見出し画像

デニム姿の私を撃ち抜いた、凛とした彼女の魔法の一言。


滅多に芸能人やアイドルの「推し活」なんてしない私が、数年前に、恋に落ちるように心を奪われてしまった女性がいます。


それは、私が住んでいるマンションの同じ住人の方。
普段は、エントランスや廊下で行き違ったときに「こんにちは」と、かるく挨拶を交わす程度の関係の、私より少し年配の素敵な女性です。


ある日の夕方のことでした。
偶然、その方とエレベーターで一緒になったのです。


扉が開いた瞬間、思わず目を奪われてしまいました。
いつも見かける普段着の彼女とは、全く違う姿がそこにあったからです。


黒い上質な生地に、贅沢で美しい総刺繍がほどこされたシックなスカート。
足元には、すっと背筋が伸びるような綺麗なヒール。
首元には、引き算の美学を感じるシンプルなアクセサリー。


まるで雑誌の1ページから飛び出してきたかのように、おしゃれな洋服を自分のものとして完璧に着こなしていらっしゃいました。


あまりの素敵さに、私はすっかり見惚れてしまいました。
「す、素敵すぎる……。勇気を出して、声をかけてみようかな。でも、急に話しかけたら迷惑かしら……」


私の心の中で葛藤が渦巻く間にも、エレベーターは静かに、どんどん一階へと近づいていきます。
このまま扉が開いたら、このときめきを伝えるチャンスは二度と来ないかもしれない。


一階に到着する直前、私はぎゅっと拳を握りしめて、思い切って声をかけました。


「あの……、とても素敵なお洋服ですね」


すると彼女は、パッと顔をほころばせて、こう答えてくれたのです。


「ありがとう。これからパーティーに行くのだけどね、この格好でこれから会社の仲間たちをワゴン車に乗せて、私が運転していくのよ」


「おかしいでしょ?」というお茶目な、いたずらっぽさを含んだ最高の笑顔を添えて。

(……かっこいい!!!)

胸の奥で、ドキンと大きな音がしました。
総刺繍のスカートに高めのヒールという極上のドレスアップ姿でありながら、大きなワゴン車のハンドルを自ら握り、仲間を迎えに行くという気取らないタフさとユーモア。


そのあまりのギャップと「凛とした格好よさ」に惚れ惚れして立ち尽くしている間に、エレベーターは一階に到着し、静かに扉が開きました。


余韻に浸りながら、彼女の後ろについてエレベーターを降りようとした、その時です。
あろうことか、前を歩く彼女がふと振り返り、私を見てこう言ったのです。


「あなたも素敵よ」

「えっ……!?」


まさに、鳩が豆鉄砲を喰らったかのような、すっとんきょうな顔をしていたと思います。
だって、その時の私は、部屋着の延長のような、その辺のスーパーにでも行くようなデニムの普段着。


(えっ、どこが!? 私いま、ただのデニム姿だけど……!)
激しくパニックになりながら、自分の服をキョロキョロと見回して確認する情けない私を見て、彼女は歩みを止め、もう一度優しく微笑みました。


そして、恋の決め台詞のような、魔法の一言を私に残してくれたのです。


「あなたのその笑顔が素敵よ」


そう言い残すと、彼女は風のように颯爽とエントランスを出て、ワゴン車の方へと向かって行きました。


素敵すぎる……!!


私はしばらくの間、夕方の静かなエレベーターホールに、ぽつんと一人で立ち尽くしてしまいました。まるで心臓を射抜かれたような、心地いい衝撃が体中を巡っていました。


咄嗟に、いえ、きっと普段から、目の前にいる人の良いところを見つけて、こんな風に素直に言葉にできる人なのだと思います。その内面の成熟さと、温かい人望の深さに、ただただ脱帽するしかありませんでした。


「私も、あんな風に人を輝かせられる大人になりたい」


あの時、エレベーターの短い空間で私を恋に落とした彼女の姿は、今でも私の心の中で「理想の凛とした女性像」として、優しく輝き続けています。






〜 ちいさな、うれしいご報告 〜

最後に、私の心をパッと明るくしてくれたお礼を言わせてください。

最近、また新しく私の記事を見つけて、ご自身のマガジンに掲載してくださった方がいらっしゃいました。


ぶどうスパークさん



風優さん



まさに私にとっての、「Happiness(幸せ)」な瞬間でした。
素敵な余白に並べていただき、心から感謝しています。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集