手元に本があるのは、無駄ではない。手元に本があるのだから。
4月3日
刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX、全69話、鑑賞終了。
1968年(あるいはテレビ版が始まった1973年)から2003年まで。
最後の3作品は、2年間もの年月をかけて作っているからか、面白かった。
41歳だったコロンボも、最後は76歳。相当な老刑事だ。
でもコロンボのオープニングの音楽がファンクになろうとは。こまかいところは異論があるかもしれないけれど、捜査方法は基本的に変化がないように見えるコロンボも、時代遅れになるまいと工夫していたのだ。
現代詩を読み漁っていた時期があった。たくさん読もうと思った。好き嫌いなく。若いころだ。思潮社から出てる現代詩文庫、「現代詩手帖」や「ユリイカ」、気になった詩人の詩集。購入して、とにかく読んだ。
あの情熱は何だったのだろう。いまの自分にはないものだ。
やがてその時期は過ぎ去っていった。
それでも残っているものもある。
いまでもときどき書棚から取り出す。
手元に本があるのは、無駄ではない。手元に本があるのだから。いつでも読めるということだ。
そのころ読んだ詩人は、たとえば吉岡実さん。難解だがイメージが鮮明で、詩集「僧侶」は、戦後詩の達成と言われた。
ここは詩集「サフラン摘み」から。
ルイス・キャロルを探す方法 [ わがアリスへの接近 ] 吉岡実
三人の少女
アリス・マードック
アリス・ジェーン・ドンキン
アリス・コンスタンス・ウェストマコット
彼女らの眼は何を見ているのか?
彼方にかかる縄梯子
のびたりちぢんだりするカタツムリ
刈りとられるマーガレットの黄と白の花の庭で
彼女らの脚は囲まれている
どこからそれは筒のようにのぞくことができるのか?
「ただ この子の花弁がもうちょっと
まくれ上がっていたら いうところはないんだがね」*
彼女らの心はものみなの上を
自転車で通る
チーズのチェシャ州の森
氷塊をギザギザの鋸の刃で挽く大男が好き
鞄のなかは鏡でなく
肉化された下着
歴史家の父の死体にニスをかけて
床の下の世界から
旅する渓のみどりの水をくぐる
一人の少女を捕えよ
なやましく長い髪
眠っている時は永遠の花嫁の歯のように
ときどきひらかれる
言語格子
鉛筆をなめながら
わが少女アリス・リデル
それは仮称にすぎない
〈私〉の外にいて
あらゆる少女のなかのただひとりの少女!
きみはものの上を通らずに
灰と焔の最後にきた
それでいてきみは濡れている
雨そのもの
ニラ畑へ行隠れの
鳩の羽の血
影があるようでなく
ただ見つけ出さなければならない浄福の犯罪
大理石の内面を載れ
アイリス・紅い縞・秋・アリス
リデル!
*[ ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』岡田忠軒訳より ]
ちなみに、アリス・コンスタンス・ウェストマコット、アリス・ジェーン・ドンキンは、ルイス・キャロルが撮影した写真のモデル。アリス・リデル は、言うまでもなく、「不思議の国のアリス」を書くきっかけとなった少女。
アリス・マードックが実際にいたのかどうかはわからないが、アイルランド出身の作家、アイリス・マードックからきているのではないかと思う。言葉の音が似ているので。最後にアイリス、という言葉も出てくるし。
詩集「サフラン摘み」が発売された当時、アリスをめぐる評論があちこちで書かれていたように記憶している。
ラスト二行、「アイリス・紅い縞・秋・アリス/リデル!」この言葉の連想(言葉遊び)の素晴らしさと言ったら!



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