闇 385(ラッキーハウス買い出し編)
闇385(ラッキーハウス買い出し編)

2025/11/05 wed
前回の章
モニターを見ると、ヤクザ直営の二階にあったゲーム屋にも来ていた松島が映っている。
「赤崎さん、お客さん。ドア開けて下さい」
橋本がタバコを揉み消しながら口を開く。
うん、俺も客だと知っているが、あえて何も言わずに防火扉を開けた。
身長百五十センチ台スキンヘッドの松島が、俺に気付かず入店。
真正面にあるボードに貼ってあるカラーのマグネットを眺めながら、どの台へ座ろうか思案している。
相変わらずジャージ姿のまま。
それ以外の格好は昔から見た事がなかった。
「うーんと…、どうしようかなー……。七…、うーん……。十と十一も…、うーん……」
松島はマグネットがたくさんついている卓番号を口にする。

俺は小声で橋本に囁く。
「何で松島さん、十三卓から十七卓の二列側のボード見ないんですか?」
「左二列はラッキーフルのスーパーだからですよ」
「ん? 一卓と二卓だけフィーバーパックで、あとはラッキーフルじゃないんですか?」
「ラッキーフルなんですが、左二列の台はスーパーがつく叩き仕様になっているんですよ。まあその辺はおいおい説明していきますよ」
ラッキーフルに、ラッキーフルスーパー……。
スーパーというのは今まで聞いた事がなかった。
俺が一円レートの店ばかりだったせいもあるのだろう。
「そういえば赤崎さん、何で松島って分かるんですか?」
「あ、それはですね……」
「すみませーん。入れて下さい!」
十一卓に座り金をヒラヒラさせる松島。
俺は足早に近付こうとすると、橋本に制され彼が向かう。
「はい、十一卓さん新規一」
ゲーム屋のコールを耳にする自体本当に久しぶりだった。
ワールドワンが最後だろうか?
フィールドにしても、ヤクザの二階のゲーム屋にしても、誰一人コールなどしなかった。
店によって個々の仕方は違うにせよ、懐かしい気分になる。
「岩上さんはまだこの店のコールとか分からないから、今日は自分が動くから見て何となくでいいので流れを覚えて下さい」
「了解です」
「あ、十一卓のドリンク聞きに行ってもらっていいですか?」
「分かりました」
俺は足音を立てないように松島の席へ向かう。
「松島さん、ドリンクはどうします?」
「えーと…、冷茶」
「畏まりました、冷茶でよろしいですね?」
「はい、それで」
ゲームに夢中な彼は、まるで俺の存在に気付かないようだ。
キッチンに入り、冷蔵庫から二リットルの冷たいお茶を取り出すグラスへ注ぐ。
お茶を出して定位置まで戻る。
「先ほど話したラッキーフルのノーマルとスーパーを違いを簡単に説明しますね。赤崎さんはラッキーフル自体は分かりますか?」
「ええ、左上に表示されたラッキーナンバーの数字を込みで、スリーカードを揃えればラッキースリー。ラッキーナンバー二枚のフルハウスなら、ラッキーツー。三枚ならラッキーフルですよね」
自分の中の認識では一円レートの店ならダイナミック、赤ポーカーなどの叩き台がメイン。
今いるラッキーハウスのような十円なら、フィーバーパックやラッキーフルのような役を揃える台がメインなような気がする。
「あ、基本的な事は知っているんですね。まあスーパーのほうが打つ客が座ったら、違いを説明していきますよ」
「分かりました」
結局松島はいいところなしで五万入り、席を立つ。
目の前の俺が視界に入っていないのか素通りして入口へ向かう松島。
ドアを開ける時に「お久しぶりです、松島さん」と声を掛けてみた。
一瞬動きが止まり、驚いたようにこちらを向く。
「ん? あれ? 岩上さん? 何で岩上さんがここに? あの二階の店は? 今やってないですよね?」
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