種類の多さ日本一!?琵琶湖・淀川のドジョウたちー大阪市立自然史博物館テーマ展示
1.はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。7月の3連休から大坂市立自然史博物館にて期間限定の展示が行われました。それは、琵琶湖・淀川水系のドジョウの展示です。ここでどのような展示が行われていたのか、その詳細を紹介していきます。
*こちらの展示、2025/8/31までの開催です。もし、ヨドコガタスジシマドジョウを代表にこの機会を逃したら、次はいつ見れるのか分からないものばかりです。是非、実際の展示の方にも足を運んでみてはいかがでしょうか。
2.構成
パネルと実際に採取された標本で展示が構成されていました。当然、その主役は、琵琶湖・淀川水系に生息するドジョウです。各ドジョウがどういう所に生息しているのか、どこ獲れたのか、今どのような状況に置かれているのか、その解説が行われていました。

3.ドジョウとは何者か?ー琵琶湖・淀川水系のドジョウとは?
皆さん、ドジョウというとどのようなイメージがありますか。ヒゲがあって細長くてヌメヌメした魚だと思います。実際、ドジョウは、分類学的ではコイ目ドジョウ上科に属する生物とな、世界で1000種、日本国内だと34種生息していることが確認されています。パネルでは、地方ごとでドジョウの種数を分けており、西日本全体で22種類、その中で琵琶湖・淀川水系で13種が生息しています。この13種は、日本の中で最大の種数です。つまり、琵琶湖・淀川水系は日本で最もドジョウが豊かな地域であるということでもあります。種数の多さが、自然の豊かさそのもを示すわけではないですが、一つの指標になるということです。
では、琵琶湖・淀川水系では、何故、ドジョウが多くいるのでしょうか?ここでは、3つの理由を紹介しています。

①では、日本の自然のあり方が大きく関わっています。日本の自然環境、特に、水系だけで見た場合でも、河川の源流から上・中・下流、湿地帯、水田、ため池、湖…などとそのあり方が多様であるため、それぞれの生息環境にドジョウが生息しています。ナガレホトケドジョウは川の源流、アジメドジョウは上流の砂礫底、ドジョウは水田や溜池のような湿地帯やそれを繋ぐ用水路…などとドジョウによって、生息する場所に違いがあります。

展示標本

展示標本

実際に採取した個体
これは、私自身の経験ですが、同じ川でも場所が違えば、生息するドジョウがかなり変わるということを感じました。過去にけんやさんとガサガサに何度か同行させてもらったことがあり、アジメドジョウを目的に行ったものの複数種のドジョウが見られつつも基質が違うと見れるドジョウにも違いが見られると感じました。とある場所では、アジメドジョウは、コケなどを食べる関係から、砂礫で石が積み上がっているような場所に多くいる傾向にある一方、ドジョウ(*在来系統)は、泥と砂が混ざりつつある基質で草むらや落ち葉などが積み重なっている所に隠れていることが多かったですまた、ニシシマドジョウは、ドジョウと生息する場所が重なりつつも砂よりの場所にいる傾向がありました。アジメドジョウとオオシマドジョウが生息する川でもオオシマドジョウの方が、流れが穏やかな所で、主に川の隅の水の溜まり場や入江で基質が砂より所に多い傾向にありました。



展示標本

採取個体

展示標本

我が家の飼育個体、全ドジョウの中で1番お気に入りのドジョウ
②の歴史の古さは、琵琶湖の存在が大きいです。そもそも琵琶湖は、400万年に誕生したもののその400万年の間でその形は大きく変わり続け、40万年前に今の形になりました。水系の成り立つの歴史が古いということは、その水系に固有の特徴が作られ、それが、生物に対しても特有の形質・生態を作り出し、結果的にそれがその地域固有の種・亜種へ分岐することに繋がります。その象徴存在が、「ビワコガタスジシマドジョウ」と「オオガタスジシマドジョウ」となり、両者は、琵琶湖に生息しています。
ビワコガタスジシマドジョウは、主に北湖を中心に琵琶湖沿岸及び流入河川に生息しており、産卵期には、流入河川から用水路や水田へ遡上します。一方、オオガタスジシマドジョウは、日本に生息するスジシマドジョウの中でも最大級のドジョウになります。こちらのドジョウの面白い点は、「生活史」に違いがあることです。琵琶湖沿岸に生息し繁殖期に流入河川や水路に遡上する「遡河回遊型」と、流入河川に周年にわたって生息する「河川型」の2パターンが存在します。何故、そのような違いがうまれたのか、その両者を比較した時に遺伝的、形態的にどこまでの違いがあるのか、私は知りません。ただ、同じ種なのに、生活のパターンの違いが生まれたことに琵琶湖の歴史が関わったのではないかと考えています。

展示標本

生体
琵琶湖にスジシマドジョウがいるのにも関わらず、ビワコガタとオオガタスジシマでは、形態に加え、生態にも大きな違いがあることがわかります。何故、両者でここまで違うのか、私は分かりません。ただ、琵琶湖に生息する固有種の魚の進化は、世界の他の古代湖とかなり特異です。とある1種が琵琶湖へ新種して適応放散したわけではなく、各固有種が琵琶湖で分岐した年代もバラバラ、琵琶湖から分岐したもの、琵琶湖に取り残されたもの…などとどう固有種が生まれたのか、その経緯も非常に複雑です。今、分かっていることはここまでですが、ここから、固有のドジョウがどう誕生したのか、そのヒントがあるかもしれません。
*琵琶湖の有機的な繋がりとは何か、琵琶湖に生息する固有のスジシマドジョウの存在と共通する存在がいます。それは、ホンモロコです。回遊、琵琶湖の生態系のでの役割でかなり共通点があると思うので、是非、ご覧ください。
③の地理的な位置では、そもそも淡水魚の多くが、回遊などを別に水系から水系を超えて移動する能力は、あまり高くないです。ただし、地殻変動や何らかの環境の変化が起こることで、生物の移動は発生します。琵琶湖・淀川は、複数のドジョウの分布の境目付近に位置していることもあり、他の水系のドジョウ類の分布が広がりました。
4.ドジョウたちの危機
琵琶湖・淀川水系のドジョウの種類の多さとそれを支える背景の素晴らしさを紹介させてもらいました。しかし、残念なことに、琵琶湖・淀川水系のドジョウは、その全てが、環境省・都道府県のどちらか、またはその両者で絶滅リスクがあることを指摘されています。圃場整備、宅地開発、ダム建設、水位調整…などが主な原因として挙げられています。つまり、開発による生息地の破壊が大きな原因として紹介されていました。(*外来種による影響も無視できません。)その中で注目すべきドジョウは、「アユモドキ」と「ヨドコガタスジシマドジョウ」の2種類です。
アユモドキは、ドジョウの仲間ですが、見た目がアユのような見た目になることから、その名前が付きました。琵琶湖・淀川水系では、滋賀・京都・大阪で生息していましたが、滋賀と大阪では絶滅し、現在は、京都の桂川水系のみで何とか生き残れている状況で、非常に危機的な状況です。アユモドキは、「Parabotia属」に属していますが、これは、日本ではこのアユモドキのみが属しています。アユモドキの仲間は、東南アジアに生息が多く、本種は、その原始的な種とされています。つまり、日本の自然の中で、そして、世界的にも彼らの仲間の進化の歴史を辿るためにも非常に貴重な存在であるということです。アユモドキは、是非とも復活してほしい生物になります。


ヨドコガタスジシマドジョウは、淀川水系の中・下流の砂泥底及び、河川の湿地帯、所謂、ワンドや溜まりと言われる場所に生息する日本、そして、淀川での固有亜種です。しかし、ヨドコガタスジシマドジョウは、1996年に採取されたものを最後に現在までの30年間、発見されていません。京都のレッドリストでは絶滅、大阪では絶滅危惧1類となってはいるものの「絶滅した」と考えるのが妥当な生き物でもあります。

瀬能宏氏による論文では、淀川水系である宇治川でヨドコガタスジシマドジョウとアユモドキを採取したとの記述していますが、今現在では両者を見ることはできないのではないかと記述しています。彼らの繁殖に必要である氾濫原が必要であるのですが、埋め立てや河床低下による河川敷の陸地化・樹林化によって彼らは姿を消した原因と説明しています。開発という直接の破壊に加え、遷移の進行による陸地化とダム建設による土砂の流出の減少と河川の流路の固定化という間接的な影響が重なったと見えます。私たちの生活のために行われた開発になりますが、すぐそばに生き物も住んでいることは、忘れてはいけないと思います。この事例から、絶滅する生き物というのは、奥深く生きているものばかりではなく、私たちの生活圏のすぐ近くにいて、その影響を強く受ける生き物も多いということです。そして、ドジョウの多くは、人が立ち入れない山奥よりも湿地帯などの私たちの生活圏の近くにいるものが、多いです。
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1709864983667/simple/tobira114_2senou.pdf
*淀川では、ツチフキが再発見されるという事例がありました。それにより、ヨドコガタが実はひっそりと生きている可能性もゼロではないです。何故、彼らが復活できたのか、その詳細をご覧ください。共通点はあると思います。
*外来種の脅威は、こちらのブログをご覧ください。ホンモロコの内容ですが、ブラックバスは、ドジョウも共通し、在来の生物に対して非常に大きな脅威となっています。ブラックバスは、ドジョウに対しても大きな脅威です。
5.外来ドジョウの侵略と侵食
ここまでの説明で、ドジョウの多くが、絶滅の危機にあることを説明しましたが、ドジョウ、つまり、私たちが一般的に思い浮かべる田んぼにいるあのドジョウも絶滅の危機にあり、その脅威の一つに「外来種」の存在があります。ドジョウは、川や池、そして、水田などで捕まえることができますが、同時に今でもペットとしても食料品としても売られてもいます。市場で出回っているドジョウの多くは、その地域のものではない場合だとまず思っていいですし、さらにそのほとんどが、日本のものではなく、中国などの外来のものとなります。ここで取り上げられた外来種のドジョウは、「外来系統」のドジョウと「カラドジョウ」の2種類です。(*国内のドジョウでも地域単位で見た場合、違いがあります。)カラドジョウは、一般的なドジョウとは全くの別物です。ドジョウと比べたとき、全体的にずんぐりとしており、体の高さが高く、系統的にもドジョウとは、かなり離れています。また、カラドジョウに侵入されると、ドジョウが駆逐されると言われています。

一方の大陸系統のドジョウは、在来のドジョウと区別するのは、非常に難しいですが、区別するポイントはあります。最大のポイントは、背鰭の条数です。在来系統では6本になるのに対し、外来系統は7本になる傾向が強いです。次に注目すべきポイントは、腹鰭基部〜臀鰭基部の長さ(*計測箇所という写真の赤い矢印)と臀鰭基底部〜尾鰭基底部の長さ(*計測箇所という写真の青い矢印)の比較です。在来系統では赤い矢印が短く青い矢印が長くなるのに対し、外来系統では赤い矢印が長く青い矢印が短くなる傾向にあります。他にも大陸系統の方が、金属光沢が出やすい、口髭が長くなりやすいなど特徴があります。





*モデルのドジョウは、我が家で飼育中の在来系統のドジョウ
外来種のドジョウの存在で問題となるのは、「交雑」と「競合」になり、ここで紹介されていた内容は、「交雑」とそれに伴う「遺伝子撹乱」が中心です。日本でも世界でも同じ名前、似たような姿形を持つ生き物がいますが、どこのものでも同じ生き物とは限りません。つまり、同じ生き物でも国や地域ごとで違いがあるということです。その違いというのは、「形質」や「行動」という見える形で現れることもありますが、大きな違いは、形質や行動の基礎となりうる「遺伝子」で、その地域で生きてくために進化し、適応し、獲得した固有の形質や行動が、遺伝子に刻まれます。しかし、「交雑」と「遺伝子撹乱」は、進化の過程で得られた固有の遺伝子を薄め、消すことにつながります。その結果、その地域で生きていくために必要な遺伝子が薄められ、最悪、子孫を残すことができなくなり、絶滅するということにあります。ドジョウもその危機にあるということです。
*交雑、遺伝子撹乱の詳細は、下記のブログでかなり書いています。是非、こちらをご覧ください。1番詳しく書いているのは、クワガタです。
大阪府では、過去に採取された標本と近年採取された個体で、遺伝子・形態から大阪府には、どれだけ在来のドジョウが残っているのか、外来ドジョウが進出していた場合、どれだけ定着しているのかが調査されました。1959〜1999年では、大阪府全般に分布していたドジョウは、全てが「在来系統」のものでした。しかし、2001年〜2013年の標本からは、淀川水系・大和川水系に中国に由来する「外来系統」が分布し始め、2018〜2019年では、北部を除く広範で「外来系統」のドジョウが分布するという状況へと変化し、今現在、在来系統のドジョウが確実に生息していると思われるのは、大阪府北部のため池や水路の極一部の地域のみとされています。つまり、辛うじて大阪の在来のドジョウは生き残れているということです。また、生き残っている在来系統のドジョウのハプロタイプには、初めて確認されたものがあり、その地域独自の個体群ではないかと思われるものがいます。
*調査の詳細は、下記の論文から読むことができます。
ドジョウは、現在、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されるほどの絶滅のリスクがあります。しかし、その状況は都道府県などの地域単位で見た場合、さらに酷い状況になっているのも事実です。神奈川県では、野外で見れるドジョウのほぼ全てが外来のものであること、東京では、在来系統のドジョウは絶滅したのではないかと指摘されているほどです。
大阪で外来系統のドジョウが定着・拡散した経緯は不明です。調査した論文の中では、タチウオ釣りの生きエサとして売られていたものが遺棄され、拡散されたのではないかと記述していました。私個人の見解では、「ペット目的で売られた個体の遺棄」や何らかの目的で「放流された」ものも含むと考えています。今、ドジョウを飼いたいと思ったら、購入することができますが、私が見てきたもののそのほとんどが、外来系統の特徴があてはまるものばかりでした。また、ドジョウとして売られているものが、日本のものではないことを理解して考えた上で購入・飼育している人は、あまり多くないことも想像に難くないです。つまり、どこのドジョウも同じものであるとしか認識していないということです。それ故、飼えなくなってしまったために放してしまったまたは、「ドジョウが持つ地域性というものを理解せず」に放流されたものも多いのではないかと考えています。

知り合いのペットで、購入個体
ドジョウの外来種問題で1番理解してほしいのは、どうやって在来か外来かを「区別するのか」ではなく、「地域ごとに違いがあることを理解する」ことです。まして、地域で同じ生物でも違いがあるのは、ドジョウだけ特別な特徴(*メダカ、カワニナ、ホタルでは顕著にこれが現れます。)ではないです。外来系統のドジョウが拡散・定着した原因は、遺伝子撹乱による問題と生き物が地域性を持つ地域性を理解してないからこそ、管理が不十分になって逸失したり、放流を安易に行なってしまうのではないかと推測しています。だからこそ、日本という国の中でも、まして、同じ名前の生き物でも違いがあることだけでも、まずは、知ることが大切だと思います。
外来種というと、ブラックバスが在来の魚たちを食い尽くすような目に見えやすい被害が生じます。しかし、似たもの同士による外来種だと被害が見えづらく内側から侵食され、気づいていたら汚染され尽くしていたということを教えてくれるのが、ドジョウの外来種問題ではないかと思います。
*大阪市自然史博物館では、外来系統のドジョウと在来系統のドジョウ、どちらも「生体」が展示されています。テーマ展示の標本をみるついでに実際に生きている姿を見てほしいです。こちらは、「常設」の展示です。

6.まとめ
以上が、大阪市立自然史博物館のドジョウについてのテーマ展示についてでした。関西という土地は、日本の淡水魚の中でも種数が非常に多い地域と言われており、ドジョウで見たとき、その典型例になったと思います。では、何故、ドジョウは多様なのでしょうか?それに大きく琵琶湖が関わっており、琵琶湖という深く長い時間が関わる存在だけでなく、大きな河川である淀川水系で多様な環境が創出されたなどと要素が複合的に重なった結果、ドジョウが多様に生まれたのではないかと思います。それ故、ドジョウの多くが絶滅の危機にあるということは、重く受け止めなければならないことだ思います。その原因は、私たちに原因があります。私たちの生活のあり方、生き方を見直すべき点が多くあるのではないかと思います。
ドジョウには、「外来種」としての問題も外せなく「交雑」がテーマとなります。「外来種」というと在来種を食い尽くして打ち負かす力のある強者のイメージが強いかもしれませんが、決してそればかりではないことがドジョウの交雑問題でわかります。また、日本国内のドジョウでも違いがあることがわかりますが、これは、決してドジョウだけではないです。何故、大阪を含めた国内で在来のドジョウがいなくなり、外来のものに汚染されてしまったのか、その根本的な原因は、「同じ生き物でも違いがある」ということを理解していないからだと思います。まして、大陸と国内では、その違いというものが大きなものであること、日本国内でもそれは同じだと多くの人が知らなければならないと思いますし、そのような教育が必要になっていると思います。生き物の違いを理解するようになれば、どこのものか分からない生き物を放さない、本来の生息地にいない生き物を持っている時は、厳格な管理が必要になると思い、生き物に対する行動が変わることになるのではと期待します。ドジョウの地域で違いがあるというのは、何故うまれたのか?それは、ここまでで書いてきた歴史的な背景、多様な環境の創出と存在が土台あります。それ故、多くの種が生まれ、結果的に違いが生まれたのではないかと思います。ドジョウというのは、多様な生き物がいることや違いがある。だからこそ、その地域での違いを理解し、それを大切にしなければならないということを教えてくれる生き物だと思います。
以上になります。ここまで読んでくださりありがとうございます。また、次回もお楽しみに。

