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妻くんは、道端で、ひらひらと飛んでいるアゲハチョウを見ると、自分のもとから飛び立ったアゲハチョウではないかと思い、「こんにちは」と挨拶している。

〇月〇日

 家のベランダに檸檬の鉢植えが置いてある。
 毎年、アゲハチョウがきて、卵を産む。黒い幼虫を見つけると(生まれたばかりの幼虫は、緑色をしていない)妻くんは、葉から離し、飼育カゴに入れて飼っている。毎年のことだ。
 数週間が過ぎると、孵化してサナギになり、アゲハチョウになる。飼育箱の中で翅を広げて、ぱたぱたする。妻くんは空に放つ。ひらひらと妻くんのもとから飛び立っていく。
  そんなわけで、妻くんは、道端で、ひらひらと飛んでいるアゲハチョウを見ると、自分のもとから飛び立ったアゲハチョウではないかと思い、「こんにちは」と挨拶している。
 
 それが、遠い実家の道を歩いていても、妻くんは挨拶していたのだ。絶対にあり得ないのに。


 

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