下がり、私の近くの柱の後ろから覗く様にこちらを見ていたおばさん=市原さんがどうぞこちらにと言って私を奥の扉に案内してくれた。

「こちらの応接間にてお待ち下さい。只今お茶をお持ちします」
「お、お構いなく……」
応接間って本当に存在したんだ……。置いてあるものがどれもこれも高そうに見えて少し怖い。
暫く落ち着かないままイスに座っていると、市原さんがティーセットを持って入ってきて、支度をはじめる。その洗練された支度の様子を見つめているとテーブルにいい匂いの紅茶が……
「おっと」
棒読みみたいに感情が乗っていない「おっと」だった。
バシャッ
「熱っ」
私のスカートに注がれた。幸い、火傷はしなくて良かった。
「大変失礼いたしました。お怪我は?……良うございました。お召し物を洗濯させて頂きますので、取り敢えず浴室にてご入浴をしてお待ち下さい」
感情が一切籠もっていないセリフを読んでいるような……。一流の人はどんな事態でも決して動揺しないようだ。
「どうぞ、念入りにお体をご洗浄なさって下さい。またお上がりになりましたらお声がけ下さいませ」
入浴前に、柱の後ろに半ば隠れた格好で市原さんが言った。
そして、あれよあれよと流されて、私はお風呂に浸かっている。
初めて来た家でお風呂までいただくなんて……。
(何かこれって、噂に聞く『初めての夜』みたいじゃ……私はこれからお姉様と初めてを……って、キャーッ、何言ってんの私!)
流石に妄想が痛々しい。頭を冷やさなきゃっ、てよく見たら水風呂まである。スパかな?
丁度良い。妄想を追い払う為一息に入る。
ザブーン
「ぎゃっ!冷たっ!」
急いで出て湯船に逃げ込む。心臓止まるかと思った!水風呂じゃなくてもはや氷風呂だったよ!
釣られて締められる魚の気分がわかった気がした。釣りなんてした事ないけど。
温まり直してお風呂から出ると、置いてあったのがなんでか紙製の下着。浴室の外にいるであろう、市原さんに声をかけた所、マッサージの準備を整えていると言われたのでしぶしぶ装着して、併設されたマッサージルームに寝そべる。
「それでは身体の力を抜いて下さい」
市原さんは施術の資格も持っているらしい。見かけは普通の家政婦さんぽいのに凄い。
……何か肌がピリピリするような……。
「あの、ちょっとピリピリする気が……」
「はい、少々刺激がある特殊なソースを使っております」
ソース?オイルとかクリームじゃなくて?
「こちら痩身、お肌の引き締めにとても効果的です」
「よろしくお願いします!」
痩身効果じゃしょうがないね。匂いもスパイシーでちょっと美味しそうな気がするし。
さながら下味をつけられるお肉のような……いや、やめておこう。
マッサージ自体、とても気持ちよくってちょっと眠くなってしまう所だった。

「お疲れ様でございます。こちらのガウンを着て、隣の部屋でお待ち下さい。間もなくお嬢様も参ります」
え?この格好で?服が乾かないから仕方ないのかな……。
通された部屋は何故かベッドがある、普通に個室だった。
「今しばらくお待ち下さい」
そう、半開きのドアから半身だけ出した格好で市原さんは言い残してドアを閉め去っていった。
コンコン
「入ってよろしいかしら」
「は、はい」
お姉様の声に思わず反射的にお応えする。
「ポル子さんお待たせしてごめんなさい。やっと片付いたわ」
「い、いえ。それより、あの、その格好は?」
お姉様は私と同じガウン姿だった。
「これ?貴女が緊張しないようにと思って、お揃いにしてみたのだけど駄目かしら?」
怪しい笑みを浮かべて、お姉様は首を傾げる。
「だ、駄目じゃないです。た、ただ、し、刺激が……」
目のやり場に困って視点が定まらない。
「大丈夫よ。これからもっと刺激的な事になるから……」
近い、近いですお姉様!
「私ね、初めて貴女をみた時感じたの。この子こそ私の理想だと」
頬にヒンヤリとしたお姉様の手の感触が伝わる。気持ちいい。
「で、でも私なんてただのぽっちゃりの何の取り柄も無い……」
唇に人差し指で鍵をかけられる。
「自分の事を悪く言うものではないわ。自信を持ちなさい。現に私は貴女の虜よ」
「お姉様ぁ……」
身体が火照って来た気がする。
お姉様の白磁の肌も朱に染まっている。
嗚呼、私は今日、ここで……
「その豊満な身体で、私を思いっきり踏みつけて、豚と罵り、私だけのご主人様になって頂戴な」
「ハイぃ…………え?」
「ああっ嬉しいわ!ご主人様ぁ」
いや、おかしい。これはおかしい。
第一、私は支配される側のはずだ。解釈違いだ。
急に現実に戻る。そして思わず、

「これはきついって」

市原さんは扉のすき間から見ていた。



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