コント文学『サイコメトラーと罪なき雪だるま』
「あ、雪だるま!」
私の彼は物体に残る残留思念を読み取る事ができるサイコメトリー能力者。
一緒に近所の公園を散歩していると、昨夜から降り積もった雪で作られたメロンにみかんを乗せた程の可愛いサイズの雪だるまを彼が見つけた。
「雪だるま可愛いね」
「うん、雪だるま可愛いね」
滅多に雪が積もらない東京で見つけた小さな雪だるまは私達をほっこりさせた。
「どんな人が作った雪だるまなんだろ?
ねぇ、この雪だるま読み取ってみてよ」
「いいよ、読み取ってあげる。
きっと近所の子供が作ったんだよ」
彼が雪だるまに触れてサイコメトリー能力を発動した。
「う、嘘だろ?」
「ど、どうしたの?」
「これ、リストラされた事をまだ家族に話せていないおじさんが、朝から公園で時間を潰してる時に作った雪だるまだよ」
「そっかぁ・・・可愛い雪だるまが可哀想な雪だるまに見えてきちゃったわね。
ねぇ、あっちにも雪だるまがあるわ。読み取って」
「う、嘘だろ?」
「ど、どうしたの?」
「まだ捕まっていない下着泥棒が密かに戦利品のTバックを履きながら作った雪だるまだよ」
「それは何目的の何プレイで、何が楽しくてやってるのか理解できないけど、気持ち悪いのだけは確定してるわね。
ねえ、あっちにもいくつか雪だるまがあるわよ」
「う、嘘だろ?」
「ど、どうしたの?」
「不倫謝罪会見を控えた知事が現実逃避で作った雪だるまと、ガチの中年マザコン男がママに見せる為に作った雪だるまと、Uber Eatsで配達員をしてる体育大学生を沼らせた団地に住む未亡人が戯れで作った雪だるまだったよ」
「全部ハズレの雪だるまだったのね・・・
私が読み取らせちゃったから、ほっこりした気分を台無しにしちゃったね」
「能力者になって知らない方が幸せな事もあるって改めて気付いたよ。
でも、今回みたいに役に立つ事もあるんだ。
警察に行こう。下着泥棒は捕まえてもらわなきゃ」
「うん、でもその前に私達も雪だるま作ろ」
「そうだね、雪だるま作ろうか」
