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闇 438(履歴書に書き切れない職歴編)

闇 438(履歴書に書き切れない職歴編)

2025/12/30 tue
前回の章


二千十八年一月九日、火曜日先負。

「赤崎さん、食事休憩どうぞ」
「では、外行ってきますね」

昨夜の意識改革がもたらしたものは?
歌舞伎町の花道通りを歩きながら、西武新宿駅前通りへぶつかる。
いつもとは違った方向へ……。

自然と足は職安通りへ向かい、北口の大ガードを潜った。
このまま真っ直ぐ行けば小滝橋通り。

通りへ出る手前の左角で屋台のような簡素な造りの弁当屋を見つける。

こんなところで老夫婦が弁当屋をしていたのか。

2018/01/09 手作り弁当 かず菜

通り沿いの店で適当に食事をしようと考えていたが、妙に気になる店だ。
遠めからしばらく弁当屋を眺める。

手作り弁当と大きく書かれた赤い看板。
初老の男性が奥でおばあさんが揚げた唐揚げをトングでつまむと、弁当容器へ入れて次々と狭い店内へ並べていく。
二坪あるのか、この店?
値段は唐揚げ弁当五百円、ハンバーグ弁当五百円と書かれているが、どう見ても唐揚げしか見えない。

「すみません、一つ頂いていいですか?」
「はい、五百円になります」

「あのー…、ハンバーグ弁当は無いんですか?」
「今ありません。唐揚げだけになりますね」

五百円玉を置こうとして、慌てて財布から千円札を取り出す。
プーさんの缶へ貯めなきゃいけないのに、俺は何をやってんだ。

金を払うとおじいさんは、弁当容器にご飯を詰めてビニール袋へ入れる。

「はい、お待たせしました」

2018/01/09 手作り弁当 かず菜

大き目の唐揚げが四つにご飯だけの弁当。
定番の黒ゴマも梅干しもお新香も何も無い。

店へ持ち帰り恐る恐る食べてみる。
ん…、結構美味いぞ。
揚げて油を切ってからすぐつける秘伝のタレ。
これが甘くて唐揚げの美味さを増加させていた。

五百円でこのボリューム感。
味も悪くない。
また行くだろうな……。

フェイスブックへ写真を投稿すると、西武台高校時代の同級生小谷野がコメントをしてきた。

『肉と米だけ? 小谷野悟』
『うん、肉と米だけ。 岩上智一郎』

続いて飯野君からもコメントが入る。

『その近くの定食屋さんが気になります。 飯野誠』

おそらくさつき食堂の事を言っているのだろう。
ショーウインドーケースに様々な定食やカレー焼きそばが提示してある店だ。

『さつき食堂? あそこ、ハンバーグ美味しいよね。 岩上智一郎』

過去一度だけ行った事があった。
ハンバーグが中々美味しかった記憶があるが、あの店は名前が悪過ぎる。

今ではようやく家から居なくなったものの、散々破壊の限りを尽くしてくれた加藤皐月。
どうしてもあの女を連想させてしまうのだ。

動物という視野で考えると、親は絶対に子供に餌を与え、育てていく。
しかし、年老いた親に餌を与える子供はいない。
そんな事をするのは人間だけなのだ。
何故、俺たちは人間として生まれ、年老いた親の面倒まで見ようとする習性があるのだろう?
周りを見渡せば本当に何年経っても仲良しの親子なんてたくさんいる。
生まれた時から愛情というものを注ぐ親。
それを未だ覚えている子供。
だから仲良くいられるのかもしれない。
では、俺の家はどうか?
愛情なんて注がれなかった。
片方の親だけならまだいい。
お袋は操り人形のように扱い、自分自身いっぱいいっぱいになると捨てていった。
親父は愛情というものはあったかもしれないが、責任感というものが欠如していた。
両親共にすべて自分自身だけの為に生きていた。
そしてもう一人の戸籍上の母親になってしまった加藤皐月。
いつの間にか籍を入れていて、それに気付くまで五年間。
世界で一番嫌な女が戸籍上とはいえ、俺の母親になっていたのだ。
想定した以上、本当に汚い女だった。
おじいちゃんの家に住む俺や伯母さんのピーちゃんを回り近所に「まったくパラサイトが二人もいて、それの面倒を見るようだから大変よ」と言いふらし回っていた。
実際面倒など何一つ見てもらっていないが、加藤皐月はそういう事を平気で人に言いふらす。
頭の中は金の事しかないくせに、綺麗事を言って妙に自分を取り繕っている。
気付けば家に棲みついた物の怪。
親父以外、誰一人も歓迎などしない。
俺が高校時代に人妻三人で乗り込んできた事実。
親父が逃げ回っているのに、家の近くで毎日ようにストーカー行為を繰り返していた事。
ジャンボ鶴田師匠が亡くなったあと、俺が総合格闘技の試合前夜、家へ勝手に上がり込み、大騒動まで巻き起こした。

例を挙げればキリがないほどの因縁。

あの女が家に関わらなかったら、俺の人生さえ随分変わったのではないかと思ってしまうほど。

いや、人のせいにするな。
俺に決定的な力が無かっただけだ。
誰かのせいに擦り付ける事で楽になれる生き方など、意味はない。

せめて俺は俺らしく生きていくと決めたはずだろ?

こういった自己の意識改革の中でもに渡り渡り最善尽くす事。
こんなところから始めて行かないと、俺は話にならないのだから。

それにしても、あの時あれだけ憎しみ合った親父とは二俣川から戻って以来、一度も喧嘩をした事がない。
一年以上経ち、俺はあの男へ弁当まで買って帰る事もあるほど。

本当に人間なんて、生きていればどう転ぶかなんて分からない生き物だな……。

そんな事を考えながら川越に着く。
いつものように駐車場へ向かう。

昨日あれだけいたのに、野良猫ニャーニャーは二匹だけ。
残りはどうしたんだろうか?

「おい、今日はおまえたちだけか?」
「ニャー」

「はいはい、ちゃんとご飯買ってくるから待っててね」
「ニャー」

2018/01/09 埼玉りそな銀行の駐車場の野良猫ニャーニャーたち

明日になればまた何匹か増えているさ。
餌を置くとガツガツ食べ出す。

2018/01/09 埼玉りそな銀行の駐車場の野良猫ニャーニャーたち

俺はいつまでこんな行為を続けるのだろうな。
この子たちがもし子を産んだら数はどんどん増えていく。

ペット可のマンションを真剣に考えたほうがいいかもしれない。


二千十八年一月十一日、木曜日大安。

珍しく昨日の休みは部屋から出ず、ゲームだけして過ごす。
なのでいつのも餌やりへ行かなかった。

正確には行かなかった訳ではなく、夕方食事をしに行く際寄ってみたが、いつもと違う時間帯のせいか、ニャーニャーたちの姿は見えなかったのだ。

仕事をする以外何もできない俺は、今日も新宿へ金を稼ぎに向かい、時間まで働いて金を得る。
いつもと違うのは、ストック分の給料をもらえた事ぐらいだ。
年末年始の休みがあったので、二十日前後のプール金で十万程度だが、競馬で負け続きだった俺には嬉しい収入である。

今の俺は停滞期なのだ。
シャカリキに無理して動いたところでしょうがない。
焦りは歪みを生む。
日々働き、週末になったら適度に競馬で遊び、小銭を貯めればいい。

四十六歳まで生きてきて、これまでのツケが現在なのだ。

店内は丸が長期滞在して、トイレへ入ると相変わらず妙に長い。
橋本が近付いてきて「絶対丸の奴、便所でシャブやっていると思うんですよね」と小声で囁いてくる。

確かに過去の店を思い出すと共通点は多い。

一番街通りにあったワールドワンでは、当時『シャブ中三兄弟』と名付けた三人組の客がいた。
店のトイレに入り長時間出てこないところは一緒。
出てくると薬の決まり方に個人差が出るのか妙にハイテンションになる長男。
暗く沈んだようなまま寡黙にゲームを打つ次男。
ロックコンサートでも行っているかのように首を前後に振りながら歩く三男の客がいた。

初期横浜時代の下陰さんの二階の店のインカジでもシャブ中は多かった。
五百ミリリットルの水を持ってトイレへ入るヤクザ客。
酷いのが注射器がトイレに置いたままだったり、店内のおしぼりに包んだまま忘れていく馬鹿な客がいたところ。
福富町はあそこまでシャブが蔓延しているのかと当時驚いたものだ。

続いて新宿〇〇会直営の二階のゲーム屋。
あそこも最初から酷かった。
まず俺が入る前にいた従業員の荻。
あの馬鹿を見て、俺はシャブのヤバさを本当に知った。
これまで百聞は一見に如かず程度だった俺。

当時知らなかったとはいえ、もっと早く対処しなければならかったのだ。
無知は罪である。

荻の座る席以外、綺麗に掃除はしたのだ。
あとは気にせずゆっくりすればいい。
やるべき事を終え、タバコに火を付ける。
「あーっ!」
突如荻が大声を上げながら立ち上がった。
荻は奥のキャッチャーのほうへ向かい、どこにあったのかアルミホイルを手に取る。
適度な大きさに切り、アルミホイルを丸めていく。
何やってんだ、あいつは?
声には出さず様子を盗み見した。
何かを丸めたアルミホイルへ詰め、火を付ける。
「はぁー……」
彼の一連の行動。
シャブを炙っているようにしか見えない。
「ちょっと! 何やってんの?」
思わず出た言葉。
こんな目の前でシャブを扱う人間を見るのは生まれて初めてだった。
俺の言葉に対し、荻野の目は尋常ではない。
「オーナーに許可得てっから!」
「……」
どこの世界にシャブをやっていいと許可するオーナーがいるのか?
「あ、岩上さん。もし自分がここにいない時でも、荻の奴が遅刻とか変な事をするようなら、遠慮せず報告して下さいね」
ヤクザオーナーの新庄の台詞が頭の中で木霊する。
直感でも何でもなく、すぐに理解できた。
コイツ…、本当にヤバい奴だ……。
極度のシャブ中。
こんな店の中とはいえ、堂々とシャブを食らう従業員がいる現実。
ヤクザ直営店のゲーム屋。
こういうのも込みで、直営店なのだ。

俺自身シャブには興味がまるでないので、使った事すらない。

あの時荻を見て、本当にシャブは人間を壊すものなのかとこの目で初めてみたのだ。

あのようなキチガイと一緒に働いていくのは土台無理な話。
これから新庄へ連絡をして、荻に関する話をしないといけない。
時間帯も昼間のほうがいいだろう。
何か変な事をしているような報告して欲しいと言った新庄。
あの台詞の裏側には明らかに荻を毛嫌いしている部分はあるはず。
ゆっくり深呼吸をしてみる。
俺は新庄へ電話を掛けた。
「あ、岩上さん、どうしました?」
「新庄さん、お電話大丈夫ですか?」
「ええ、問題無いですよ」
「荻の件でなんですが……」
「あいつ、やっぱり何かしていましたか?」
「一つ最初に聞きたいのですが」
「どうぞ」
「荻の奴が店で客いない時にシャブをやっていたんですが、新庄さんが許可をしたと言っていたんですね」
「はあ? あの馬鹿、そんな事やってだんですか!」
温和な新庄の声が大きくなる。
「ええ、自分も注意したら、許可をもらっていると……」
「どこの世界にシャブを許可する人間がいるんですか」
「……。ですよね……」
やはりキチガイの虚言。
よし、様子を見ながらすべて話し、荻の駆逐をしないと。
「シャブを炙るのは数回目撃しています。あと客がいない状況で、店の明かりを消して椅子を並べて寝るような行為…、これも複数回見ています」
「うーん…、やっぱりなあとは思っていたんですけどね」
「どういう事ですか?」
「あいつ、自分とかヤクザ者の前だと本当に礼儀正しいし、気も利かせるんですよ。ただそれ以外の客層から本当に評判悪い話しか聞いていなくて…。岩上さんがご覧になったように、うちの店あんな暇な状態なんですよ。もう半年くらい赤字ですよね。従業員も荻しか定着しなくて」
「そこへ自分が入ってきたと?」
「ええ、それで岩上さんに変な事しているようなら報告してほしいと言ったんですね」
新庄の真意が理解できてきた。
恐らく使えない荻のクビを切りたいのだ。

現在ラッキーハウスのトイレに籠もる丸。
ひょっとしたら橋本の言うようにシャブをしている可能性は否めない。

これまでの俺の経験を思い出せ。
過去シャブ中でどんな特徴の奴がいた?

しかし先ほどの荻のイメージが強過ぎて、どうしてもあの馬鹿の行動しか出てこない。

荻をクビにした審判の日。
あの馬鹿にも生活は当然ある。
…と言ってもシャブを買う金欲しさなのだろうが……。
俺は酒井さんへ連絡し、荻の情報を流す。
杞憂に過ぎないが、店でシャブを炙るような危険な奴なので、絶対雇わない方がいいと伝える。
あの組織に噂を流しておけば、ある程度は歌舞伎町に広まるだろう。
結果荻はインカジをどこも雇ってもらえない図式になる。
ゴキブリを見掛けたらキッチリとどめを刺さなきゃ駄目。
中途半端に生命力だけは強いから、せめて歌舞伎町内だけでも追い出さないと。
名付けて『荻シャブ中浄化作戦』。
石原元都知事よ、ちょっとだけパクらせてもらうぜ。
俺って嫌いな奴にはとことん酷い事ができるのだなと、初めて自覚した。
この嬉しさを誰かと共有したい。
そうか、選んだ知人限定でフェイスブックへ投稿しちゃおう。


【ストレートしか投げなかった投手が初めて変化球を投げたお話】
二千十五年二月二十二日
とある知人のつてで、俺の新しい生活が始まった。
今より一週間ほど前の話である。
とある店を紹介され、すんなりそこで働く事に。
しかし初出勤前日にオーナーから連絡があった。
要約すると、今いる従業員に対し非常に困っているそうだ。
オーナーには常にペコペコ、しかし客からのクレームが酷く、店自体閑古鳥が鳴くようになってしまっているのが現状。
そこで一週間その問題ある従業員と時間を被せるので、店内の状況を正直に教えてほしいそうだ。
店を流行らせ、売上を出す事が一番望ましい事である。
なので、俺は快く了承した。
入って二日目までは、ちょっと癖があり、我が強そうな奴ぐらいにしか思わなかった。
客はほとんど来ない状況。
一週間経ち、初めてオーナーの苦悩が理解できた。
簡単にその問題ある従業員がやった事を箇条書きにしてみよう。

・客がいないと店内で堂々とシャブをやりだす
・暇なのに二日に一度は必ず〆の現金が合わない(※マイナスばかり)
・〆の現金が足りないのを俺のせいにする
・客に喧嘩を売る
・客よりも自分のほうが立場上だと勘違い
・遅刻し、客がいないと椅子を並べて熟睡
・〆が合わないから自宅へ用紙を持ち帰り、三日間寝ていないと自慢
・客がいるのに自分自身が不機嫌だと態度が非常に悪い
・俺の経歴を知っても尚『喧嘩ってのは気合いですべて決まる』と豪語(笑)
・自分で俺は頭がいいからと自慢

…と、例を挙げたら切りがない。
以前ならぶっ飛ばして終わりにしていたが、今回はオーナーへ事実を伝え、その場でクビに(笑)。
新宿中の知り合いのオーナーや店長、マネージャークラスに馬鹿の情報を流し、どこへ面接行っても採用させないよう伝えた(笑)。
ああいう馬鹿はとっとと捕まって、生涯檻の中で生活してほしいものである。
おわり


横浜から新宿へ来て、インターネットカジノ新宿クレッシェンドで煮え湯を飲まされ金を失い、ヤクザ直営のゲーム屋で自尊心すら失い掛けた。
久しぶりにスッとする事ができた。
決して褒められるような行動でないのは自覚している。
それでも誰かにこの感動と興奮を伝えたかった。
この闇の部分を小説にしたら、絶対に面白く書けるだろうな。

「……」

果たして本当に丸はシャブなどやっているのか?

ただトイレが長い客という可能性もある。
何故なら荻のように酷い要素が一つも見当たらないからだ。

ちょっと支離滅裂なだけで店に害がある訳ではない。

丸がトイレから出てくると笑顔で俺に近付き「お顔を見るとホッとします」と声を掛けられ席へ戻った。

「……」

まさかホモという事はないよな?
橋本は「赤崎さん、自分一服するんでホールお願いしますね」と奥へ引っ込みセブンスターに火をついていた。

アイコスパープルを吸った嫌な臭いが鼻をつく。
本当に丸も、セブンスターにすればいいのになあ……。

帰り道いつもの埼玉りそな銀行の駐車場へ寄る。
今日は色合いが若干薄い猫が一匹だけしかいない。
この子はニャンタッタだ。

「ねえ、ニャンタッタ。他の子たちはどうしたの?」
「ニャー」

2018/01/11 埼玉りそな銀行の駐車場 野良猫ニャンタッタ

野良なのに綺麗な顔立ちをしている。
いくら話し掛けたところで、会話など分かる訳がないのだ。

俺は餌を買いに行き、ニャンタッタが食べている時頭を触ろうとした。

「シャーッ!」

頭を撫でさせてくれない……。

ひょっとして他の猫がいないのも、他の人間に苛められたからか?
今まで大丈夫だったのに、俺にまで警戒心を持っている。

こうなると強引に近付こうとしてもいけない。
俺は餌だけ置いてしばらく様子を眺めてから、大人しく家へ帰った。


二千十八年一月十三日、土曜日先勝。

駅前の猫は昨日見当たらなかった。
土曜競馬また負けたので、大好きな揚げ塩落花生を買う事にした。

親父が配達でたまに買ってくる事のあった揚げ塩落花生。
最近見ないので聞いてみると、いつも買っていた店が取り扱わなくなってしまったらしい。

しかし時代の進化かインターネットで検索すれば、簡単に見つけられ購入もできるのだ。
競馬にたくさん金を費やすぐらいなら、揚げ塩落花生。
いっぱい買って届いたら、馬鹿親父にも一袋ぐらいくれてやるか。

今日も帰り道駐車場へ寄ると、二日連続で猫たちはいなかった。

二千十八年一月十四日、日曜日友引。

今日もまた競馬を負ける。
まあ今までに比べれば額が小さいので致命的ではない。
それでも負けるという行為は悔しかった。

今年になって一レースも当たっていないのだ。
もうギャンブルは辞め時なのか?
それでもいくらこれまで金を使ったと思っている。
このまま尻尾を巻いて逃げるのかよ?
黙れ、ヘナチョコ赤崎。
おまえがへっぽこだから金が目減りしていくのだ。
それなら神威のワールドワン時代、キャバクラだ競馬だと毎日いくら使って遊び回ったのだ。
やめろ、おまえら。
底辺同士の言い訳などしたところで何も生まれないぞ。
元はと言えば、おまえが主人格じゃねえか。
勝手に小説のキャラクターの名前使って人格を押し付けて、現実逃避してんじゃねえよ、屑野郎。

自分の中で使い分ける三つの人格の見苦しい言い争い。
新宿クレッシェンド主人公、現ラッキーハウスでの偽名を名乗る赤崎隼人。
打突や新宿プレリュード、鬼畜道から俺の分身として作った神威龍一。
そして現在社会の底辺を継続中の岩上智一郎。

やめろ!
あまりにも自己を卑下し過ぎるなよ!

昨日今日と俺は競馬を全レース外した。
それだけの事なのだ。

溜め息をつきながら川越へ。
駐車場を覗く。

「ニャー」
「あ、ニャーニャーたちだ。おまえら二日間もどこ行ってたの?」

「ニャー」
「ニャー」

「はいはい…、ちょっと待ってろよ」

やっと会えた野良猫ニャーニャーたち
今日は五匹もいるぞ。

餌を買いキャットフードをばら撒く。
ニャンタッタと似たような毛並みの猫が、一匹だけ遠慮なのか警戒なのか遠くから眺めている。

「おーい、おまえもおいで」

寄ってくる様子がないので仕方なく遠くまで餌を投げて初めて食べ出す。

2018/01/14 埼玉りそな銀行の駐車場 野良猫ニャーニャー

二日ぶりのせいかいつもよりガツガツ食べる猫たち。

「餌ありつけないのに、何でいなかったんだよー」
「ニャー」

肉のパックを開けても中々気付かず、目先のキャットフードだけを食べていた。
近くまでズラして初めて貪り付く。

2018/01/14 埼玉りそな銀行の駐車場 野良猫ニャーニャー

そーっと手を伸ばす。
今回は普通に頭を撫でさせてくれた。
競馬に負けた俺を慰めてくれたのね、ありがとうニャーニャーたち。


二千十八年一月十七日、水曜日赤口、冬の土用入り。

今年二度目の休みがやってくる。
近所の川越の店は水曜定休が多い。
これは昔からそうだ。
デパートの丸広がそうだから、右へ習えという感じなのかもしれない。

カフェアンジーへ行こうとして開いてなかったので、中央通りへ出る。
和菓子の伊勢屋の暖簾が見えたので中へ入った。
先輩の始さんが忙しそうに店内を動き回っている。

「おう、智一郎。今日は休みか?」
「ええ、アンジー行こうと思ったら休みだったんですよ。始さんはご飯食べたんですか?」

「俺はこれからもう一軒配達があるんだよ。食事はそれからだな」
「あ、じゃあ俺も手伝いましょうか? そのあと食事行きましょうよ」

「まあいいけど…、ちょっと車持ってくるから待っててな」
「今日は弘惠さんいないんですか?」

「さっきまでいたけど、二階で休んでいるよ。客来たら呼んでやってくれ」
「分かりましたー」

セブンスターに火をタバコを吸う。
年明けから少し経ち、和菓子屋もようやく一息つける時期。

ずっと繰り返し和菓子や団子などを作り続けていたんだもんなあ……。

俺などこれまでどれだけ仕事を変えた?
履歴書の欄じゃ書き切れないぞ?

自衛隊、探偵、3Sカンパニー、変な教材売りの仕事、高砂熱学の八景島シーパラダイス。
それから全日本プロレス、協同商事、グリーンプラザ上越ホテルに浅草ビューホテル。
歌舞伎町へ渡ってゲーム屋のベガからワールドワンで働きながら総合格闘技タイタンファイト出場。
組織が廃退し、北中の裏ビデオ屋メロンで働きながらピアノ発表会。
五つの裏ビデオ屋の統括、風俗ガールズコレクション。
長谷川昭夫の秋葉原の裏ビデオ屋アップル。
裏稼業を引退し、花園新社にSFCG。
その後岩上整体で、新宿クレッシェンド受賞に総合格闘技DEEP。
大日本印刷にKDDIと来て川上キカイに佐川急便。
二度目の歌舞伎町復帰で酒井さん系列のインターネットカジノ。
横浜へ渡り、下陰さんの元でインカジ。
三度目の歌舞伎町でインカジ新宿クレッシェンド。
ヤクザ〇〇会直営ゲーム屋。
二度目の横浜へ行き、矢田部のインカジ、イワカミ工業、三田のインカジハッピー、二俣川戸田の旭総建工業。
四度目の歌舞伎町でゲーム屋ラッキーハウス。

「……」

本当に愚かで恥の多い人生を歩んできたものだ。
自分でも何回変えたのか分からないほどの職歴。

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