イランで大規模デモ、通信遮断の中ででも続いたハイブリッド弾圧 スターリンクの遮断とBluetoothアプリで蜂起 同国では渇水も深刻
2025年末から2026年にかけて、イランでは大規模な抗議運動が広がった。きっかけは、通貨リアルの急落や食料価格の高騰による生活苦だったが、運動は短期間で政府そのものの退陣を求める全国的な政治運動へと変化した(1)。
(1)イランで物価高騰への抗議が拡大、デモ隊と治安部隊の衝突で死者も. (2026). Retrieved 24 January 2026, from https://www.bbc.com/japanese/articles/c2e17dmd01yo
要約
2025年末から2026年にかけてのイラン抗議運動は、通貨暴落と物価高を契機に始まり、短期間で体制の正当性そのものを問う全国的政治蜂起へと発展した。政権は武力、監視技術、通信遮断、心理戦を組み合わせた「ハイブリッド弾圧」で対応し、情報遮断下で大規模な国家暴力が拡大した。一方、市民は衛星通信やBluetoothによる分散型通信で抵抗を試みたが、安全性や限界も露呈した。さらに深刻な渇水危機が社会不安を増幅させており、水資源管理をめぐる不満が体制批判と結び付いている。
記事のポイント
抗議運動は通貨暴落と物価高を契機に、体制転換を求める全国的・政治的蜂起へ発展し、宗教的正統性に基づく統治が大きく揺らいだ。
政権は武力・監視技術・通信遮断・心理戦を組み合わせた「ハイブリッド弾圧」で対応し、情報遮断下で国家暴力と正当性の侵食が進んだ。
市民は衛星通信やBluetoothメッシュなどで抵抗を続けた。
Summary
The Iranian protests from late 2025 to 2026 began amid currency collapse and soaring prices, rapidly escalating into a nationwide political uprising that challenged the regime's very legitimacy. The regime responded with a “hybrid crackdown” combining military force, surveillance technology, communication blackouts, and psychological warfare, allowing large-scale state violence to escalate under information blackout conditions. Meanwhile, citizens attempted resistance using satellite communications and decentralized Bluetooth networks, though their safety and limitations were exposed. Furthermore, a severe drought crisis is amplifying social unrest, with discontent over water resource management intertwining with criticism of the regime.
Translated with DeepL.com (free version)

1979年のイスラム革命以来、宗教的な正当性と強い治安統制によって維持されてきた体制は、深刻な経済不安、若者の将来への失望、女性主導の社会運動の再燃によって大きく揺らいでいる。
政府はこれに対し、武力による弾圧に加え、監視技術や情報操作、インターネット遮断を組み合わせた「複合的な弾圧」を行った(2)。その結果、市民の行動や情報発信は物理的にもデジタル上でも強く制限され、流出した遺体の写真などからは、数万人規模の犠牲者が出ている可能性も指摘されている(3)。
また政権は、「モハレブ(神の敵)」という宗教的な罪を恣意的に適用し、無差別な暴力を正当化していることも明らかになった(4)。インターネットが遮断されることで国際社会の監視が届かず、「情報が届かない場所」で国家暴力が拡大している。
それでも市民は、衛星通信やスマートフォン同士を直接つなぐ通信技術を使い、政府の統制を突破しようと試みた(5)。イランの事例は、デジタル時代の権威主義体制が抱える限界を示唆している。
(2)【分析】反体制デモの鎮圧手法を急速に高めたイラン 最先端の軍事技術に高度な心理作戦. (2026). Retrieved 24 January 2026, from https://www.cnn.co.jp/world/35242685.html
(3)Photos leaked to BBC show faces of hundreds killed in Iran's brutal protest crackdown. (2026). Retrieved 24 January 2026, from https://www.bbc.com/news/articles/c0r4957rq8ro
(4) Jon Gambrell, Associated Press . Iran's top prosecutor denies Trump's claim 800 prisoners were spared execution. (2026). Retrieved 24 January 2026, from https://www.pbs.org/newshour/world/irans-top-prosecutor-denies-trumps-claim-800-prisoners-were-spared-execution
(5)イランのネット封鎖、異例の100時間超に スターリンクも初の遮断. (2026). Retrieved 24 January 2026, from https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1392F0T10C26A1000000/
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1.イラン政権、抗議を「戦争13日目」と位置づけ 軍事ロジックが国内への抑止に転用される
昨年6月の「12日間戦争」でイスラエルがイラン奥地を攻撃した事案があった。そしてイラン政権は国内での抗議をイスラエルとの「戦争13日目」と位置づけ(6)、抗議者を外国工作員として描写することで、軍事的論理を国内統治に持ち込んだ。
政権はバシジ民兵を迅速に動員し、監視技術と通信遮断を組み合わせた即応型の統治を展開した(7)。監視ドローンによる個人特定や通信妨害は、従来の治安対策を超え、軍事ロジックが日常的な統治に組み込まれたことを示している。
とりわけ象徴的なのが、これまで当局が踏み込まなかった衛星通信への介入である。スターリンクは正式な運用許可を得ていないものの、スペースXのイーロン・マスクCEOはイラン国内で利用可能だと述べてきた(8)。抗議運動下での妨害は、政権が国境を越える情報インフラそのものを統制対象に組み込み始めたことを意味する。
同時に政権は、恐怖映像の流布や「外国勢力の陰謀」という言説を用いた心理戦を展開した。物理的弾圧と情報操作の組み合わせにより、短期的には抗議活動は沈静化したが、その代償は計り知れないものとなっている。
(6)Looking back at Israel and Iran's ‘12-day war’: Direct conflict breaks out between arch-enemies. (2026). Retrieved 28 January 2026, from https://www.france24.com/en/middle-east/20251226-looking-back-israel-iran-12-day-war-direct-conflict-breaks-out-between-arch-enemies
(7)The night Iran went dark: Witness accounts and video reveal violence inflicted during Iran’s internet blackout. (2026). Retrieved 28 January 2026, from https://edition.cnn.com/2026/01/23/middleeast/iran-internet-blackout-violent-crackdown-intl-cmd
(8)ネット遮断のイラン、一部でスターリンク利用可能. (2026). Retrieved 28 January 2026, from https://jp.reuters.com/world/security/L7WMSRCYYZPQZLIN6NLFQI2JNE-2026-01-13/
2.Bluetoothがつないだ抗議 イランで試された分散型通信アプリ
イラン各地で起きた大規模デモは、政府が通信を遮断しても、市民の声を完全に封じることはできなくなっている現実を示した。当局は治安維持を理由にインターネットや電話網を全面的に止めたが、抗議者たちはBluetoothを使ったメッシュ通信アプリ「Bitchat」や、ペルシア語版の「Noghteha」を利用し、独自の情報網を築いた(9)。スマートフォン同士が直接つながる仕組みが、厳しい統制下でも通信を可能にした。
しかし、この分散型通信には大きな危険もあった。誰が開発・管理しているのか分からない点が問題となったのだ。またBitchatの開発者は、当局が改変した偽アプリやスパイウェアが出回る可能性について警告している。拘束されたデモ参加者のスマートフォンから通信履歴が押収されたという報道もあり、そのようなことがなされれば、分散型通信についても限界がある。
こうした経験を受け、開発者たちの間では、アプリをオープンソース化することや、暗号技術を第三者が検証する仕組みや、利用者自身が安全に使いこなすための教育の重要性が議論されている。
BitchatやNoghtehaが示したのは、単なる検閲回避ではなく、市民が自ら通信インフラを支えるという新しい姿であるが、限界もあることを示した。
(9)イラン抗議デモで注目のBitchat、Bluetooth通信の仕組みと可能性 | Research by nicoxz. (2026). Retrieved 28 January 2026, from https://research.nicoxz.com/articles/iran-bitchat-bluetooth-mesh-protest
3.貯水率1割未満、首都1500万人に影 イランで壊滅的な渇水
イランは現在、過去60年で最悪とされる壊滅的渇水に直面している。テヘラン周辺の主要ダムの貯水率は8〜13%まで低下し、人口約1500万人を抱える首都圏では、早ければ2週間以内に飲料水供給が途絶する可能性が指摘されている(10)。政府は首都移転まで検討しているが、国内利権の構造が対策を阻み、対応の遅れが社会不安を拡大させている。
渇水は、単なる環境危機にとどまらず、社会動乱と体制不安を増幅させる「リスク増幅器」となっている。2021年のフーゼスターン州抗議以降、水不足は生存権の侵害、農業崩壊、電力不足を連鎖的に引き起こし、地方農民と都市住民の不満を結び付けてきた。テヘラン主要ダムの枯渇は首都機能の麻痺を現実の脅威とし、不公平な水配分や無計画なダム建設への怒りが、体制の正当性そのものに向けられつつある(11)。
渇水がもたらす体制危機への道筋については、すでに具体化している。飲料水の枯渇と断水は抗議行動を誘発し、フーゼスターン州では水資源の枯渇によって農牧業が崩壊、数百万人が生活基盤を失った。農村から都市への人口流入に加え、水力発電の低下による計画停電が都市部の不満を増幅させている(12)。そして多くの市民はこの危機を気候変動の結果ではなく、中央政府による工業・軍事優先の水配分と利権に絡んだ「人災」と受け止めている。
(10)干ばつのイラン、首都周辺の貯水量が昨年比55%減 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News. (2026). Retrieved 29 January 2026, from https://www.afpbb.com/articles/-/3612052
(11)After Ruining a Treasured Water Resource, Iran Is Drying Up - Yale E360. (2026). Retrieved 29 January 2026, from https://e360.yale.edu/features/iran-water-drought-dams-qanats
(12)中東かわら版. (2026). Retrieved 29 January 2026, from https://www.meij.or.jp/kawara/2021_043.html
