見出し画像

Top Modelー霞了 In the Spotlight第一話 for Boys Love




― 客席で見ていた霞了の本音 ―

蒼が中央に立った瞬間。

(ああ……)

と、思った。

あれは“見せる”立ち方じゃない。

“背負う”立ち方だった。

モデルの世界でも、分かる。

ただ整っているだけの人間と、
空気を背負って立つ人間は違う。

蒼は、後者だった。



霞了が思ったこと

「完成」ではない

完成された王ではない。

まだ揺れている。

まだ孤独を抱えている。

だからこそ、危うい。

そして、美しい。



焦りを見せない焦り

蒼は焦っている。

だが、それを表に出さない。

霞了はそれを感じ取った。

(あの焦りが消えたら、本物になる)

今はまだ、途中。

だから目が離せない。



自分との共鳴

霞了も、知っている。

“見られる側”の孤独を。

拍手が増えるほど、
本音を出せなくなる瞬間を。

蒼の立ち方は、
その匂いを持っていた。

(孤立するなよ)

思わず言葉にしたのは、
自分に言っているようでもあった。



危うさ

霞了は気づいている。

蒼は一人で立てる。

だが、一人で立ち続けようとする。

それが怖い。

王は孤独でもいい。

だが孤立してはいけない。



そして、ほんの少しの挑戦心

もう一つ。

霞了は、こうも思っている。

(あの立ち方を、横で見てみたい)

挑戦でも、恋でもない。

“並べるか”という感覚。

同じ空気を持てるか。

それを確かめたくなった。



霞了の核心

蒼を好きになったわけじゃない。

崇拝しているわけでもない。

ただ――

“本物の匂い”を感じた。

そして。

(面白くなりそうだ)

TOPLINEを
観客としてではなく、

“目撃者”として見たいと思った。

― 会場外・人の流れが落ち着いた頃 ―

アンコールが終わり、
スタッフが撤収を始めている。

霞了は、まだ客席の端に立っている。

ステージを見ている。

拍手はもう止んでいる。

だが視線は動かない。

その様子を――

真行寺新は、少し離れた位置から見ている。

腕を組んだまま。



真行寺の視点

普通なら、余韻を味わって帰る。

だが霞了は、
“分析する目”をしている。

ただ感動している目じゃない。

噛み締めている目でもない。

観察している目。

真行寺は近づく。

「何を見ている」

霞了は視線を外さない。

「蒼の立ち方」

即答。

真行寺の目がわずかに細くなる。

「どうだった」

霞了は少し間を置く。

「王になりかけてます」

“なりかけ”。

その言い方。

真行寺はそこを拾う。

「なりかけ、か」

霞了は静かに頷く。

「完成はしていない。
でも、止まりで空気を落とせた」

真行寺は黙る。

そして、ふと問う。

「気になるか」

霞了は、そこで初めて真行寺を見る。

視線が真っ直ぐぶつかる。

「ええ」

嘘をつかない。

真行寺は一瞬だけ笑う。

「仕事目線か」

霞了は首を横に振る。

「半分は」

「残りは」

霞了は少しだけ視線を落とす。

「共鳴、ですかね」

その言葉。

真行寺は完全に理解する。



― 真行寺の洞察 ―

(似ている)

霞了と蒼。

どちらも“見られる側”。

どちらも“孤独に慣れすぎている”。

だからこそ、
互いに気づく。

真行寺は静かに言う。

「深入りするな」

霞了は笑う。

「忠告ですか」

「経験だ」

少し間。

真行寺は続ける。

「蒼は今、上がる途中だ。
余計な感情は重りになる」

霞了は真面目な顔で答える。

「重りになる気はありません」

真行寺は一歩近づく。

「なら、目撃者でいろ」

霞了はうなずく。

「分かっています」



― すれ違い際 ―

真行寺が去ろうとする。

霞了が小さく言う。

「でも」

真行寺が止まる。

「王は、孤立させない方がいい」

真行寺は背中越しに答える。

「それは、こっちの仕事だ」

一拍。

「お前は観ていろ」

霞了は小さく笑う。

「了解です」



真行寺は歩きながら思う。

(変化しているな)

霞了は、
“観客”の目から一歩出た。

それは悪くない。

だが――

王を見つめる目は、
時に王を揺らす。



― 会場外・裏口付近 ―

夜風が少し冷たい。

搬入口の脇。

来斗が照明機材のチェックを終え、
壁にもたれている。

そこへ、霞了が静かに来る。

ジャケットを肩にかけたまま。

「桜木さん」

来斗が振り向く。

「お疲れ様です」

少し間。

人の気配は遠い。



霞了の本音

「今日の蒼、どう思いました?」

来斗はすぐ答えない。

「良かったですよ」

霞了は小さく首を振る。

「そうじゃなくて」

来斗は笑う。

「……王でしたよ」

霞了の目がわずかに揺れる。

「やっぱり」

一拍。

霞了は視線を落とす。

「正直に言っていいですか」

来斗は頷く。

「どうぞ」

霞了は息を吐く。

「羨ましかった」

来斗の目が少しだけ細くなる。

「何が」

「背負って立てることが」

風が吹く。



モデルとしての孤独

霞了は続ける。

「モデルは、横に並ぶ世界です。
一人で立ってるようで、常に比較される」

「でも蒼は、中心に立っていた」

来斗は黙って聞く。

霞了は正直だ。

「自分も“見られる側”ですけど、
ああいう立ち方は、簡単じゃない」

少し間。

「だから、目が離せなかった」



来斗の返し

来斗は壁から体を離す。

「惚れました?」

霞了は即答しない。

ほんの少しだけ笑う。

「尊敬、ですかね」

来斗は小さく頷く。

「それなら大丈夫だ」

「何がです?」

「王は、崇拝より尊敬のほうが強くなる」

霞了はその言葉を噛みしめる。



本当の本音

霞了はさらに一歩踏み込む。

「でも」

来斗が見る。

「孤立しそうで、怖い」

来斗は静かに笑う。

「蒼は一人で立つけど、一人じゃない」

霞了は視線を上げる。

「分かってます。
でも、あの立ち方は……危うい」

来斗は真面目な顔になる。

「危ういのは、成長途中だから」

一拍。

「完成したら、もっと遠くに行く」

霞了は少し息を詰める。

「遠く?」

「手が届かないくらい」



小さな約束

霞了はゆっくり頷く。

「なら、今は観ておきます」

来斗が笑う。

「正解」

少し間。

霞了が最後に言う。

「でも、もし孤立しそうになったら」

来斗は先に言う。

「俺らがいる」

即答。

迷いなし。

霞了は小さく笑う。

「安心しました」



遠くで、蒼の笑い声。

王は光の中。

だが。

その光を見つめる目もまた、増えている。

第二章は、

“感情”も動き始めた。


Top Modelー霞了 In the Spotlight第二話 for Boys Loveへ続く


読んでいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!