闇 405(シャブ中とゴマすりとすしまみれ編)
闇 405(シャブ中とゴマすりとすしまみれ編)

2025/11/29 sta
前回の章
二千十七年四月十九日、水曜日先勝。
今日は店長の香川がいないので、俺、川崎、吉岡の面子でとても気楽。
丸メガネがいないとここまで心が綺麗になれるのかと思う。
しかし店内の忙しさはいつもと変わらない。
ルルを始め、同じ中国人のルナ。
不動産の太客樋口と後輩の小島ことコジマックス。
やたら食事を食べる大食漢の田中仁。
陰で客から小坊主と呼ばれているイヒヒと笑う松島。
妙に自分を大物ぶって話し出すと止まらない高山。
太々しい態度の建築系社長の坂本九ことホリエモン。
最近毎日来るようになった丸。
地元川越にあったデパートだったのかどうかも不明なニチイの四階にいた半額堂にいた関西弁の胡散臭いオヤジに顔だけ似た小久保冬太。
この辺がラッキーハウスの常連である。
この面子を見ない日はないんじゃないのかというほど、毎日のようにポーカーゲームにハマっていた。
そこへ数日に一回は来る常連たちが加わってくるのだ。
不動産のおじいちゃん深谷さん。
その友達の禿げている上田さん。
キャバ嬢風の佐藤美奈。
風俗嬢らしいと噂の妙に人懐っこい由奈。
そしてラッキーハウスと同じビルの二階で裏スロを経営している小沢。
彼は伊達が元々入っていた箱のオーナーが代わり、あとから入ってきた男だった。
何故俺がそこまで詳しいかというと話は池袋バラティエ時代まで遡る。
以前裏スロをリニューアルするからと、俺に店の印刷物のデザインをお願いしてきた伊達。
ラーメンキングのあるアタミビル、その隣のアタックビルの二階。
入口横のインターホンを押すと、すぐに伊達が出てくる。
「すみません、岩上さん。無理を言っちゃって」
「オープン前だからしょうがないですって」
中へ入るともう一人の男がいた。
「あ、紹介します。小沢さんといって新しい体制で入ってきた人です」
「はじめまして、岩上です」
俺が頼まれたものは、店内告知の印刷物以外にもスロットへ直に挿す用の物も言われる。
各作る大きさをメモしながら話をした。
結構な量なので、今日仕事を休み取って正解だ。
「一度で済ませたいので、他に作ってほしいものあれば、何でも今言って下さい」
再確認し、俺は店を出た。
これから川越の実家へ戻ってデータを作成する。
一度寝て、夜になったらまた歌舞伎町へ。
睡魔が襲うが、頼まれた物のデータを作れるだけ作る。
限界を感じると、俺はそのまま大の字になって寝た。
元の型だけ作成すれば、あとは中の文字を打ち変えるだけ。
『高設定台?』
『四、五、六確定!』
言われた謳い文句の言葉を入れて画像を作成していく。
結構な数を作ったな……。
ひと店舗分の印刷物を一日で作るのだ。
それは大変な数になるだろう。
データをUSBメモリースティックへ写す。
念の為伊達へ連絡をして、すべてのデータの確認をした。
「ええ、それで大丈夫です。すみません、急がせてしまって」
「いいですよ。じゃあこれから歌舞伎町へデータ持っていきますから。ただもう店休んでまでは、協力できないですからね」
「本当申し訳ないです」
西武新宿線で歌舞伎町へ向かう。
夜の十時に新宿へ到着。
データを渡すと、小沢は「ありがとう」とお礼を言う。
俺よりは少し年上みたいだが、初対面で人に頼み事をしときながら「ありがとう」という言い方はないんじゃないのか?
堪えろって……。
伊達の顔を立てる意味合いで、行った行為なのだ。
このあと中華のニーハオでごちそうになっただけで終わったこの出来事。
俺はかなりの時間を掛け、自分の仕事をちょっと早退してまで尽くしたのに、ニーハオの食事と酒だけで終わった。
このあとオープン時の設定を失敗して従業員を抱えられないと、伊達は追い出される結果となる。
つまり俺がした事は、まるで関係のない小沢を無償で支援しただけという事になる訳だ。
二度目の接触は、俺がうな鐵前のヤクザビルでゲーム屋をしている時。
どこから噂を嗅ぎつけたのか知らないが、また裏スロをリニューアルするから印刷物のデザインをしてほしいというお願いだった。
前に作った型はデータで残っていたので、そこまで時間は掛からず作業を終える事ができたが、これを引き受けたのももしかしたら客として小沢が来てくれるのではないかという淡い期待から。
しかし来たのは一度だけで、作業手間賃として一万円をもらっただけで終わる。
小沢から見れば、俺は貸しを作ったままの人間。
その男が今、ラッキーハウスへ客として来ている皮肉。
吉岡の話によると、負けが込むと熱くなりいくらでも金を使うそうだ。
しかしその場の従業員へ八つ当たりする癖もあるようで、面倒な客だと説明された。
俺の顔を忘れる訳がないだろうという思いがあり、小沢のINの時は率先していくようにする。
だがゲームに熱中して気付かないのか、小沢は俺に気付く素振りもない。
ゲームテーブルにギリギリまで顔をつけるように打つので、視力が悪いのだろう。
「お久しぶりですね、小沢さん」
あえて俺から声を掛けてみる。
彼のゲームをする手が一時止まり、ゆっくりをこちらを見た。
小沢は片目が悪いようで、外見からして異常があるのが分かる。
片目の視点が定まっていない。
俺の顔を認識するまで結構の時間が掛かったようだ。
「あー…、岩上君かー」
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