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食品企業の「研究」と「開発」について

「キミは研究がしたいの? 開発がしたいの?」

 食品企業に限らず、メーカーにおいて研究と開発はR&Dなんて言葉もある通り一緒くたにされがちですし、実際垣根のない会社もあります。
 しかし本来「研究業務」と「開発業務」は大きく異なるものです。

 特にメーカーで研究所に配属されたのであれば、自分が今何をイメージしているか、どういうキャリアを積んでいきたいかを考えるために、研究と開発は明確に切り分けた方が良いと思います。

 私は今でこそ別の仕事をしておりますが、それまで10数年間、社会人研究者としてキャリアを積んできました。内訳は開発部門2割、研究部門8割くらいでしょうか。
 ですので、以下の文も研究寄りになっていると思います。あくまで私から見た視点として、開発と研究の違いを書いていきたいと思います。


1) 開発


 市場調査や顧客ニーズの結果から、競合商品の分析、技術開発や製造プロセスの改善などを行い、商品のアイデアから製品化までの一連の工程を行う部署です(競合商品の分析は、ディープに分析する場合は研究側に回っていくことも多い)。

 大体「新しい商品を作って、皆に食べてもらいたいです!」と思って入ってくる人が想像している仕事が開発です。自分の作ったものがお客様に届く、というのを肌で感じられる部署ですね。


わりとマジでこんな感じかもしれない。大抵の企業はエプロンじゃなくてユニフォームですが。

 ただ、商品を作るにあたって開発にどこまで裁量があるかは、会社ごと、はたまた事業・部署ごとにも大きく異なり、原料選定から配合・製造方法の組み立てまでしっかりやる場合もあれば、お客様や営業のオーダーがあらかじめあり、それに合わせて品位を設計していく場合もあります。

 基本的な仕事としては、
・商品の配合を設計(味づくり・微生物など安全性の担保、保存性確認→
・製造方法の確立(スケールアップ)→
・工場での試験製造を実施、保存性の確認→
・初回~数回製造の安定生産確認

 といった流れになります。製品は安定して生産できるようになれば、それ以降は工場の仕事になります。トラブルが起こると昼夜・休み関係なく駆り出されることもありますが

 開発の過程で他社との比較を行ったり、知見を深めるために話題のお店への市場調査などをしたりすることもあります。また、弊社にはレストラン等で腕を振るっていたシェフがいたので、調理実習がありました。味に関する感性は、食品メーカーの開発者としては不可欠ですからね。


2) 研究


 開発に対し研究とは、長期的な視点で新しい技術や新しい素材を開発することを目的になります。取り組んでいるテーマ自体が商品になるわけではなく、既存商品をさらに高みに導くための技術や素材開発であったり、あるいは新たな商品・事業につながるような内容ですね。

 基礎研究については正直、ある程度規模が大きい会社でなければやらない会社も多いです。というのは単純に、開発テーマの方が会社の利益に直結しやすいからです。基礎研究にヒト・モノ・カネをかけられるのは余裕のある会社と言ってもいいかもしれません。

 では、なぜ研究が必要なのか。

 それは、特に今の食品業界のように「概ねなんでもウマイ」という成熟した市場においては、他との差別化を図っていかないとヒット商品は出てこないからです。

 しかし短いスパンで要求される開発で出来ることというのは、ほぼ試しつくされているような状況です。そうなると、すぐには解決できないけれど、解決できると非常に会社の利益になる技術や素材が必要になります。そういったある程度時間がかかり、難度の高い技術開発テーマに挑むのが基礎研究の仕事です。

 学生時代からの延長のような部署なので、若手社員の中でも研究を志望する人はそれなりにいる印象です。想像しやすいんでしょうね。

 ただ、基本的に長期テーマを扱うため、短期的な評価は望みにくかったり、マニアックな領域に突っ込んでいくので、同じ研究所のメンバーにすら理解してもらうことが難しい(特に理系の素養のない経営層には、説明に失敗すると理解してもらえない)など、人によって向き・不向きがはっきりする部署ではあります。

 また、研究部門のお客様は開発部門であるため、その先のマーケ・営業、そしてお客様からはかなり遠い位置にあります。相当自分が意識していないと、会社・業界・環境の流れから取り残されやすい部署と言えるでしょう。

 一方で、当たれば大きいイノベーションを起こせるのが研究開発の醍醐味です。難しい、ほぼ不可能と言われていたことが達成でき、それまでの商品・会社・業界を根本からひっくり返せる可能性がある、数少ない部署の一つであることが、最大の魅力かもしれません。

3) Q&A

Q.どっちの方がやりがいあるの?

A. 好みによります。

 製品が出るというやりがいを得られるのは開発
でしょう。

 例えばBtoC商品であれば、自分の親や大切な人に「私はこれを作った!」と胸を張って渡すことができるでしょう。BtoBの商品でも「この商品に私の作った商品が使われているよ」とはいうことが出来ます。

 これが研究側だと結構難しかったりします。論文を出したとか、学会発表をしたとかが対外的な成果になるので、メーカーというよりも大学の延長のような雰囲気ですね。

 一方で、テーマの自由さについては間違いなく研究です。基本開発はオーダーが決まっているのに対し、研究側は何をやるかからが仕事です。自分でテーマを立案し、スケジュールを立て、試験をし、結果に結び付けていくというプロセスが出来るかは個人差がありますが、好きな人にはたまらないでしょう。

 成果の出方について野球に例えると、開発はヒットメーカー、研究はホームランバッターです。低打率の。だからこそ、革新的な何かを成し遂げられると、一気に日の目を見ることもありますね。弊社でも複数、基礎研究から生まれた製造そのものを変えてしまった製法や、各種メディアに取り上げられ対外的な賞を受賞されたような素材があります。

Q.どっちの方が忙しい?

A. 開発です。理由は明確で、締切があるからです。
 
NB商品であれば新商品・リニューアルの時期というのは決まっていますし、PB商品であればお客様との期限があります。また、コンビニのようにコンペが頻繁に行われるようなお客様だと、次から次へと試作・改良の繰り返しになります。私も休日返上でお仕事した思い出があります。

 一方で研究はあまりキツい締め切りはないことが多いでしょう。外部出向で任期付きの場合くらいでしょうか。

 基本自社の中での締め切りは、それほどプレッシャーの大きいものはありません。自分の評価と信頼は損ねても、お客様に迷惑がかかるわけではありませんからね。

Q.どっちの方が出世しやすい?

A. 個人によるというのが前提ですが、マクロで見ると出世する人が多いのは開発だと思います。少なくとも私の会社では。研究で出世が早い人がいないとは言いませんが、かなり上手な立ち回りが必要になります。

 理由は、やはりテーマのスパンの問題ですね。開発は1年の間に何個も商品が出ますし、その取り組みの中での評価が明確に出ます。手がけた商品がヒットした場合は開発者の貢献も大きいので、評価は高くなります。

 一方で、研究の場合はそもそもテーマが3年かかるとかいうものがザラにあります。一応結果までのロードマップを描いて進めていきますが、結局成果として出ていないので「可もなく不可もない」成績になることが多いでしょう。

 また、研究の場合は「長期のテーマを多く持つ」ことが多いので、1つのテーマが優れた結果だとしても、残りの5つのテーマがまだ進行中とかだと評定を均したときに結局「中の上」だったみたいなことになります。
 逆によほどでないと「中の下」以下も取らない部署でもありますが。

 研究側で良い成績を取ろうと思ったら、成果が出そうなテーマを立案する、あるいはそういうテーマをやっている人に乗っかるという立ち回りが必要になります。短期で結果を出せる研究テーマはありますし、それを立案して結果に結び付けられる人はやはり凄い人が多いですね。

 一旦この辺りで締めましょう。
 ご質問・ご意見いただけたらとても嬉しいです。

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