【ショートショート】YOU ARE THE CHAMPION
挑戦者がリングインした。ボクシング世界バンタム級タイトルマッチ、彼らにとって三度目の挑戦だ。
「タツヤ、硬くなるなよ。ボディを狙え」
セコンドが言った。
「おうよ、おっちゃん」
タツヤが答えた直後、ゴングが鳴った。タツヤはセコンドの指示通り、次々とボディブロー炸裂させる。苦悶の表情を浮かべるチャンピオン。試合はタツヤ優勢で四ラウンドまで進んだ。
「いいぞ、タツヤ。ボディだ、ボディを狙え」
セコンドから指示が飛ぶ。五ラウンド目もタツヤはボディを狙った。しかし、相手はチャンピオン。一筋縄ではいかない。チャンピオンはタツヤのボディブローをガードすると、返しの左フックをタツヤのこめかみに命中させ、ダウンを奪った。
幸い、タツヤのダメージは浅くすぐに立ち上がったが、このダウンで試合の流れは変わってしまった。ラウンドを追うごとにチャンピオンの勢いが増し、タツヤは次第に防戦一方になっていく。十一ラウンド目が終わると、タツヤは顔を風船の様に腫らして、青コーナーに帰ってきた。
「いいぞ、タツヤ。ボディだ。ボディを狙え」
万策尽きたか。セコンドからは使い古された指示しか飛ばない。
ラストラウンド、満身創痍のタツヤはボディ狙いから一転、右のオーバーハンドを振り回した。このパンチがチャンピオンの顎に直撃。チャンピオンは両膝をピンと伸ばしたまま仰向けに倒れた。試合終了。奇跡の大逆転勝利に雄叫びをあげるタツヤ。
そんなタツヤと共に、喜びを爆発させている少年がいた。少年は手に握っていた物を放り投げ、テレビに映るタツヤと共にガッツポーズをしている。
「達也ー、ご飯よー」
「はーい」
達也と呼ばれた少年は返事をすると、興奮冷めやらぬままリビングに向かった。
部屋に残されたテレビの画面には、エイトビットで描かれたタツヤたちを背景に「GAME CLEAR!! YOU ARE THE CHAMPION」という文字が点滅していた。
