見出し画像

今日も妻くんは相変わらずだ。そして私も。

 暑い日が続いている。昔のフランス小説のようにアラビア人を射殺したくなるような午後だった。妻くんと道を歩いていた。妻くんは急に言った。
「あ。いま、うんこのようなシュシュが落ちていた」
「え?」
「見る?」
「見ない」と私。
「見る?」と妻くんがまた言った。
「見ない」
「見ようよ。うんこじゃないよ。シュシュだよ」
「知っている」
「見ようよ」
「見たくない。うんこでしょ?」
「うんこじゃないよ。シュシュだよ」
「わかっている」
「共有しようよ、二人で。うんこ」
「シュシュでしょ?」と私。

 そんなことを話しているうちに、ずいぶん通り過ぎてしまった。暑いのにわざわざ戻って見る気にもなれない。
 カミュも不条理もフランス小説も無縁な真夏の午後(いや、不条理な暑さだから、不条理は関係あるか)、今日も妻くんは相変わらずだ。そして私も。

 

いいなと思ったら応援しよう!

緒 真坂 itoguchi masaka サポートをいただけた場合、書籍出版(と生活)の糧とさせていただきますので、よろしくお願いいたしますm(__)m なお、ゲストのかたもスキを押すことができます!