憧れが確信に変わった、休憩時間の告白
高校の「総合的な探究の時間」等において、市内の企業などを訪問し、社会人から仕事への情熱や職業観などを聴く「いわき発見ゼミ」は、高校生が自らの進路を考えながら、地域企業等への理解を深める機会を提供するプログラムです。
このプログラムは、いわきの未来を担う若者が、地域の多様な職業や人々と出会い、「未来の自分」を具体的にイメージするための発見の場です。
いわきアカデミアがプログラムを実施する中で、「いわき発見ゼミを実施してよかった」と感じる瞬間があります。
今回ご紹介するのは、いわき湯本高校の公務員コースが「いわき市消防本部 常磐消防署」を訪問した際に起きた、わずか数分間の、しかし忘れられない出来事です。
消防車や救急車が並ぶガレージ。
小学校の社会科見学で訪れた生徒もいましたが、同じ場所でも高校生の視点で見えるものは違ってきます。

当日は、日頃見ることのできない設備や訓練の様子を特別に見学させていただきました。
訓練を指揮する隊員たちの引き締まった表情、素早い動作、そして何よりもチームが一丸となってはしごを支え、のぼっていく姿に圧倒されます。

特に、隊の中にいる一人の女性消防士の姿は、生徒たちの注目を一身に集めました。
男性隊員と全く同じ装備、同じスピードで訓練を行う姿に驚きを隠せませんでした。
いわき市消防本部には、令和7年4月1日現在、女性職員が13名在籍しています。
彼女たちは、火災予防、警防(消火活動)、救急、指令業務など、市民の安全を守る様々な重要業務を担当しています。
体力の面で男性と同じ訓練をこなす厳しさがある一方で、女性ならではのきめ細やかな視点や、住民対応のなかで、特に女性や子どもへの対応では、その役割が重要性を増しています。消防の仕事は、力仕事だけではなく、市民の心に寄り添うコミュニケーション能力や、冷静な判断が求められる高度な専門職なのです。
設備や訓練の見学が終わり、会議室に移動して休憩時間が訪れました。
喉を潤したり、友達と雑談したりする生徒たちの中で、二人の女子生徒が先ほど訓練で鮮やかな動きを見せてくれた女性消防士のもとへ向かいました。
「あの…私、消防士になりたいんです」
その一言は私たちの胸に深く響きました。それは、知識や情報を得るためではない、自分自身の未来に向けた「宣誓」のようでした。
この瞬間こそ、私たちが「いわき発見ゼミ」を実施してよかったと感じた瞬間です。
突然の告白に、対応してくれた警防第一係の相原奈渚さんは驚きつつも、「そうなんだ!どうぞ遠慮なく。」と優しい笑顔で高校生たちを受け入れてくれました。

そこから始まったのは、わずか数分間ではありましたが、女子生徒二人の人生にとって貴重な財産となるQ&Aセッション。生徒から飛び出す質問は、とても具体的でした。
「試験のために、今からできることはありますか?」
「体力的につらいことはありますか?工夫していることは?」
相原さんは一つ一つの質問に真摯に応え、力強いアドバイスを送りました。
「大切なのは、日々の積み重ねとあきらめない強い気持ち。そして、人を助けたいという気持ちが力になる。女性ならではの視点も、現場で活かされている。」
相原さんの「女性が消防の現場で活躍できる」というアドバイスを聞いた生徒たちの顔は笑顔でした。
「ありがとうございました!頑張ります!」
その声は、「憧れ」や「不安」が混ざったものとは違い、目標に向かって進む「確信」に満ちていました。
いわきアカデミアが、「いわき発見ゼミ」を通して高校生たちに提供したいのは、まさにこの瞬間です。
インターネットで情報を得ることは簡単ですが、「なりたい姿」を体現しているプロフェッショナルと対面し、その熱意と厳しさを肌で感じ、直接言葉を交わす経験は、何物にも代えがたい財産となります。
あの日の休憩時間、消防署の片隅で交わされた数分間の対話は、二人の女子生徒の心の中で夢が現実に近づいた時間でした。
彼女たちが将来、いわき市消防本部で13名の先輩たちに加わり、市民の安全のために活躍する日が来ることを心から楽しみにしています。
