旅エッセイ・今回も私には「東京」が分からなかった。
東京というのは、福岡県民の私にとってはぶっちゃけ、よく分からない土地である。
何十回も既に行っている事実はある。
しかし毎回一泊しかしない上に目的を果たせば帰ってしまうので、何一つ把握しているとは言えないし、年に数度の上京なので、いつの間にか以前とは街並みが変化している。
把握していたはずのものがいつの間にかなくなっていることもある。
しかし「当然知ってるでしょ!?マストでしょ!?」みたいなノリでテレビでもSNS上でも話題のメインにいるので、「いや、知らんけどもな……」みたいな気持ちで日々それを眺めている。
ただ、「何かをしようとすると、東京じゃないと話にならない」みたいなものは、たぶんあるんだろうね。
ここ最近はWEBがあるから場所の不利はそこまでないはず、と建前では言っていても、何だかんだ東京中心なことは消えないんだな、と。
最初に私が東京を意識したのは、小学校の頃からの友達が「東京じゃないと」と大学進学を機に上京していった時で、「話にならない」から、と言われても、当時はよく分からなかった。
その子はお兄さんも東京の方に進学・就職していたので、自然と「福岡ではなく東京で生きよう」という感覚があったんだと思う。
今の私自身は「話にならなさ」は分かりつつも、「たまに行くけど私が住むというビジョンは浮かばないかな……」という感覚でいる。
何だかんだ福岡の規模感に最適化された人間になってしまったので、おそらく東京では生きていけない気がする。
あと、題名に「東京」がついている漫画や小説やドラマで、私は間接的に東京を知った気持ちになっている。
東京が舞台の物語は、「何かオシャレ」だ。
毎度地方都市では出せない出自が不明のキラキラ感が表現されている。
そういうこともあって、私にとっての「東京」は現代ファンタジー世界の都市みたいなもの、と言っていい。
東京舞台の創作キャラたちやキラキラした芸能人の方たちがいる街。
私はかつて舞台やコンサートで初めて風間俊介・生田斗真・長谷川純・山下智久・屋良朝幸、という方々を見た時「本当にこの世に存在してる人だったんだ?」と思った。
「えっ、生きてる……呼吸とかしてる。すごい」とか思っていた。
舞台上に存在していて声や動きが音や振動として伝わってくることで、ようやく彼らが生き物として実在しているらしいという事実を理解した。
テレビの中でしか存在を認識していなかった推したちを、私は人間だと認識していなかった。
それもそれでひどい話だ。
で、そんな私が、先日のGW、現代ファンタジー異世界・東京に行った。
文学フリマ東京42にサークル参加するためである。
私はもう30年ほど前から、二次創作の同人誌即売会に参加するために東京に行っていた。
ここ10年ほどは同人活動をやめていたが、それでも上記の方々の舞台を見に行くために東京にたまに行っていた。
コロナが大流行する前までは。
それ以降は何となく腰が重くなってしまっていた。
そして、今回。
文学フリマのために、私は久方ぶりに上京したのだった。
文フリ前日の5/3、私はフォロワーのかし子さんと待ち合わせして、神保町に行った。
神保町を知ったのは、たまたま舞台を見るために2018年秋に上京した際、ホテルが近かったことで偶然古本まつりに遭遇したことがきっかけだ。
色んなお店が色んな本やグッズ類を思い思いに広げていて。
その時は付録がついた雑誌の付録だけ集めて売っているところに、大量に人が集まったりしていて。
私、フリマみたいな形式のわちやわちゃしたイベントが本当に好きなんだよね。
だから、「えー、何だこのイベント、おもろ!!」とすごく楽しく思ったものの、飛行機の時間もあり、後ろ髪を引かれる思いで離れて福岡に帰ることとなったのが、正直切なかった。

これね、当時無料配布されていた冊子なんだけど、いまだに持っていて。
たぶんね、楽しかったんだろうね。
黄色い付箋は「今度ここ行きたいなぁ」と思った証。
しかしそれ以降、コロナもあり、私は東京に行くことはなかった。
で、今回文学フリマに参加するということで、かし子さんに「つみれさん、どこか行きたいところは」と言って頂いて。
じゃあ神保町リベンジだな!!と思った。
東京での移動中の電車の中のモニターではたまたま風間俊介がメロンを食べていて、「福岡民は知らん仕事や。やっぱここ東京で、一応人間として生きてるんだよな、あの人……」と改めて思った。(後日、都市型情報番組『GOODMOVE!』だったようだと知る。)
そうして行った神保町はすごい人で、「本まつりじゃないのに今日は祭りなの?」というくらい人がいて、びっくりしたよね。
文フリ参加勢もいっぱいいたのかなあ。
ちなみに私、ドトールにうっかり忘れ物をしてしまったのだが、たまたま隣の席にいたグループの方々が、忘れていたものを店員さんに預けた旨を街中で教えて下さって、本当にありがたかった。
寝れてなくてヘロヘロだったけど、私はその日、その方々の優しさで生かされた……!!
(この記事見られているか不明ですが、あの黄色いカーディガンの奴です、ありがとうございました!!)
個人的に一番びっくりしたのが、三省堂書店で。
「三省堂って、あの辞書の!?書店があるんだ!?ていうか、本店、そうだ、あらゆる企業の本店があるんだ、東京という土地には!!」みたいなことを思ったわけで。
いや、三省堂と三省堂書店がルーツは同じだけど別の会社なのは、今はちゃんと分かってるけど。
でも、そっか、本店なんだ……としみじみした。
そこも現代ファンタジー感。
それと、めちゃ硬いプリン。
何となく、喫茶店とカレー屋さんが有名らしいことは聞いていて。
この三省堂書店の3階の「喫茶ちそう」でかし子さんとたくさんお話しながらお茶したのだけど、すごい美味しかった、プリン。

この2切れが、立方体としてピシッと形を保ち重なっているさまよ。
一瞬プリンじゃなくてレンガ頼んだんか、私?思ったくらい。
芸術的ぃ。
カラメル色のプリンの表面、そこに映える生クリームの白と、レトロなチェリーの赤のコントラストも、潔い。
とても満たされる硬さのプリンだった。
バスクチーズケーキも美味しそうだった。
そして色んな本屋を案内して頂いて。
優しいぜ、かし子さん。
棚貸しの本屋さんとか、ちょっとシュール面白いけど在庫ない絵本とかも気にしつつ、そろそろ解散……となったわけだけど、私が神田駅の方に行きたかったので、お話しながら歩いて神田方面へ。
私はコロナ前まで宿を取る時、神田西口商店街辺りのことが多くて。
今回、久しぶりにその辺に寄ろうかな、と思った。
で、かし子さんが言うんだな。
「今あそこ、モンダミン駅なんですよ」って。
いや、嘘だろ、って思いながら、以前来るたびに詣でていた不動尊様に行こうとして迷子になって。
近くにあった稲荷社様に「導いてもらえないかな…」と駆け込んで、手水勢いよくぶっかけられつつも手を合わせ、無事不動尊様にもたどり着いてそっちでもお参りして。
ここらへんの街並みは、変わったところも変わらないところもあり。
うなぎのうな正様はGWでお休みで少し残念だった。
空いてたら食べてた。
このお店、昔数カ月おきに東京に来ていた頃、お昼時にたまたまビジネスマンの二人組についていって辿り着いて以来、たまに来ていたんだ。
昼時にはリーマンについていくと、安くて量があっておいしい店に必然的に辿り着くって、知ってるんだ私は。
毎度一人でふらっと来て、うな丼と肝の串焼き一本頼む謎の女。
次に来るときは食べたいな。
そんなことを考えつつ、神田駅に到着した私は、あの例のCMソングの発車メロディーを聞いたのだった。
おわっ、本当だ……!!
私が何年も来ない間に、ここはモンダミン駅になってしまったんだ……!!
少々衝撃を受けた私は、今回の宿は大井町付近だったため、本当は京浜東北線に乗るべきところを、うっかり山手線に乗ってしまった。
そして「あっ、間違えて変なところに行っちゃうところだった!!」と一瞬思って、でも実際はそうじゃないと気づいてハッとした。
違う、「変なところに行く」んじゃない、逆に「山手ループから抜けられずどこにも行けない」んだ。
私は一駅戻り乗り換え、何とか無事ホテルに辿り着いたのだった。
さすが東京かつGWの人混み、もはや歩くだけで疲れ切っていた。
本番の文学フリマは次の日なのに……。
そして文学フリマも、東京は別次元だった。
同人誌即売会は初めてではない。
二次創作のイベント参加の経験もあり、ビッグサイトも初めてではない。
ただ、文学フリマは福岡でしか参加したことない私にとっては、本当に異次元空間だった。
何だこの環境、全然知らん……。
嗚呼、摩訶不思議な摩天楼の地・東京……。
人情味があって優しくて、冷徹厳しくて、変わらないようで、確実に変わっていってて。
現実味がなくて非現実味に溢れてて、ファンタジック。
なのに誰かにとっては仕事してまっとうに生きるための、愛すべき日常のための街で。
やっぱり私は今回も、この土地が良く分からなかったよ……。

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