闇 476(我が愛しのノスタルジー編)
闇 476(我が愛しのノスタルジー編)

2026/02/08 sun
前回の章
二千十九年十一月十四日、木曜日先負。
食事休憩の帰り道、ふと夜空を見上げる。
すると暗黒の隙間の奥に薄っすら光のようなものが見えるような変な空だった。
あの雲の向こうに何か蠢く不思議で巨大なものが実在したら、それはそれで面白いのにな。
俺は変な雲の夜空の写真を撮ってみた。

仕事を終えると山下が飲みに行こうと声を掛けてくる。
「ん? 何を空見てんすか?」
「変わらない普通の空だなと思って」
朝になり空を見れば、昨夜の奇妙な雲の正体が少しは分かると思ったのに残念。
たまたま雲と月の光が醸し出した光景だったのかもしれない。
「何言ってんすか。そんな事より飲みに行きましょうよ」
「いや、行かない。俺はこのまま横浜へ行くんだから」
「えー、冷たいっすよー」
「じゃあおまえも一緒に横浜行くか? そしたらいくらでも酒付き合うぞ?」
「自分は今日仕事っすから」
「俺は休みだから横浜へ行くんだ。また今度な」
この溜まりに溜まったストレスを今日は横浜で粉砕しよう。
俺は新宿駅から湘南新宿ラインで意気揚々と向かった。
横浜で乗り換えて吉野町駅でタクシーを拾い、いざ懐かしの麦草へ走る。
何故ここまで早い時間行こうとしたか。
過去気まずくなり現在はまったく連絡を取らなくなった百合と顔を合わせたくないからだ。
二月四日が最後。
今日が六月十六日だから四ヶ月以上音沙汰無し。
こんな駄目な男、見限って正解だよ、本当に……。
俺はフェイスブック上で百合との友達を解除した。
さようなら百合。
もう麦草へ行く事もないだろう。
本当大好きだったよ。
ベランダへ出て川を見ながらタバコを吸う。
この川の先に麦草があるんだもんな……。
忌々しいかつて住んだレオパレスのマンションの前を通り過ぎながら、百合との過去を思い出す。
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