韓国サッカーを分析して、韓国代表監督に就職する
はじめに
韓国国会は、ホン・ミョンボ監督の選任過程をめぐる疑惑について、大韓サッカー協会の関係者やホン監督本人を証人として招致しました。
ところが聴聞会が始まると、話はワールドカップでの采配にも及びます。
「ソン・フンミンらを出場させなかったのは、ホン・ミョンボ監督による報復だったのですか」
「ソン・フンミンとイ・ジェソンを先発で使わなかったことが敗因ではないのですか」
「それなら、なぜ負けたのですか」
「ここは国会です。偽証してはいけません」
「なぜあれほどひどい試合をして負けたのですか」
……。
そこで本記事では、
なぜサッカーは、国会議員のような高学歴の人達をも、居酒屋によくいる酔っぱらったおっさんに変えてしまうのか。
ではなく、
ここまでひどい言われようである韓国代表の3試合を分析し、試合内容、選手起用、環境要因など、さまざまな角度から敗退の実際の要因を検証し、それをあわよくば現在募集中である韓国代表監督へ就職するためのレポートにしようという記事です。
半年後にアジアカップも控えているので、韓国代表の現有戦力に興味がある人も見てネ。
5行要約
韓国メディアが批判するような「無戦術」のチームではなかった。
チェコ戦とメキシコ戦では、相手への対策がしっかり機能していた。
南アフリカ戦で低調に見えたパフォーマンスには、意外な理由があった。
ホン・ミョンボ監督は選手特性を理解し、韓国に合った3バックの形を見つけていた。
W杯はGL敗退に終わったが、アジアカップで復活する可能性は十分にある。
まずは、W杯前の韓国代表を下調べ
ホン・ミョンボ監督への不信
韓国代表は、ワールドカップが始まる前から、ホン・ミョンボ監督への強い不信を抱えていました。
代表監督の選考過程の不透明さ、2014年の前任期でのグループリーグ敗退、さらに「外国人監督の招へいに失敗した末の再任ではないか」という見方まであり、就任当初から批判の材料をいくつも抱えていたためです。
そのため韓国国内では、試合に負けるたびに、采配だけでなく「そもそも監督に選んだことが間違いだったのではないか」という批判まで蒸し返される状況でした。
選手への期待
一方で、選手への期待は高いものでした。
ソン・フンミン:アジア人初のプレミアリーグ得点王
イ・ガンイン:チャンピオンズリーグ王者のパリ・サンジェルマンに所属
キム・ミンジェ:セリエA優勝とリーグ最優秀DFを経験し、バイエルン・ミュンヘンに所属
ファン・ヒチャン:プレミアリーグのウルヴァーハンプトンでプレー
イ・ジェソン:ブンデスリーガのマインツでプレー
ファン・インボム:フェイエノールトで中盤の中心を担う
監督への不信は強くても、選手の顔ぶれだけを見れば、グループリーグ突破を期待されるだけの戦力はそろっていました。
苦しんだ親善試合
一方、ワールドカップに向けた親善試合では、思うような結果を残せませんでした。
ブラジルに0-5、コートジボワールに0-4で敗れ、オーストリア戦も無得点の引き分け。本大会まで3か月を切っても、3バックと4バックのどちらを軸にするのか、最適な組み合わせを見つけられずにいました。
最終的にホン・ミョンボ監督は、以前から試してきた3バックを基本形に選びます。
第1戦:チェコ戦分析

統率された5-2-3と、それを支える強力な2CH
大会前、3バックと4バックのどちらを採用するか悩んだ末、韓国は3バックを選んだという事情がありましたが、いざ試合が始まってみると、思いのほかよく統率されていました。
縦横ともにコンパクトで、ライン間へボールを入れられた際の対応も整理されています。CBの一人が前へ飛び出しても、残ったDFが素早く横へスライドし、空いたスペースを埋めていました。
また、中央を守る2人のCHも素晴らしく、特にCHペク・スンホの働きが際立っていました。守備予測、出足の速さ、対人能力、ゾーン管理のいずれも質が高く、韓国のプレスとブロックの質を格段に引き上げていました。
さらに、ボールロスト時にはチーム全体での即時奪回が徹底されており、FWを含む周囲の選手もすぐにボールへ寄せ、チェコのカウンターを早い段階で潰します。
チェコがボールを持てたとしても5-2-3の硬いブロックを突破できず、韓国からボールを奪っても即時奪回を受けるため、なかなか攻撃へ移れません。ファウルを獲得してセットプレーへ持ち込む以外には、ほぼ攻撃の機会を作れない状態でした。
こうして守備で相手を封じるうちに、韓国の選手たちは徐々に自信を深め、攻撃でもパスがつながり始めます。CBから中盤への縦パス、中盤からFWへの裏抜けのパスが増え、ボールを持った局面でもチェコを押し込むようになります。
韓国は強力な守備を土台に攻撃のリズムまでつかみ、試合の大部分で主導権を握っていきます。
後半のチェコのプレスと、3-4ビルドでの回避
後半開始から、チェコは主導権を取り返すため、前線からプレスを強めてきました。韓国は基本的に、両WBを高い位置へ上げ、両シャドーを中盤へ下ろした3-4-3の形でビルドアップします。

しかし、チェコはポジションチェンジには対応できていたものの、ビルドに対してのプレスの数合わせがうまくできておらず、韓国は、後方のパス回しで常に数的有利が作れます。
さらに、中盤とDFだけでなく、GKも安易にロングボールを蹴らず、落ち着いてパス回しに参加していたため、チェコのプレスはなかなかはまりませんでした。
ロングスローからの失点
常に有利に試合を進めた韓国でしたが、ロングスローから失点します。
一般的なロングスローは、ゴール前の競り合う地点へ山なりのボールを送り、ヘディングでそらしたり、こぼれ球を狙ったりする形が多いのですが、チェコのスロワーが投げ込んだのは、低く鋭い弾道の非常に質の高いボールでした。スローインというより、コーナーキックに近い速度と軌道で、そのままゴール前まで届きます。
韓国側のスカウティングが見逃していたのか、チェコが大会まで隠していたのかは分かりませんが、ゾーンで構えていた韓国は、ゴール前へ入ってくる選手を捕まえきれず、そのまま失点しました。
痛い失点だったものの、次のロングスローではゾーン守備からマンマークへ変更しており、ベンチにはそれなりに修正力があるように見えました。
失点後の選手交代
試合内容で優位に立っていたためか、先制点を許した後も、韓国にはほとんど焦りが見られず、守備でも崩れず、パスも落ち着いてつなぐことができていました。
60分には、運動量と守備力に優れるLWイ・ジェソンに代えて、よりシュート技術が高く、パワーにも優れたファン・ヒチャンを投入します。リードしたチェコが守備を固める可能性が高いため、より得点へ直結する能力を加える狙いだったと考えられます。
その直後、イ・ガンインがCBとSBの間に生まれたわずかな隙間を見逃さず、スルーパスを通して韓国は同点に追いつきました。
さらに65分には、CFソン・フンミンに代えて、高さとパワーを持つオ・ヒョンギュを投入します。
韓国代表にとってソン・フンミンは、簡単にはベンチへ下げられない「聖域」に近い存在です。それでもホン・ミョンボ監督は、相手が守備を固める展開を見越し、ソンを下げて、ゴール前での空中戦やクロスへの対応力に優れるオ・ヒョンギュを選びました。
同時に、サイドでの1対1に強いドリブラーのLWオム・ジソンも投入し、中央の高さだけでなく、サイドからの直接的な打開も試みます。
結果的にチェコは完全撤退での守備固めを選びませんでしたが、韓国はサイドへの抜け出しからクロスを送り、オ・ヒョンギュが合わせて逆転。途中出場の選手が、期待に応える形となりました。
普通に強かった韓国
試合の流れを振り返ると、韓国の勝利が妥当な内容でした。
前半は、穴のない5-2-3のブロックと、カウンターを許さない即時奪回でチェコを封じます。その守備の成功から徐々に自信を深め、攻撃のリズムまでつかみました。
失点後も慌てず、交代によってシュート力、高さ、サイドの突破力を順番に加え、最終的に逆転まで持っていったので、選手、コーチ陣ともに、高い評価を受けてしかるべき内容だったと思います。
この試合のMOMには、私はCHペク・スンホを推します。
得点とアシストを記録したCHファン・インボムが数字の上では最も目立ちます。しかし、試合がまだ落ち着いていなかった序盤から、ペク・スンホはプレス、ブロック、対人守備のすべてで中盤を支配し、韓国が主導権を握る土台を作りました。
彼の働きによってチームが得た大きな自信が、その後のビルドアップや失点後でも揺らがない落ち着きを生み、最終的な逆転につながったのだと思います。
第2戦:メキシコ戦分析
先発変更 両WBを入れ替えた韓国

チェコ戦から両WBの配置を変更し、前節RWBだったソル・ヨンウを左へ移し、右にはキム・ムンファンを起用しました。メキシコのLWキニョネスへの守備対応をRWBムンファンに任せる一方、裏へのランやポジショニングに優れるLWBヨンウを逆サイドへ移し、ハイラインの背後をより積極的に狙わせる意図だったと考えられます。
機能した両者の守備
試合序盤は、両チームとも前線から積極的にプレスをかけました。韓国はメキシコの高い最終ラインの背後を狙いましたが、メキシコのラインコントロールは非常に精度が高く、韓国の裏抜けを何度もオフサイドにかけて封じます。
一方のメキシコは、韓国の3トップに対して後方で数的優位を作りながらボールを運び、ハーフウェーライン付近までは比較的スムーズに前進していました。その先では韓国の5-2-3陣形の弱点である2CHの脇を狙いましたが、韓国は左右のCBを前へ出してこのスペースを埋めます。特に要注意プレーヤーであるLWキニョネス側では、この対応がよく機能し、危険な位置で簡単にボールを受けさせませんでした。

韓国は裏抜けを止められ、メキシコも狙っていたスペースを使えない。
互いの攻撃プランを守備側が封じたことで、試合は次第に膠着していきます。
メキシコの5-4-1を崩せなかった韓国
給水タイム後、メキシコは前線からのハイプレスをやめ、5-4-1のミドルプレスへ移行しました。韓国はボールを持てるようになったものの、中央を閉じるメキシコの守備を前に、なかなか前進できなくなります。
一時的にメキシコが押し込まれてローブロックになる際、イ・ガンインがメキシコのCB-RWB間に生まれるギャップを狙い、チャンスを作る場面もありました。しかし、その後メキシコが最終ラインを押し上げ、ブロック全体の位置を高く保つようになると、韓国は再び攻め手を失います。

後半もメキシコはこの守備を継続し、韓国は最後まで5-4-1のミドルプレスに対する安定した打開策を見つけられませんでした。
失点シーン
後半開始早々、韓国はGKとDFの連携ミスから先制点を許しました。
ゴール前のハイボールに対して、DFは背後から出てくるGKに処理を任せ、競りに行かずにボールを見送ります。しかし、飛び出したGKはDFと接触してキャッチできず、こぼれ球を押し込まれました。
この場面では、DFはジャンプせずに体をかがめており、対応としては十分だったと思います。背後にいるGKの位置まで確認するのは難しいため、どちらかといえばGK側により適切な判断が求められる場面でした。
もちろん瞬間的な判断なので簡単ではありませんが、キャッチが難しいと判断した時点で、パンチングへ切り替える必要があったと思います。
選手交代
1点を追う韓国は56分、LWイ・ジェソンとCFソン・フンミンを下げ、高さがありチェコ戦でも得点したCFオ・ヒョンギュと、シュート力や突破力を持つLWファン・ヒチャンを投入しました。
70分には両WBも交代し、右にはクロスに優れるRWBヤン・ヒョンジュン、左にはドリブルとロングスローを持つLWBオム・ジソンを投入。さらに76分にはCHペク・スンホを下げてRWチョ・ギュソンを入れ、イ・ガンインを一列下げてMFにしました。守備のバランスよりも、個人で局面を変えられる選手を増やし、得点を狙う意図だったと思います。
そして、この交代によって韓国の攻撃は活性化します。左サイドへ人数を集め、右のチョ・ギュソンが中央へ絞って2トップの形を作り、クロスが逆サイドへ流れればRWBが回収。オム・ジソンのドリブル突破からのクロスにチョ・ギュソンが飛び込む決定機も生まれるなど、左サイドを中心にチャンスを作れるようになりました。
お互いがよく守った試合
この試合は、両チームとも攻撃では苦しみましたが、守備の完成度は高く、見応えのある試合でした。
特にメキシコの最終ラインは非常に統率されており、韓国の裏抜けを何度もオフサイドにかけながら、危険な場面では無理にラインを上げない判断もできていました。韓国が思うように攻められなかったのは、単に攻撃が悪かっただけでなく、メキシコの守備の質が高かったことも大きかったと思います。
最終的にはGKとDFの連携ミスから生まれた1点が勝敗を分けました。どちらかが圧倒したというより、互いに守備で相手の長所を消し合った拮抗した試合で、大きなミスをした韓国が敗れた、というのが実態に近いと思います。
第3戦:南アフリカ戦分析
最終戦を前にした韓国の状況
まず、南アフリカ戦を分析する前に、最終節を迎えた時点でのグループAの状況を確認しておきます。
メキシコは2連勝で勝ち点6とし、すでに首位通過を決めていました。韓国は初戦でチェコに勝利し、第2戦では開催国メキシコに惜敗。1勝1敗の勝ち点3で2位につけています。一方、南アフリカとチェコはともに勝ち点1でした。
そのため韓国は、最終戦で南アフリカと引き分ければ勝ち点4となり、2位でのグループリーグ突破が確定します。反対に南アフリカは、韓国に勝てば勝ち点4となり、順位を逆転して2位へ浮上できます。
つまり韓国にとっては、絶対に勝たなければならない試合ではありませんでした。無理にリスクを取って攻める必要はなく、試合を落ち着かせながら引き分け以上を確保することでも目的を達成できる状況でした。

なぜ韓国は低調なパフォーマンスに見えたのか
この試合を詳しく見ていく前に、敗退後にホン・ミョンボ監督と韓国メディアの間で交わされた、興味深いやり取りを紹介します。
記者から「前の2試合と比べて、なぜ急にチームのエネルギーレベルが落ちたのか」と問われたホン監督は、「正直、自分たちも戸惑っている」という趣旨の回答をしています。
実際、私も初見では韓国のパフォーマンスがかなり低調に見え、単純に疲労が出ているのだと思いました。大会3試合目だったことに加え、最終戦は厳しい暑さのなかで行われており、何らかの環境要因があったのではないかと考え、調べてみました。
ただ、条件を整理すると、以下のような状況でした。
試合間隔は中6日、中5日で、極端な過密日程ではない
総移動距離は短く、移動負荷も小さい
高地対策は大会前から実施
暑熱対策も温浴やサウナで実施
最終戦は標高約450mで、酸素面では前2試合より楽
最終戦が行われたメキシコ北部の都市モンテレイは、30℃台半ばの高温多湿でした。暑熱の影響は考えられるものの対策もしていますし、日程や移動、高地を含めて見ると、環境要因だけで急激なパフォーマンス低下を説明するのは難しそうです。
では、韓国はなぜこれほどエネルギーがないように見えたのでしょうか。ここからは、実際の試合内容を追いながら、その原因を探っていきます。
先発変更
まずは、先発メンバーの変更から見ていきます。

韓国は前節からソン・フンミンとイ・ジェソンを先発から外し、CFオ・ヒョンギュとLWファン・ヒチャンを起用しました。前2試合では、先発2人を下げた後に得点や攻撃の活性化が生まれており、そうした成功体験から、比較的格下と考えられる南アフリカに対し、攻撃面で優位をとろうとしたのだと思います。
ソンとジェソン不在でハマらない韓国のプレス
しかし、試合がはじまってみると、この変更が思わぬところで裏目に出ました。それが前線からのプレスです。
まず、前提としてCFオ・ヒョンギュが1stDFとして相手のビルドアップを制限する動きや、周囲と連動する判断がうまくありません。また、その横に立つLWファン・ヒチャンも、ジェソンのようにうまくポジショニングでカバーできません。これにより、プレス全体が崩れた状態で韓国は戦い続けることになります。
さらに南アフリカは、基本的にはビルド時にGKからのロングボールを多用するのですが、やみくもに蹴るだけでなく、後方でボールをつなげる時はつなぎ、韓国のプレスを充分に引きつけようとします。
オ・ヒョンギュを中心とした前線の連動不足と、南アフリカのビルドアップが噛み合ったことで、韓国の強みであるプレスがうまく機能しませんでした。
ビルドで前進できるのに凡ミスが増える韓国
一方、韓国のビルドアップ自体は比較的うまくいっていました。
南アフリカは4-4-2でプレスをかけましたが、韓国は3-4-3の形をつくっているので、そもそも構造的にパスがつながりやすいです。さらに、ポジションチェンジで降りてくるRWイガンインに対応できなかったため、韓国はサイドを使ってプレスを回避し、チャンスを作れていました。
また、サイドだけでなく、南アフリカの守備ブロックがそれほどコンパクトではないことから、ライン間にもパスを通し、そこからもチャンスを作れています。

つまり、韓国はボールを前進させること自体には、それほど困っていません。
それにもかかわらず、この試合では簡単なボールロストが目立ちました。
その原因の一つは、南アフリカのチームとしてのプレスは回避できても、個人のボール奪取までは回避できなかったことにあると思いました。
韓国は南アフリカのプレスを比較的簡単にかわすことができていたため、選手にも「ボールを持てる」という余裕が生まれています。しかし、その余裕が逆に、南アフリカの選手が持つ個人のボール奪取能力を見誤らせました。
南アフリカの中盤の2人、CHの13番シトーレと5番ムバタは、韓国の選手が余裕を持ってボールを扱っているところへ、加速して一気に距離を詰め、長い足を伸ばしてボールを奪いにきます。
特に強烈だったのが13番シトーレで、この試合では11回の守備介入を記録しています。組織的なプレスには困っていないのに、突然一人に強く寄せられてボールを失う。こうした場面が、韓国の選手たちが集中を欠いているように見えた一因だったのかもしれません。
イ・ジェソン不在で崩れた守備バランス
そして、より大きな問題はボールを失った後でした。
前の2試合では、韓国はボールを失ってもすぐに周囲の選手が寄せ、即時奪回から再び攻撃につなげる場面が多く見られました。しかし南アフリカ戦では、この形がうまく機能しません。
ここで影響したのは、イ・ジェソンの不在です。
彼は攻守において非常に気の利く選手で、前線からのプレスだけでなく、相手の次のプレーを予測してポジションを取り、味方が空けたスペースを埋めることにも優れています。ボールを失った瞬間にもすぐ守備へ切り替えられるため、韓国の即時奪回を支える重要な選手でした。
LWBが高い位置を取ったときも、イ・ジェソンはMFラインに残ってその背後をカバーすることが多くありました。一方、この試合で左に入ったファン・ヒチャンは、あくまでFWの選手です。
南アフリカが比較的ボールを持たせてくれるという要因もありましたが、やはり前線に張り付く時間が多くなりすぎてしまい、それによって、LWBが上がりLWが下がるという韓国の2次配置の構造が崩れます。
その結果、韓国はボールを失った瞬間に中盤の人数が足りず、LWBの背後に広いスペースを残すようになりました。イ・ジェソンを外したことで失われたのは、単なる一人分の守備力ではなく、プレス、予測、カバー、即時奪回をつなぐ役割でした。

前線のプレスがハマらず、ボールを持てても凡ミスが増える。そして失った後には即時奪回できない。さらに南アフリカのカウンターの質も高かったため、韓国は何度もピンチを招きました。
後半から攻撃を修正した韓国
引き分けでもグループリーグ突破が決まる状況でしたが、ホン・ミョンボ監督は後半開始から守りに入るのではなく、攻撃面の改善を狙った交代を行いました。
ファン・ヒチャンに代えてLWソン・フンミンを投入。中盤では、前半に南アフリカの個人プレスを受けてボールロストが目立っていたCHペク・スンホを下げ、より足元の技術が高く、前進するパスを出せるCHキム・ジンギュを入れ、さらにLWBもイ・テソクから、より攻撃面で影響力を出せるLWBイェンス・カストロップへ変更しました。
交代を見てもわかる通り、攻撃の修正に主眼が置かれており、引き分けは狙っていなかったと考えられます。
失点から試合終了まで
試合を決めた失点は、南アフリカのカウンターから生まれました。
韓国が相手陣内でボールを失うと、南アフリカは中央をダイレクトプレーで素早く前進。サイドからの折り返しをゴール前で合わせ、これが決勝点となります。
失点後、韓国はチョ・ギュソンら攻撃陣を投入し、クロスを中心にゴールへ迫りましたが、効果的な攻撃を生み出せず、南アフリカが1点を守り切りました。
試合総括
南アフリカ戦の韓国は、前の2試合とは別のチームのように低調に映りました。しかし、試合内容を一つずつ見ていくと、選手たちの出力そのものが落ちていたわけではありません。
前線のプレスが噛み合わず、前の試合より守備が機能していないように見える
ボールを失った後に即時奪回できず、切り替えが遅くなったように見える
南アフリカの個人守備によるボールロストが、韓国側の単純なミスや集中力不足に見える
こうした要素が重なったことで、チーム全体のエネルギーが落ちているように映ったのだと思います。
走行データを見ると、選手たちは前の試合と大きく変わらない距離を走っており、高強度のランニングやスプリントが維持されているにもかかわらず、プレスや即時奪回が機能せず、ミスまで増えたことで、試合全体として「エネルギーがない」ように見えていたという、私にとっても非常に学びの多い試合となりました。
韓国代表監督就任時に発表する予定のフォーメーション
韓国は、現在の陣形と戦術をそのまま引き継いでいいと思います。
選手特性ともかみ合っていますし、なんだかんだで最適解に辿り着けたという印象を受けました。そこで、基本フォーメーションは微調整を加えた以下の形がいいのではないかと思います。

CF:ソン・フンミン
基本はソンで良さそうですが、ビルド時にもう少しボール関与を増やした方がいいです。
相手が格上でロングボールを多用するならファン・ヒチャン。
試合を支配し続けられるならオ・ヒョンギュ。
ターゲットマンの横で2top的に立ち回らせるならチョ・ギュソン
プレスの質と空中戦を両立させるなら、代表には入ってないですけどゼルビア町田のオ・セフンとかいいんじゃないでしょうか。LW:ファン・インボム
攻撃の技術全般が高いのですが、守備があまり良くありません。
そこで、ジェソンと位置を入れ替えて一列上に上げ、守備のタスクを変えます。ビルド時は下におろして彼の展開力を使いながら、押し込んだ後は積極的に裏抜けさせるのがいいと思います。RW:イ・ガンイン
1人で攻撃の違いを生み出せるので、守備時には彼を休ませられるような設計にしたいですね。RCH:ペク・スンホ
めちゃくちゃいいCHです。守備時の判断をほぼ間違えません。
おそらく、前進のパスがあまり出せていないため、韓国内からの評価が低くなっていそうですが、立ち位置を調整すれば、攻撃でも十分に活躍できます。イ・ガンインの守備もカバーしてもらうため、右側のCHに置いています。LCH:イ・ジェソン
守備の理解度が非常に高い選手ですし、CHの経験もあるそうなので、インボムと位置を入れ替えました。相手が完全撤退の場合は、キム・ジンギュをいれて無理矢理つなぐ方法もあります。LWB:イェンス・カストロップ
南アフリカ戦でしか出場していませんが、攻守供に良さそうに見えました。ただし、韓国の陣形はWBが最も消耗する設計になっているので、スタミナと守備を優先するならイ・テソクを先発に。
そして後半60分からは、フレッシュな状態のオム・ジソンを投入してドリブルで敵陣をかき回したいですね。RWB:ソル・ヨンウ
ポジショニング、ランニングなど、ボールを引き出すのが非常にうまい選手です。クロスに難があるので、バイタルに必ず人を走りこませたり、逆サイドにクロスが流れた場合の設計をしっかり考える必要があります。CB:イ・ハンボム
3試合を通して安定感があり非常によかったのと、ミンジェの飛び出しの判断が良くないので、位置を入れ替えています。LCB:イ・ギヒョク
足元の技術が高いです。キックレンジも広く、対角のウイングへのサイドチェンジも可能。相手のプレス角度をドリブルでずらしたりもできます。
左攻めの際にポジションチェンジで高い位置まで上げ、クロスを入れさせてもいいかもしれません。RCB:キム・ミンジェ
ハンボムと位置を入れ替えています。
3バックの外だと飛び出しても危険になりづらいので、どんどん前に出させてミンジェのスピードやパワーを活かしたいです。3バックのセンターではあまり前に出られず、彼の強みが出せません。
終わりに
3試合を分析して一番驚いたのは、韓国代表が思っていたより強かったことです。特に選手個々の能力は非常に高いです。
では、その選手たちを活かせなかったホン・ミョンボ監督が悪かったのかというと、そうとも思いませんでした。
ホン監督は韓国代表の選手特性を理解し、自分たちに合った陣形や戦い方を見つけているだけでなく、W杯のどの試合でも、対戦相手に合わせたゲームプランや対策を用意していました。100点ではないかもしれませんが、70点以上はあると思います。
少なくとも3試合を分析した限りでは、韓国国内で言われている「無戦術」「選手任せ」という評価は、間違っています。
むしろ、ホン・ミョンボ体制を継続しながら微調整を加えていくことが、
韓国代表を強くする一番の近道だったように見えます。
しかし、すべては後の祭り。
監督をクビにしただけでなく、敗退後には国会での追及にまで発展させてしまいました。ここまで大きな騒動になってしまえば、後任監督の選定そのものにも影響が出るでしょうし、これまでの路線をそのまま継承することも難しくなります。
アジアカップまでは半年。代表チームでの半年は決して十分な時間ではありません。この先、韓国代表はいったいどうなってしまうのでしょうか。
PS.
分析レポートを気合い入れて書きすぎたせいで、気づいたら公募の締め切りすぎてました。悔しい!ということで、
頼んだぞ!誰か!
