【2024年8月】ゆく河の流れは絶えずして
「行く川のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。」
方丈記の冒頭として人口に膾炙するこの件は、「世の中にある人と栖と、またかくのごとし。」と続く。

速いシャッターで流れを止める。


肉眼では同じように見えていた流れが、実は少しずつ異なる流れの連続であると気付かされる。鴨長明は、ゆったりとした川の流れを見ながらこの境地に至ったものと推測するが、図らずも高速シャッターが「もとの水にあらず」を証明することとなった。

ギリシャの哲学者ヘラクレイトス(紀元前500年前後)やプルタルコス(西暦100年前後)も同様の視点を持っており、「人々が同じ川に入ったとしても、常に違う水が流れている」「同じ川に二度入ることはできない」と述べたとされている。方丈記は1212年の成立といわれているが、それよりも千年以上も昔に遙か遠い国で同じことを考えている人間がいたとは、偶然とはいえ非常に興味深い。
