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【開催レポート】探究カフェ スピンオフ編~高校時代の”いわき発見”は、今の私につながっていますか?~

いわきアカデミアは設立10年を迎え、これまでの9年間で6,509名の高校生が事業に参加しました。そして今、その参加者の中から、Uターンやいわきでの就職を選んだ社会人が生まれ始めています。

高校時代にいわき発見ゼミに参加した彼らの生の声には、きっと今の高校生へのヒントが詰まっている―
そんな思いから、今回は、Uターンした社会人をゲストに迎え、11月24日(月・振替休日)に、いわき駅前のGuesthouse&Lounge FAROにて「探究カフェ スピンオフ編」を開催しました。
高校時代の経験が現在のキャリアや生き方にどのようにつながっているのか、そして、いわきにUターンした理由を詳しくお届けします。

●いわき発見ゼミとは
学校の「総合的な探究の時間」等において、市内の企業などを訪問し、社会人から仕事への情熱や職業観などを聴き、自らの進路を考えながら、地域企業等への理解を深めるきっかけを作るプログラムです。

●探究カフェとは
普段は別々の高校に通う高校生が集い、社会人ゲストとの対話を通して、仲間を見つけ、自分の探究活動をブラッシュアップしたり、いわきでの具体的なアクションにつなげていくきっかけを作るプログラムです。
いわきアカデミアの「大学生地域実践ゼミ」に参加した学生たちが探究カフェの進行をサポートします。


ゲストたちの決断 私が見つけた「居場所」

熱量ある大人と出会ったいわきの安心感 
小山 泰生さん(いわき市交流推進課)

小山さんが見学したのは、「アルパイン株式会社(現在のアルプスアルパイン株式会社)」と「東洋システム株式会社」です。
いわき発見ゼミで見学した企業の業務内容は忘れても、熱意ある大人がいる安心感は覚えている」と言います。
その熱量をもって仕事をする大人がいるという「安心感」こそが、いわきに帰ってきた理由の一つでした。また、いわき発見ゼミは「居場所の選択肢につながる」とその価値を語ります。

野球の強い大学に行きたいと東京の大学に進学した小山さんですが、東京での生活は、「時間の流れの速さ、忙しさ」が合わず、疲れると感じました。
小山さんが大事にしたのは「騒がしくないことの大事さ」。そして、「何もしなくていい時間がいわきにはある」という心のゆとりでした。
小山さんは、心の平穏が得られるいわきを選び、故郷へとUターンしました。

住む場所を軸にしたライフシフト 
長沼 陽也さん(いわき市産業ひとづくり課)

長沼さんは、今回のゲストを依頼されるまで、当時見学した企業を覚えていなかったと正直に話されました。
しかし、見学先で収穫した綿花で作った人形が自宅にあることを思い出し、記憶が蘇ったといいます。

長沼さんが見学したのは「NPO法人ザ・ピープル」と「公益財団法人ふくしま海洋科学館」です。
いずれも営利を第一としない団体を見学し、「社会貢献」という働き方があると学んだのです。

就職を考える際、長沼さんは仕事内容よりも「どこに住むのか」を優先しました。
大学時代、福島市の厳しい気候を経験し、「いわきに住みたい気持ちが強くなった」と言います。
そして、「一つの土地に根を下ろし、家庭を持ちたい」という人生設計と、転勤がない市役所の仕事が結びつきました。

いわきは、長沼さんにとって刺激は少ないけれど不便もしない「ほどよい田舎具合」で、心から安らぐ場所だといいます。いわきに戻って3年、「いわきを選んで良かった」とその選択への確信を語っています。

自分の目で見た体験の価値 
木村 佑さん(いわき市住宅営繕課)

木村さんが見学したのは、「小名浜製錬株式会社」と「日本化成株式会社」。
特に小名浜製錬で金属の熱加工の現場を見たことが印象に残っており、「テレビや資料集ではなく、実際に自分の目で見たという経験がいわき発見ゼミでの一番の財産だ」と話されました。

「進路選択時に何を学びたいか決まっていなかった」という木村さんは、進学後も学びの自由度が高い学部を選択。大学では趣味である「釣り」と関連した「魚食文化」に焦点を当て、「魚食文化の再興」をテーマに卒論に取り組みました。

キャリア選択では、家庭を持った際に転勤がネックになる国や県の職員ではなく、地元密着の市役所職員としての道を決断しました。いわき発見ゼミでの経験が「せっかく働くならば地元に貢献したい」と思うきかっけになったといいます。
卒論での取り組みを活かし、今後は水産振興に携わる業務にも取り組んでみたいとお話しいただきました。

外に出て始めて知った「いわき」という居場所 
村山 あずなさん(いわき市保健福祉課)

村山さんが見学したのは、「常磐興産株式会社」と「NPO法人常磐炭田史研究会(歴史遺産探訪)」。いわき市の企業・団体を知ることができた貴重な経験だったと話します。

高校時代、「地元を出たい」という気持ちで東京の看護学校に進学した村山さんでしたが、その後の進路を考えたとき、初めて「いわきのほうが自分には合っている」と気づき、いわきに帰ってきました。「いわきを出ないとわからないありがたみを実感しました」と話します。

安定した仕事に就きたいという思いから公務員を選択。現在は、保健福祉課で施設利用者が適正なサービスを受けられるかを確認する業務を担っています。看護学校での学びを活かしつつ、自分の知らなかった仕事に携わり、新しい知識を身につけることに「意外な楽しさ」と自己成長の喜びを感じています。

人とのつながりが引き寄せるUターン 
吉田 栞さん(いわき商工会議所)

「まさか、自分がいわきアカデミア事業に携わると思っていませんでした」と語る吉田さん。令和6年度に事務局としていわきアカデミアを担当しました。

吉田さんが見学した企業は、「株式会社ネクスト情報はましん」と「株式会社ワンダーファーム」。
いわき発見ゼミで関わった友達と今も仲が良いといい、高校時代のつながりを今も大切にしています。

大学で地域活性化を学び、「いわきに少しでも貢献できたら」という思いでUターンを決意。その決め手となったのは、「一度外に出たからこそ気づく、いわきの安心感」でした。
いわきでの思い出や愛着、住みやすさ、そして相談しやすい人がいるという「人との繋がり」が吉田さんをいわきに引き寄せたのです。

吉田さんは、今年度採用試験に携わり、「学歴が全てではない。何を経験して何を学んできたのかが大事」だと実感したうえで、高校生に「感性を大事に、いろいろなことに触れて、自分は何が好きかを見つけてほしい」とエールを送りました。

未来を切り拓く探究と経験の力 
岩間 涼星さん(磐城高等学校 教員)

教員として母校で指導する岩間さんも、「いわき発見ゼミ」の参加者です。
岩間さんが見学したのは、「株式会社タンガロイ」と「会川鉄工株式会社」。

岩間さんは当時の自分を振り返り、「探究にもっと真剣に取り組んでおけばよかった」と話します。
大学時代のインターンシップなどの経験を経て、自分のやりたいことに気づき、教員になることを選びますが、同級生の就職活動の話を聞くなかで、「就職活動では面接が重要視されており、学歴よりもその本人を見ている」という現実があると言います。
社会が本当に求めているのは、「身近な問題に目を向けて、自分なりの意見を持っているか」という力であり、これを養うことができるのは「総合的な探究の時間」しかないと高校生にアドバイスを送りました。

また、自分の将来が明確でないときは、「とりあえず興味があることはやってみること」。そして、「たとえ、やりたいものと別ルートになったとしても全部無駄にはならない」と高校生たちに力強いエールを送りました。

経験の質が、生き方を左右する

ゲスト全員のストーリーが示すのは、高校時代の「いわき発見ゼミ」の体験は単なる見学に留まらず、「熱意ある大人との出会い」そのものが、いわきへの「心理的な安心感」やUターン・就職の動機につながるということです。

彼らの決断の裏には、仕事の内容以上に大切にしたい「心の平穏」や「地元貢献」、「人との繋がり」といった、いわきで育ったからこそ見つけられる価値観がありました。

高校時代の探究活動を通じていわきの大人と出会うことは、その後の生き方・キャリアを左右する経験になっていくことを物語っています。

ゲストたちが送ったエールを胸に、今の高校生にも、自分だけの「いわき発見」と「心の拠り所」を見つけてほしいと願っています。