アポロ11号の月面着陸は早朝だった?それとも、昼間だった?
昨日、X(元Twitter)にアメリカ大使館がこんなポストを投稿した。
1969年の今日、アポロ11号が月面に着陸しました。ニール・アームストロング船長の「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という名言は、あまりにも有名です。日本でもこの世紀の瞬間を見守るため、多くの人がテレビの前に釘付けになりました。早朝からの生中継にも関… pic.twitter.com/tdbjcL0E1s
— アメリカ大使館 (@usembassytokyo) July 20, 2026
この投稿を見て、思い出したことがある。
コレだ。

数年前に、実家で見つけた子供時代の私が描いた絵日記だ。
上のページにはだいたいこんなことが書いてある。
七月二十一日(月)
昨日の夜、クラブの屋上で花火を見ました。
滝の仕掛け花火が、本物のようでした。
今朝5時半からアポロ11号のテレビを見ました。
僕も次へ行きたいと思います。
日付は今から57年前の、1969年7月21日。。
私は小学校1年生だった。
だからコレ、1年生の夏休みの絵日記である。
7月20日(日)の夜、当時、実家の近所にあった、父親の会社の寮の屋上で家族と一緒に花火大会を見た。文中の「クラブ」とは会社の寮の建物の名前で、「滝の仕掛け花火」とは大阪は淀川花火大会の当時の名物だった「ナイアガラ花火」のことだ。
さらに、その翌朝の「5時半からアポロ11号のテレビを見た」と書いてある。「5時」じゃなくて「5時半」というのが細かい。それくらいに、小学校1年生の私は、その歴史的テレビ中継を5時半から見た、という事実が印象深かったようだ。
記憶では、前夜からテレビでアポロ11号に関する特別番組をNHKや民放でたくさん放送していた。どうやら、徹夜で放送していたようだ。だから、当時6歳の私は、日曜の夜のどっかの時点で一度寝て、翌朝の5時半に両親に起こしてもらった。両親はもしかしたら夜通しアポロ11号に関するテレビ番組を見ていたようだが、私にその記憶はない。
さて、ここからが本題である。
このテレビ中継を見てから60年近くの間、私はずっとアームストロング船長の月面着陸を「朝の5時半」と記憶していた。
月面着陸と言うのは、もちろんあの瞬間である。
「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」
あの有名な台詞とともに歴史に残ったあの瞬間。
そう、月着陸船「イーグル号」から、ニール・アームストロング船長が月面に降り立ったあの瞬間だ。

月着陸船イーグル号のフォルムとともに忘れられない、映像がある。私は、あの月着陸船を何度絵に描いただろう。プラモデルも作った。1年後には大阪万博のアメリカ館で同型機を見て感激もした。

そして、アームストロング船長の手によって月面にアメリカ国旗が立てられた瞬間も覚えている。近所の公園で、あの時の船長の動作を何度モノマネしたことだろう。イーグル号のプラモデルにも、オマケのようにあの星条旗のミニチュアがついていた。旗は風が吹いてるようにはためいていた。
そう、そんなテレビ中継を、あの日の私は夜明けに見た!…と、記憶していたのだが、私はだんだん不安になってきた。
本当にそうだっけ?
アームストロング船長は日本時間で夜明けの5時半に月面に第一歩を記したのか?
どんどん不安になってきた。
そこで、早速ネットで調べた。すると、
月着陸船イーグル号による月面への着陸時間は1969年7月21日の午前5時17分40秒(日本時間)だった!
そして、アームストロング船長が月面に着陸したのは同日の午前11時56分15秒(日本時間)だった!
つまり、アームストロング船長が月面に降りたのは朝の5時半じゃなく、昼の12時だった!
どうやら、イーグル号が月面に着いてから、船長が船の外に出てくるまでに、6時間半ほどの時間差があったようである。まあ、冷静に考えればそうだ。人類が初めて到着した謎の衛星に、準備もなしにいきなり降り立つなんて、ちょっとやんちゃすぎる。いろいろ下調べやら各種準備やらをする必要があっただろう。
私の記憶はどうやら間違っていた。
恥ずかしいが、これが真相だ。
ところで、
こうなると今度は「あの6時間半ほどの時間」、アームストロング船長たちはイーグル号の中でいったい何をしていたのかが気になってくる。
調べてみると、この6時間半の間に、アームストロング船長とオルドリン船員の二人には、下記のような予定があったらしい。
着陸 → 約2時間の着陸後点検 → 食事 → 約4時間の休息 → 船外活動準備 → 減圧・月面へ
事前公表資料によると、着陸予定がミッション経過時間で102時間47分、船外活動のための減圧開始が同じく112時間30分だった。つまり、着陸から減圧開始までに約9時間43分後も必要だった。NASAの概要にも、最初の船外活動は「4時間の休息後」と記されている。
でも、彼らは3時間ほど早く、6時間半ほどで月面に降り立った!
では、実際に彼らの6時間半はどんなだったのか?
記録によると、まず最初の2時間ほどで、「いつでも緊急離陸できる状態」を確認する作業を行った。この作業が終わったのが日本時間の午前7時7分。
ここでアームストロング船長が管制センターに対して、予定されていた4時間の休憩を省くことを提案。かなり思い切った提案だったが、それはすぐに了承された。
二人はさっさと食事を済ませると、午前8時43分から船外活動のための準備を始めた。この作業はもともと2時間の予定だったが、いろいろあって3時間ほどかかった。そして、午前11時39分に作業が終わった。
これが、イーグル号の6時間半のすべてである。
結果、彼らは日本時間の午前11時56分15秒に月面に降り立つことになった。

小学校1年生の私が、月着陸船の未明の月面着陸とアームストロング船長の月面着陸を記憶の中で混同していた理由はたぶん、楽しかった夏休み初日の夜に近所の花火大会ですっかり疲れきったあと、アポロ11号特番を深夜まで見てから一度眠り、夜明けに両親に一度起こされてテレビ中継を見て、次にもう一度寝て昼前に改めて両親に起こされて歴史的テレビ中継を見て、という起きたり眠ったりを繰り返した30時間ほどの、当時の私が経験した「私の一番長い日」で、6歳の私の記憶が溶けちゃったのかな、と想像する。
たぶん、だけど。

2026-07-21
