【ショートショート】激情と計算のあいだ #青ブラ文学部/「黙っているのは嘘つきと同じよ」
手に濡れた刃物を持ったまま、女性が、
ベッドに横たわる影に問いかける
「……ねぇ、答えてよ」
「……」
「昨日、何処に行ってたの」
「……」
「知らないとでも思ってるわけ?」
「……」
「一緒にいたの、貴方の会社の後輩の娘でしょ?」
「……」
「しらばっくれるつもり?」
「……」
「ホテルに入って行ったの見たんだから」
「……」
「ちょっと前から怪しいとは思ってたの」
「……」
「行きと帰りで違う匂いがしたし……」
「……」
「黙っているのは嘘つきと同じよ」
「……」
「何とか言ってよ!言いなさいよ!!」
影を激しく揺さぶる。
ごろり。
床に落ちた。
立ち尽くす女。
「ただいまー」
ドアが開く音がして玄関から男の声がした。
ふう。
一呼吸の後、女は笑顔を被り、男を迎える。
「おかえりー」
寝室のズタズタに切り裂かれた枕を残して。
「何、どうして包丁持ってウロウロしてんの?」
「ごめーん、料理中に電話があったから」
(口は災いの元、言わぬが花。興信所の方はそろそろかしら。)
それまで、
(沈黙は金)
ふふっ。
今回もよろしくお願いします。
サスペンスものに挑戦してみました。
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