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書けぬならフォントを使えばいいじゃない。万年筆の濃淡を再現した新書体『イワタつづり』開発秘話

みなさん、こんにちは。
イワタ営業部の杉山です。

早速ですが、この手紙をご覧ください。

「イワタつづり」を使用して書かれた、万年筆特有の濃淡がある手紙のサンプル
まるで自筆のような万年筆特有の濃淡


この手紙、実はフォントを使って書かれた手紙なんです。

自分の字が嫌いというわけじゃないけれど、いざ年賀状やかしこまった手紙を書くとなると、なんだか筆が重い……。

文字を書く機会が減った今、私自身も手書きへの苦手意識が以前より強まっている気がします。

一度、自分で書くのをお休みして、このフォントをあなたの代筆役に選んでみませんか?




1.コンセプトは「達筆な人がさらりと書いたような、絶妙な脱力感」


イワタつづりが目指したのは、余裕のある「崩し」の美しさです。

「イワタつづり White」を使用した縦書き、横書き、欧文の組見本画像。
縦書きでも横書きでも、さらりと馴染む
美しさと、読みやすさの絶妙なバランス

「描く」ではなく「書く」

今回は実際に万年筆で文字を「書き」、手で書いた際に生まれる自然で品のある筆勢や骨格を取り出すことを重視しました。

並行して万年筆が描き出す美しい線の形状を観察してPC上でデザイン。作ったパーツを手書きの骨格に乗せるようにして作成しました。

手書きの骨格に、PCで描いたデザインパーツを組み合わせて制作している比較図
「描く」ではなく「書く」
手書きの骨格に重ねた緻密な造形

見て感じる手のぬくもり

実際に手で書かれた文字がベースになっているため、文字から人の手のぬくもりが溢れ、一目見た時に「うわぁ、カッコイイ」と思える独特の説得力が生まれました。

万年筆で書かれた文字の原図と、執筆に使用した万年筆「カクノ」
理想の「崩し」と「筆勢」を追い求めたアナログ原図と
使用した万年筆「カクノ」

崩し過ぎない

結構気を使った部分が「崩し過ぎない」というところです。
「大人」「格好いい」「さらりと書いた」「脱力感」などのワードを考えると、筆の運びのスピード感を感じすごく文字を崩したくなるのですが、略字を読み慣れない方でも自然に読むことができる形を目指し、適度な崩し書きになるよう試行錯誤を繰り返しました。

「格好よさ」と「読みやすさ」
その境界線を探し求めた、試行錯誤の軌跡

2.万年筆らしい「濃淡」を追求


実は、万年筆風のフォントのアウトラインは結構前に完成していて、いつでも発売できる状態でした。
しかし、「このフォントをもっとリアルにしたい」という思いからある挑戦をしたことで1年ほど開発期間が延びることとなったのです。

その挑戦とは、万年筆の「インクの濃淡」をフォントで表現すること。 カラーフォントという技術により実現しました。

カラーフォント

フォントデータに色の情報を搭載できることをご存じですか?

この話をすると結構驚いてくれる方が多いのですが、搭載できるんです。スマホのメッセージなどでよく使われる絵文字も実はカラーフォントなので気づかないうちに触れている方も多いと思います。

詳しくは、イワタテックノート「カラーフォントってなに?」で解説しているのでぜひご覧ください。

今回、「イワタつづり」はBlueBlack、Sepia、Whiteの3色のカラーフォントを用意しました。いずれか好きなものを選択するだけで設定された色で表示されます。ちなみに、BlueBlackはイワタのロゴに使用されている青をイメージしています。

ブルーブラック、セピア、ホワイトの3色のカラーフォントの色見本比較
BlueBlackの色味の参考になった会社ロゴ
定番のBlueBlackに加え、Sepia、Whiteの3色を用意

こだわった濃淡

インクのムラを表現するために、万年筆の濃淡がどの様な場所で発生するのかを観察し、線端と線の交点にインクが溜まったような濃色のパーツを置くことにして作成していきました。

ただし、作業が必要な文字は2ウェイトで約18,000字
この膨大な作業量を削減すべく、半自動化ツールを自社開発したものの、手書き感を表現した曲線が多い書体のため、エラーが多発してしまいました。

 左:自動化の限界、右:人の手による執念の修正


結局は、全文字を目視で修正する「遠回り」の手法を選択することで、効率化よりもクオリティを最優先しました。

インクが溜まったような濃淡を再現するために、全文字を目視で微調整した拡大詳細図
効率よりもクオリティを選んだ、「遠回り」の証

3.カラーフォントだけじゃない!徹底的にこだわった「フォント体験」


プロポーショナル

欧文はもちろん、すべての仮名と漢字の一部にもメトリクス(詰め情報)が設定されており、簡単に自然な文字組みを表現することが可能になっています。

文字の間隔を自動で最適化するメトリクス設定の「適用前」と「適用後」の比較
横組み上(縦組み右):メトリクス設定の「適用前」
横組み下(縦組み左):メトリクス設定の「適用後」

Layerフォント

自分好みのインクの色で濃淡を表現したい!
そんな方のためにLayerフォントを用意しました。

これは、カラーフォントで使用されている、濃い部分のパーツのみを1つのフォントファイルにしたもので、Illustratorなどのアプリケーションでノーマルのフォントの上に重ねることで自分好みの色、濃度を設定することが可能です。
好きなインクをデジタルで再現したり、コーポレートカラーを表現したりすることも出来ます。



みなさんいかがだったでしょうか?

「こだわりすぎる」という遠回りを選んだせいで、予定よりも1年も長くお待たせしてしまいました。

でも、その1年があったからこそ、インクの匂いや書き手の体温まで感じさせるようなフォントが完成したと自負しています。

自分の字に少し自信が持てないとき、あるいは、デザインに温かみや上品さを添えたいとき。
私たちの執念が詰まったこの「イワタつづり」を、頼ってみてください。
また、発売に合わせて、特設サイトもオープンいたします。

4月10日の発売日以降、サイト内ではこのフォントの「書き心地」をいち早く体感できる試し書き機能も搭載します。
ぜひご自身の言葉で確かめてみてください!

2026年4月10日、「フォントの日」。

あなたの言葉が、新しい色で綴られる日をどうぞお楽しみに!


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