高校生・大学生向け【いわきその先図鑑】電力でいわきの暮らしを支え、技術者としてキャリアを積む(常磐共同火力株式会社)
常磐共同火力株式会社
青天目 悠太さん
古くから石炭の産地として日本の近代化を支えてきたいわき。
その歴史を背景に誕生した「常磐共同火力株式会社 勿来発電所」は、70年以上にわたり、地域の電力供給を支え続けてきました。
今回お話を伺ったのは、この発電所でエネルギーの安定供給と環境保全の最前線に立つ青天目悠太さん。
いわき市で生まれ育ち、県外での大学生活を、そして東日本大震災を経て「地元のために」と戻ってきた青天目さんの歩みから、私たちが未来を切り拓くためのヒントを探ります。
震災が教えてくれた「地元への貢献」という原点
青天目さんは高校卒業後、再生可能エネルギーへの興味から県外の大学の工学部へと進学しました。
研究に没頭する日々の中、卒業を目前にして発生したのが東日本大震災でした。
「故郷のために自分ができることは何か」
その問いは、青天目さんの心に深く刻まれました。
大学院でも再生可能エネルギーの高効率化の研究を続け、就職活動の際、「地元に貢献したい」との思いから常磐共同火力株式会社への入社を決め、いわきへUターンしました。
青天目さんが同社を選んだ理由は、環境に配慮した取り組みや発電方法が利用されていること。
石炭に木質バイオマスや下水汚泥燃料を混ぜて燃やす「混焼」など、環境に配慮した発電に挑む姿勢に、自身の研究してきた価値観が強く響き合ったからでした。
「なぜ」を5回繰り返す 効率と環境を両立させる技術者の眼
勿来発電所では、主に海外から輸入した石炭を用いた火力発電が行われています。
現在の青天目さんの仕事は、発電所の「燃料を無駄なく電気に変える『熱効率の管理』」です。
具体的には、石炭の投入量に対する発電量を調べ、極端に燃費が落ちていないか、運転状態に異常がないかを確認しています。
また、会社全体のエネルギー消費を統括する「エネルギー管理者」の役割も担い、会社全体のエネルギー(石炭、重油、電気など)使用量や二酸化炭素の排出量を取りまとめ、国に報告する役割を担っています。さらに、「公害防止管理者」として、環境に関する法律の遵守にも努めています。
さらに、青天目さんは、こうした技術的な業務に加え、日々の業務の効率化を図る「カイゼン活動」を進めています。
これは、業務の流れを徹底的に可視化し、不要な作業や価値を生まない作業を少なくすることを目的としています。
実際の活動では、現在の業務の流れを模造紙に書き出して関係者全員で共有し、「これは何のためにやっているのか」「これはいらないのではないか」などと気づきを出し合います。
ポイントは「なぜ」を問うこと。
青天目さんは「なぜなぜ分析と言われているのですが、『なぜ』を5回程度繰り返し問い、根本となる原因やその解決策を考えていきます」と話します。

福島復興のシンボル、世界最新鋭の「IGCC」プロジェクトへ
入社3年目を過ぎた頃、世界最新鋭の技術を持つ発電所を建設する「福島復興電源プロジェクト」に関わるという貴重な経験を積みました。
青天目さんはプロジェクト先に出向し、勿来IGCC発電所の建設、試運転、そして営業運転開始までの全てのプロセスに、約5年9ヶ月にわたり携わりました。
「発電所の建設は、既存の拠点で設備をより効率的なものへと作り替えるケースがほとんどです。しかし今回は、津波の被害にあった更地に、一から発電所を立ち上げる『新規地点』のプロジェクト。その建設プロセスすべてに携われたことは、非常に貴重な経験でした」と青天目さんは振り返ります。
火力発電は、主要な電気の供給源としての役割を持っていますが、近年は火力発電所の役割も変わりつつあると青天目さんは感じています。
地球温暖化対策として、再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいますが、太陽光発電や風力発電は天候によって出力が変動してしまいます。
そこで火力発電には天候に左右される再生可能エネルギーの変動を補い、地域全体の電気の安定を守る「調整役」としての役割が求められていると言います。
そのため青天目さんたちのグループでは、電力の需要や再エネの変動に応じて、発電設備の出力を調整する発電計画も作成しています。

35の資格が物語る、いわきでの「攻め」のライフスタイル
青天目さんが語るいわきで働く魅力。
その一つが、ワークライフバランスの実現です。
社宅から発電所まで歩いて行ける距離にもあり、通勤時間はとても短く、「自分の時間と家族の時間の両方を大切にできている」と言います。
そして、自分の時間を使い、力を入れたのが資格の取得。
青天目さんは入社以来、毎年欠かさず資格に挑戦し、13年間で取得した資格はなんと35個。
この記事で紹介した「エネルギー管理者」の資格に加え、地域の環境保全に不可欠な「公害防止管理者」においても、大気や水質、騒音・振動など全ての区分を網羅。さらに、高度な専門知識が要求される難関資格の「特級ボイラー技士」も取得するなど、技術者としての高みを目指すための研鑽を重ねています。
会社では資格取得にかかる費用の補助や資格取得時のお祝い金という制度もあり、そういった会社のサポートにも助けられています。
また、同じくいわき出身の奥様と二人の娘さんとの時間も、青天目さんにとっての活力の源です。
「近くに住む両親に子育てを助けてもらえるのは、地元ならではの特権です。精神的なゆとりがあるからこそ、仕事にも全力で向き合える」
自分の原点である場所で働く魅力を青天目さんは笑顔で語ります。
「故郷で働きながら、仕事で自分のやりたいことを通して地域に貢献できること。そして仕事から帰って、子どもの笑顔が見られること。これってすごく幸せなことだなと思います」

青天目さんの人生が示すように、大学で学んだ専門知識と、仕事を通じて積み上げた無数の資格、そして故郷への思いがつながり、自分だけの「武器」になる日が必ず来ます。
そのためには、変化する社会の中で「なぜ」と問い続け、自分という可能性を信じて学びの歩みを止めないこと。
青天目さんは今日も、故郷いわきで地域の暮らしを照らし、未来のエネルギーを支えるための挑戦を続けています。
皆さんも、この「いわきその先図鑑」をヒントに、自分だけの「その先」を探してみませんか。
