闇 456(平成から令和直前スポンジ編)
闇 456(平成から令和直前スポンジ編)

2026/01/17 sta
前回の章
二千十九年三月十九日、火曜日友引。
ちょっとしたひと騒動というか人事異動が起きた。
系列のインカジで従業員が飛び、一人をラッキーハウスから駆り出さなくてはならなくなる。
必然的に行かされる要員は、川崎となってしまう。
店長の橋本とも、早番責任者のオカマの木下とも合わない彼。
必然的に川崎に標準が合ってしまうのである。
手薄になった早番には、三和が行く事となった。
早番は木下、吉岡、三和。
遅番は橋本、俺、山下。
あとは橋本の知り合いが店に入れば展開もまた違ってくるだろう。
こんな事なら休みを取っておけばよかったと思ったが、今さらあとの祭り。
仕事中の一服で買っていたナンバー3の結果を確認する。
え、これひょっとして当たったんじゃないの?

財布から購入券を見ると、微妙は外し方をしている。
最新結果が『631』、その前が『652』。
俺の買い目は『391』と『469』。
セットで購入しているので、もう少しだけ双方の数字が絡んでいれば当たりだったのになあ……。

すっかり肌に優しい季節になった春。
今頃横浜の大岡川は、桜が咲き始めた頃だろう。
二千十九年三月二十三日、土曜日赤口。
疲れた身体を癒しに仕事あとタイマッサージへ寄り、施術が終わるとエスパスへパチンコを打ちに行く。
結果、出ては入っての繰り返しの末辛勝。
時間的にもう少ししたら出勤。
徹夜でこのまま仕事へ突入する事が決定。
二千十九年三月二十八日、木曜日大安。
今月ほとんど休んでいない状況での日々。
山下もかなり慣れてきたというのもあり、橋本が月末の土日曜日と連休を取ってもいいと言ってきた。
まず俺を休ませないと、店長の名目上自分も取りづらいのだろう。
横浜でもたまには行ってくるかな。
俺は三十日、三十一日と連休を取る事に決めた。
最悪向こうで連泊しても、四月一日の夜までゆっくりできる。
JRAのホームページを見ると、今週は海外のメイダン競馬場で大きなレースがあるようで、日本馬も有名どころが様々なレースへ出走登録していた。
あのクラシック牝馬三冠のアーモンドアイも海外か。

俺は久しぶりにフェイスブックへ予想を投稿した。
海外競馬
ドバイシーマクラシック(GⅠ)

私的に日本馬三頭はコケるんじゃないかなと予想
あっても、6レイデオロ、7スリーヴリチャードのどちらかが食い込んでくる程度
つまり、四歳馬の2.3.5と日本馬6.7の5頭BOX、60点買い
万が一7歳馬が三着に来る事を考えて、2-3-4-5-8の日本馬除いた3連複5頭BOX
当てて横浜で美味い酒飲みたいですな
まあまだレースまで日にちはある。
焦らずゆっくり決めればいいか。
二千十九年三月二十九日、金曜日大安。
いつの間にかGⅠに格上げになった大阪杯もあり、海外複数のGⅠも開催する贅沢な週。
当然日本の競馬もやらない訳にはいかない。
俺は自論をフェイスブックへ投稿し、情報をまとめていく。
去年ね、散々競馬で負けまくったからこそ分かる!
12ステルヴィオ?
距離足んねーし!
2ワグネリアン? 2018年ダービー馬?
こいつね、春先イマイチなのよね
しかも去年9月以来レース出てないし
7ブラストワンピース? 2018年有馬記念馬?
去年の皐月賞時期、全然だったでしょ?
つまり春先この馬駄目って事
じゃあ何来るって?
4 皐月賞馬エポカドーロいるじゃん
3 常に入賞はしてる安定のアルアインいるじゃん
とにかく1-3-4-6-9-13の六頭BOX
三連単なら120点
三連復なら20点
その前に海外競馬当たらないかな
投稿してから、まだ買うのは直前でもいいかと考える事にした。
せっかく横浜行くのだから、久しぶりにフレンチワイズも予約しておくか。
仕事明けの三十日よりも、横浜泊まってゆっくりしている三十一日のほうがいいだろう。
俺のフェイスブックを見た高橋満治から連絡が入り、彼もフレンチワイズへ一緒に行く事となった。
二千十九年三月三十日、土曜日先勝。
今日の朝になれば待ちに待った連休。
必然的に浮き浮きしてしまう。
今日この日の思い出を大切に……。
何せパチンコを勝ち、横浜で桜を眺めながら競馬も勝ち、そのあとフレンチワイズで贅沢なフレンチ料理を食すのだ。
俺はフェイスブックへ記事を投稿した。
【予告】
仕事終わったら、JRA行って大阪杯(GⅠ)買って、昼くらいまでエスパスでシンフォギアやってから、今年初の横浜へ行きます!
山下が「岩上さん、お土産は崎陽軒のシウマイでいいですよ」と言ってきたので頭を軽く引っ叩く。
仕事を終えると一目散にエスパスへ。
昼過ぎまでやるもいいところ無し。
結局夕方ぐらいまでダラダラしながら打ち続けていると、ラッキーハウスの橋本から電話が入る。
内容はまだ山下も入ったばかりだから、俺は休みを取るのはいいが連休は辞めてほしいというものだった。
結果三十日は、このまま寝ずに出勤する羽目になる。
ワイズの予約を明日にしておいて本当に良かった。
二千十九年三月三十一日、日曜日友引。
徹夜で仕事からの横浜。
俺、かなり頑張ったよね?
神様へ話し掛けるも応答無し。
昼過ぎになり大岡川へ向かうと桜が見えてきた。

川沿いにある屋台を見ながら歩いていると、すでに来ていた高橋満治から声を掛けられる。

「お久しぶりです、高橋さん。もう桜満開じゃないですか」
「本当いい季節になったもんですよ。さあ、岩上さん飲みましょう」

横浜の桜をこうして見るのは、これで何回目になるのだろう?
こののどかな景色を眺める度、初期横浜の平和だった時代を思い出す。
しかし競馬の結果を見ると、散々な結果に終わっていた。

メイダン七レースのドバイターフは、人気に応える形で7番アーモンドアイが堂々の一着。
二着に四番人気4番ヴィブロス、三着は海外馬の6番ロードグリッターズ。
四着に3番ディアドラだが、これは話にならないぐらいの差が出た状態での着順だった。
ドバイシーマクラシックのほうは、どうなった?

「……」
一着こそ海外馬の2番オールドペルシアンだが、二着に1番シュヴァルグラン、三着に7番スワーヴリチャードと日本馬が入り、一番人気の6番レイデオロは六着に沈む。
どうせなら全部日本の馬がコケていれば取れていたものを……。
日頃の忙しい日常を忘れ、のんびり酒を飲みながらセブンスターに火をつける。
いい感じで時間が経ち、大阪杯の結果を確認した。
俺は泣きそうになりながら、その場でフェイスブックへ投稿する。
一言いいですか?
自分が馬鹿だって分かっちゃいるけど、言わせて下さい
エポカドーロのバカヤロー!!!
1.2,4,5.6着で負けちゃったじゃんかよー!
このあときっとワイズの料理が癒してくれる。
予約時間まで桜を見ながら過ごす。
念願のフレンチワイズへ向かう。
久しぶりなのに温かく出迎えてくれる加藤シェフ夫妻。
いつ以来だ?
確か増川君代と来た以来になるんじゃないのか?
赤ワインで乾杯をして、ゆっくり堪能する。
隣りにいるのが十歳年上の高橋満治でなければ最高のシチュエーションだ。
別段彼が悪い訳ではない。
金払いもいい。
ただ無尽蔵に忙しなく飲み歩くから、一緒に行ってくれる人が少なのだろう。
一品目の皿が出てくる。

いつものオートブルから違いが分かる。
この場を借りてはっきり言わせてもらおう。
損得勘定抜きにしてね、こんな美味い料理出すのは俺が知ってる中で、後にも先にもここだけだ。
力説している間に二皿目が出てくる。

魚類を使ったカルパッチョ。
苦手だが、ここでは好き嫌いを言わず頑張って口の中へ放り込む。
三皿目は冷たいスープ。

一口飲んで広がるハーモニー。
以前川越のエトワールに岡部さんと行った時「久しぶりに小麦粉からちゃんと作った美味いスープを飲んだ」と言った言葉を思い出す。
四皿目、魚料理。

「加藤さん、このお魚って……」
「これはカンスズギのパートフィールです。山羊のチーズと香草が入っております」
競馬には負けた。
でもそんなものを吹き飛ばすぐらいの幸せ。
次の料理を待っている間、突然猛烈な睡魔が襲ってくる。
そういえば俺、全然寝ていなかった……。
変な夢を見た。
何故か俺はゲームセンターにいて、対戦格闘ゲーム『龍虎の拳2』をプレイしている。
使用しているキャラクターは何故かテムジン。
隣りには増川君代が笑顔で眺めていた。
「夏の悲劇ー! 夏の悲劇ー!」

ひたすら波動拳コマンドを入れながら技を何度も出し笑う俺。
これ、絶対に「蒙古竜巻撃」なんて言ってねえよ。
「これ、絶対に夏の悲劇ーって言ってるよね? あれ?」
隣りにいたはずの君代の姿が気付けばいない。
あれ、どこにいってしまったんだ?
肩を揺すられ目を開ける。
目の前はカウンター。
え、ここはどこ?
「お疲れのようでしたね」
加藤シェフが微笑みながらフライパンを動かす姿が見える。
そうだ、俺いつの間にか寝てしまっていたのか……。
五皿目のメインディッシュが置かれた。

「すみません…、実は三十五時間ぐらい起きっ放しだったので、いつの間にか寝てしまってました」
「いえいえ、お疲れのところをわざわざありがとうございます」
高橋満治の皿を見ると空になっていたので、シェフは俺が起きるまで料理を待ってくれていたのだろう。
このようなちょっとした気遣いさえ超一流。
最後のデザートチョコレートケーキが出てくる。

急いでデザートを食べると、寝てしまった非礼を詫び、美味しい料理を堪能させてもらったお礼を言って店を出た。
「岩上さん、次はちょっといい店があるんですよ」
また高橋満治のいつもの飲み歩き地獄が始まりそうなので、俺はこれからゆっくり宿を取って眠ると丁重に断り、野毛をあとにする。
横浜駅根岸道路沿いに歩きながら、どこで睡眠を取ろうか考えたが、途中にパチンコ屋のキコーナがあったので、トイレを借りに入った。
トイレだけ借りるのも悪いので、甘デジシンフォギアに座る。
すると最初の五百円でいきなり当たってしまう。

結局甘デジの台なのに一万発オーバーの四万三千五百円に。
何という幸運なのか。
ワイズで美味しいものを食べ、運気が備わったのだろう。
この感動をフェイスブックへ書き込んでいると、地元川越では選挙活動で先輩の中野英幸さんが駅前に立ちながら演説をしている投稿を見た。
英幸さんには世話になったからなあ。
俺は援護射撃で彼の応援投稿を書いてみた。
選挙近いっすよね
行ったことないって人
誰に投票していいか分からない人
政治家なんて誰かなったって一緒だよって人
俺は中野英幸さんを推薦します

政治がどうの以前に、まず人として好き
面倒見いいし、気遣いも素晴らしいし
川越を少しでも住みやすくしたい、居心地良くしたいとか思うなら、今回英幸さんに投票してみては?
昔から知ってるけど、政治家になっても何一つ変わっていない性格
こういう人に俺は政治家になってほしい
岩上整体の時もそうだし、県議に出馬する時も、わざわざ俺へ岩上家の長男としての筋を通してくれた。
恩義は充分感じている。
さて、パチンコも勝った事だし、軽く飲んでから寝るか。
俺は激安居酒屋『楽』へ寄ってから、近くのラブホテルを探しチェックインした。
風俗嬢でも呼ぼうか考えている内に、二度目の睡魔に襲われ携帯電話を持ったまま寝てしまう。
二千十九年四月一日、月曜日先負。
昼過ぎまでゆっくり眠り、起きてからジャグジー。
中々快適で幸せな横浜での休日。
しかし今日の夜からまた新宿歌舞伎町か……。
ホテルをチェックアウトすると、昨夜のワイズ帰りに寄ったキコーナの勝利の余韻を思い出す。
昨日ラッキーな勝ち方をしたからちょっとだけ寄ってみよう。
幸いな事に昨日と同じ台が空いていたので座り、早速パチンコを始めた。
九十九分の一の甘デジ設定なので、当たっても単発なら出玉は極僅か。
出て入っての繰り返しをしていたので、途中トイレへ向かう。
店内にあるテレビの画面では菅官房長官がパネルを持ち新しい元号は『令和』だと発表していた。
平成から令和?
昭和の和と被るのになあ……。
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