闇 396(闇バレンタインの夜中編)
闇 396(闇バレンタインの夜中編)

2025/11/18 tue
前回の章
コールが三回ほど鳴り、電話に出るゴリ。
第一声なんて言うつもりだ、屑が……。
「おう、智いっちゃん久しぶり」
「……」
このクソ野郎…、言うに事を欠いて智いっちゃんだ?
この二年以上の空白をこの馬鹿は何も思っていないという事か?
「何だよ、黙って。どうした、いっちゃん」
「いっちゃんじゃねえよ! おまえさ…、一体何なんだよ!」
「え、何って何だよ? 俺が岩崎努だって言うのは知ってるだろ?」
「……!」
俺は気付けば近くの電信柱を蹴飛ばしていた。
やめろ、落ち着け。
物に当たるのは良くない。
それに足が思い切り痛い。
「今日はどうしたよ? 川越に帰って来てるの?」
「ああ、帰って来てるよ! おまえ、今から出て来い!」
「え、もう十一時回っているぜ?」
「うるせーっ! いいから出て来い!」
「来いってどこにだよ?」
「本川越のほうだよ」
「だからどの店だって」
「……」
篠崎の大漁丸は嫌だ。
こんな会話、他の同級生に聞かれたくない。
向かいの二階にあるきらくならどうだ?
あそこなら広いし、個室みたいな席なら会話など聞こえない。
「篠ヤンの働いている大漁丸あるだろ? あそこの向かいの二階にあるきらくだ。お好み焼き屋。そこにいるから今すぐ来い」
「何だよ、相変わらず自分勝手な奴だなあ、いっちゃんは」
「うるせー、とっとと着替えて来い!」
本川越駅から左に曲がる。
岩上整体跡地の前を通り過ぎ、大漁丸の前を通った。
道路の向かい側からでも篠崎の姿が見える。
見つかると今日は面倒だ。
俺は犯罪者のようにコソコソ左を向いたまま歩く。
新宿の違法賭博ゲーム屋で働いている時点で、俺も犯罪者ではあるか。
でも人を騙している訳ではない。
賭博狂いな人種へ場所を提供し、そこで働いているだけに過ぎない。
だから俺は警察へ捕まるまでは犯罪者ではない。
そもそもそこまで悪い事はしていないはずだ。
どうでもいい言い訳をしている内に、気楽へ到着した。
階段を上り、二階へ向かう。
ドアを開けると「あー、岩上さん、いらっしゃいませー」と黄色い声が聞こえる。
ここも直美が経営する店で、愛のいるノイとは系列という事になるのだ。
「中々顔出せなくて悪いな。あとでもう一人来るから、そっちの離れた席使ってもいいか」
「ええ、どうぞどうぞ。お好きな席へ」
「グレンリベットはこの店あったっけ? 無ければスコッチ系なら何でもいい。ストレートでくれ。あとチェイサー代わりにレモンサワー」
「畏まりました。あ、岩上さんの同級生の篠さん、よく大漁丸の仕事終わると、うちへ来てくれますよ。ありがとうございます」
「まああいつが勝手に来ているだけだから、俺に礼なんていらないよ。あ、ゆりさ、豚玉もおくれ」
「はい。畏まりましたー」
「あ、ゆりさ…、あとおまえと、もう一人奥に従業員いるのか? なら二人共一杯ずつ飲みな」
「ありがとうございまーす」
この店を管理している女の名はゆりと言った。
漢字は知らない。
別に顔見知り程度だからどうでもよかった。
以前篠崎をここへ連れてきたら、彼は一発でハマりよく来ているようだ。
タバコに火をつけ酒が来るのを待つ。
これからあの屑野郎が来る。
何が気に入らないかって……。
二年ぶりというのにまるで緊張感の無さがまずムカつく。
「はい、智一郎さん、お酒お待たせしましたー」
「おう、ありがとよ」
「智一郎さん来て頂けるの久しぶりですねー」
「だって俺、ゆりは別にタイプじゃないし。愛ちゃんだったらもっと顔出してるよ」
「でも、あそこ、もう終わっちゃったじゃないですか」
「え……」
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