文字コードってなに? 第1回Unicodeとは (イワタテックノート #3)
こんにちは。
株式会社イワタ代表の水野です。
実は私、元々は技術者としてイワタに入社したため、しばらくは受託フォントや新聞フォントなどの開発にどっぷり浸かる日々を送っていました。
今回は、そんな元・技術者の私だからこそお話しできる、フォントの「ちょっとマニアックな裏側の話」をしたいと思います。
テーマはずばり「文字コード」です。
フォントというと多種多様なデザインにフォーカスされがちですが、その土台には「文字コード」という不可欠な仕組みがあります。地味に思われがちな存在ですが、デザインをする人やきれいなプレゼン資料・書類づくりを目指す人にとって、実はフォントそのもののデザインと同じくらい大切であり、知れば知るほど奥深く面白い世界です。
今回から数回にわたり、その仕組みを分かりやすく解説していこうと思います。
第1回目は、現在のデジタル社会の基盤となっているといっても過言ではない「Unicode」についてです。
1. そもそも「文字コード」とは?
文字コードとは、コンピュータが文字を処理・表示するために、それぞれの文字に割り当てられた背番号(コードポイント)のことです。
そして「Unicode」とは、世界中のすべての文字に一意のコードポイントを割り当てた世界共通の規格であり、なおかつ世界で最も使われている文字コードのことです。
実は、コンピュータは文字そのものを理解できません。
私たちがスマホやパソコンで「あ」と入力すると、内部では瞬時に「あ」の背番号である文字コードが送信されます。そして、フォントファイルの中からその背番号に対応するデザインを引っ張り出して画面に表示しているのです。
「難しそう」「プログラマーの領域では?」と思われるかもしれません。
しかし実は、私たちが毎日メッセージを送ったり、資料を作ったりするときに、なくてはならないとても身近な存在なのです。
デジタルフォントの様々な高度な機能も、すべてこの文字コードの仕組みの上に成り立っています。

2. なぜ「文字化け」は見なくなったのか?
・文字化けが消えた理由
最近「文字化け」を見なくなったと思いませんか?
かつてWebサイトやメールで、謎の記号や漢字がズラリと並ぶ「文字化け」に遭遇したことがある方は多いと思います。

しかし、最近は文字化けを目にすることが本当に少なくなりました。
これには理由があります。
以前は、OS(WindowsやMacなど)や国、メーカーごとに異なる文字コードが用いられていました。日本国内だけでも「Shift_JIS」や「EUC-JP」などが混在し、その解釈のズレが文字化けの原因になっていたのです。
しかし最近では、最初からUnicodeベースで設計されているスマートフォンOS(iOSやAndroid)が普及したこと、そしてアプリやブラウザの文字コードを自動判別する機能が進化したことにより、私たちの日常から文字化けがほとんど姿を消しました。
・文字化けをめぐる環境の変遷
Unicodeが世界中の文字を集めているのには文字化けの無い世界を実現したいからにほかなりません。
Unicodeは、「すべての文字をデジタル保存する」という文化的な理念を掲げています。また一方で、国やメーカーの違いによる「文字化け」の壁をなくし、誰もがスムーズに情報交換できる世界を実現することも大きな目的としています。
ここで文字化けをめぐる歴史を簡単に紹介しましょう。
(1)閉じた世界での独自進化(~1990年代前半)
インターネットが一般に普及する以前、コンピュータは基本的に「スタンドアロン(単体)」か、あるいは「同じシステムで作られた社内ネットワーク」の中だけで使われていました。そのため文字化けという概念はありませんでした。
(2)インターネットの爆発的普及と文字化けの多発(1990年代半ば~2000年代初頭)
1995年の「Windows 95」の発売をきっかけに、一般家庭や企業にインターネット(Webブラウザや電子メール)が爆発的に普及します。1991年にUnicodeの初版ができてはいたものの、インターネットという「世界をつなぐインフラ」の普及スピードに対して、Unicodeの普及が追いついていなかったため文字化けのピーク期を招くことになります。
(3)文字化けの収束(2000年代中盤~現在)
インターネットの進歩に伴い、Webで扱いやすい「UTF-8」というUnicodeの符号化方式が2000年代後半から急速にシェアを拡大し、あわせて2010年代以降にUnicodeを標準搭載したスマートフォン(iPhoneやAndroid)が普及したことで文字化けはほぼ見られなくなりました。
3. なぜ今、文字コードを知る必要があるのか?
文字化けがなくなったなら、もう文字コードを学ぶ必要はないのでは?と思うかもしれません。しかし現代においてもフォントを扱う以上、文字コードの知識は欠かせません。
なぜなら、デジタルデータ上の文字は、ほぼ100%文字コードで表現されているからです。さらに、フォントが持つ「異体字」を正確に表示する仕組みや、特定の文字が並んだときにカタチが変わる「合字(リガチャ)」など、フォントの便利な機能の多くが、文字コードの仕組みを利用しています。
つまり、文字コードを知ることは、フォントを意図通りにコントロールし、デザインや作成した資料のクオリティを高めるための強力な武器になるのです。
4. 世界の文字って、一体何文字あるの?
ここで少し素朴な質問です。
世界には文字が何文字あるでしょうか?
・・・実は、正確な数は誰にもわかりません。
しかし、先ほど申し上げた通り、Unicodeの壮大な理念は「すべての文字をデジタル保存すること」です。
世界中の文字を集めて管理しているUnicodeのバージョン17.0(2025年制定)には、なんと159,801文字が登録されています。そして、この数字は今もなお増え続けているのです。
・30年以上の歴史:Unicodeの変遷
Unicodeは一朝一夕でできたものではありません。
時代背景や技術の進化、社会の要請に合わせて、30年以上の時間をかけてアップデートを繰り返してきました。
その歩みをダイジェストで見てみましょう。

↑ 画像内用語解説
JIS X 0201、JIS X 0208、JIS X 0212、JIS X 0213、CJK統合漢字、異体字セレクタ(IVS)、文字情報基盤(MJ)、変体仮名
こうして見ると、日本の文字文化(絵文字、元号、変体仮名など)がUnicodeの歴史に大きな影響を与えてきたことがよく分かりますね。
5. どんな文字が収容されているの?
Unicodeには、私たちが普段使うアルファベットやひらがな、漢字だけでなく、ハングルやアラビア文字、タイ文字といった言語など全170種類以上におよぶ世界中のさまざまな文字の種類(文字体系/スクリプト)が登録されています。
さらにそこへ、記号や絵文字、パソコンの動きをコントロールするための文字まで入っています。
・漢字(約99,000文字)
Unicodeの文字数の大半を占めています。人名や地名、古文書で使われるような珍しい漢字など、今もなお追加され続けています。
・絵文字(約3,700文字)
2010年に登録されて以来、今や言葉の壁を越える世界共通の「言語」として親しまれています。
・例えばこんなユニークな文字も!
Unicodeの巨大な文字の海には、以下のようなユニークな文字にも背番号(コードポイント)がついて収容されています。

世界中のあらゆる文字、そして過去から現代に至るまでの文字文化をひとつの規格で包み込もうとしているのが「Unicode」です。
私たちが普段、何気なくフォントを切り替えて文字を表示できているのは、この壮大な背番号の仕組みがあるからにほかなりません。
文字コードを知ることは、文字の歴史やフォントの仕組みを深く知る第一歩です。
次回は、もう少し深掘りしてUnicodeの構造についてお話しする予定です。
どうぞお楽しみに!
