救急救命士 第49回 A問題 - 95
パーキンソン病でみられる特徴的な所見はどれか。1つ選べ。
(1) 痙攣
(2) 舞踏運動
(3) アテトーゼ
(4) 安静時振戦
(5) ジスキネジー
正解 (4)
【各選択肢の解説】
(1) 誤り。痙攣は、大脳皮質から脊髄、末梢神経、筋肉に至る経路のいずれかの異常によって生じる急激な発作性の不随意収縮です。パーキンソン病では安静時振戦などの不随意運動がみられますが、これを痙攣とは呼びません。(P496)
(2) 誤り。舞踏運動は、大脳基底核や錐体外路系の障害により生じる不随意運動の一つです。ハンチントン病などで特徴的にみられる所見であり、パーキンソン病の直接的な特徴ではありません。(P499)
(3) 誤り。アテトーゼ(アテトーシス)は、上下肢などの遠位部にみられる、ゆっくりとくねるような不随意運動です。脳性麻痺などでみられますが、パーキンソン病の特徴的所見ではありません。(P500)
(4) 正解。安静時振戦は、パーキンソン病に特徴的な不随意運動です。安静時に出現する1秒間に4〜6回程度の比較的ゆっくりとした振戦であり、体動によって軽減します。上肢、とくに手に典型的にみられ、指先で何かを丸めるような動きを示すことから丸薬丸め運動とも呼ばれます。(P500, P555)
(5) 誤り。ジスキネジー(ジスキネジア)は、自分の意志とは無関係に身体が動いてしまう不随意運動の一つです。パーキンソン病の治療薬であるレボドパなどの長期投与による副作用として出現することはありますが、パーキンソン病という疾患そのものが引き起こす特徴的な四大症状(安静時振戦、無動、筋強剛、姿勢保持障害)には含まれません。(P500, P555)
【試験対策】
パーキンソン病は、中脳黒質にあるメラニン含有神経細胞(ドパミン神経細胞)の変性・脱落により、線条体における神経伝達物質であるドパミンの産生が低下して発症する神経変性疾患です。50歳以降の中高年齢層に多く発症し、運動症状に加えて自律神経症状や精神症状など多彩な症状を呈します。国家試験においては、パーキンソン病に特有の「錐体外路症状」や、他の不随意運動との鑑別が頻出事項となります。
パーキンソン病の代表的な運動症状として、「安静時振戦(手足の規則的な震え)」、「無動・動作緩慢(仮面様顔貌、すくみ足、小きざみ歩行など)」、「筋強剛・固縮(歯車様固縮)」、「姿勢保持障害(前傾前屈姿勢など)」が挙げられます。特に振戦などの不随意運動については、原因となる疾患によって出現するタイミングや特徴が異なるため、明確に区別できるように整理しておきましょう。

運動症状以外にも、自律神経症状として便秘や起立性低血圧、脂漏性皮膚、排尿障害などがみられ、精神症状として抑うつや不安、睡眠障害、認知機能の低下を伴うことがあります。また、眉間を繰り返し叩打すると瞬目反射が数回で停止せず長時間持続する「Myerson(マイエルソン)徴候」も特徴的です。
パーキンソン病の傷病者は、姿勢保持障害や歩行障害(すくみ足、加速歩行など)により、転倒による頭部外傷や大腿骨頸部骨折などの受傷リスクが非常に高くなっています。そのため、外傷で救急要請された場合でも、背景にパーキンソン病などの神経系疾患が隠れていないか、既往歴や服薬状況を詳細に確認することが重要です。また、パーキンソン病の治療薬(レボドパなど)の副作用として、自分の意志とは無関係に体が動いてしまう「ジスキネジア」がみられることもあり、これらを疾患そのものの症状と混同しないよう注意が必要です。
【ステップアップ】
私たちが手足をスムーズに動かそうとするとき、脳の中では非常に複雑な情報伝達が行われています。大脳皮質から「動け」という指令が出ると、それが脊髄を通って末梢神経から筋肉へと伝わります。しかし、ただ「動け」という指令を出すだけでは、ロボットのようにぎこちない動きになってしまいます。そこで重要な働きをしているのが、大脳の深部にある「大脳基底核」という部分です。大脳基底核は、無意識のうちに運動の強さやタイミング、筋肉の緊張具合を微調整し、滑らかで自然な動きになるようにコントロールしています。パーキンソン病は、この大脳基底核のネットワークに深く関わる中脳の「黒質」という部分の神経細胞が徐々に変性して減少し、神経伝達物質である「ドパミン」が不足してしまう病気です。潤滑油のような役割を果たすドパミンが減ることで、運動のブレーキとアクセルのバランスが崩れ、身体がスムーズに動かなくなり、安静時振戦や無動、筋強剛といった特徴的な症状が現れるのです。
パーキンソン病が進行すると、初期にはあまり目立たなかった「姿勢保持障害」が徐々に現れてきます。健常な人であれば、後ろから軽く押されてバランスを崩しても、とっさに足を踏み出して姿勢を立て直すことができますが、パーキンソン病の傷病者ではこの反射がうまく働きません。そのため、少しの段差や方向転換の際に転倒しやすくなり、骨折などの大きな怪我につながる危険性が高まります。また、歩行にも特有の異常がみられます。歩き出しの一歩目がなかなか踏み出せない「すくみ足」や、歩幅が極端に狭くなる「小刻み歩行」、歩き出すと前傾姿勢のまま小走りのように加速してしまい、自分では止まれなくなる「加速歩行(突進現象)」などが代表的です。これらの歩行障害は、傷病者の日常生活の質(QOL)を大きく低下させる要因となるため、介護や看護の現場においては、転倒予防のための生活環境の整備や、歩行時の具体的なサポート方法を検討することが非常に重要な課題となります。
パーキンソン病の治療においては、不足しているドパミンを補うことが基本となります。しかし、ドパミンそのものを薬として飲んだり注射したりしても、脳と血液の間にある関門(血液脳関門)を通過できないため、脳内に届きません。そこで、脳内に入ってからドパミンに変化する「レボドパ(L-dopa)」という薬が広く使われています。レボドパは非常に効果的な薬ですが、長く使い続けていると、薬の効き目が切れるのが早くなったり、薬が効いている時間帯に自分の意志とは無関係に身体がくねくねと動いてしまう「ジスキネジー(ジスキネジア)」という副作用が現れることがあります。これは、長期間のドパミン補充によって脳内の受容体が過敏に反応してしまうためと考えられています。選択肢の解説で触れたように、ジスキネジーはパーキンソン病そのものの症状ではなく、治療薬による影響であるという点をしっかりと区別しておきましょう。
救急現場や臨床の場で不随意運動をみかけた際、それがどのような性質のものかを観察することは、原因疾患を推測する上で非常に重要です。例えば、パーキンソン病でみられる「安静時振戦」は、じっとしている時に現れ、何かの動作を始めようとすると軽減するという特徴があります。これに対し、小脳の障害でみられる「企図振戦」は、安静時にはみられず、目標物に指を近づけようとするなど、目的を持った動作を行う際に震えが強くなります。また、手足がピクピクと痙攣するように動いているのか、それとも舞踏運動のように不規則で素早い動きなのか、あるいはアテトーゼのようにゆっくりとくねるような動きなのかを的確に見極める必要があります。さらに、これらの不随意運動が意識障害を伴っているかどうか、左右のどちらかに偏っていないかといった付随する症状も合わせて観察することで、より正確な病態の把握につなげることができます。
【救急救命士へのアドバイス】
パーキンソン病傷病者が救急要請に至る背景には、疾患特有の運動障害に伴う合併症が多く見られます。救急現場において最も遭遇しやすいのは、姿勢保持障害やすくみ足に起因する転倒や転落に伴う外傷です。特に高齢者の場合、大腿骨頸部骨折や頭部外傷を合併しているリスクが高いため、慎重な全身観察が求められます。また、進行期には嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎を併発しやすく、呼吸困難や発熱を主訴として要請されるケースも少なくありません。傷病者との接触時には、安静時振戦や無動といったパーキンソン病の主症状だけでなく、これら二次的な合併症が隠れていないかを注意深く評価することが重要です。
さらに、救急活動における重大なピットフォールとして悪性症候群の存在が挙げられます。悪性症候群は抗精神病薬の副作用として知られていますが、パーキンソン病治療薬であるレボドパ製剤などを急に自己中断したり、消化器症状などで内服できなくなったりした場合にも発症する危険な病態です。高熱、著明な筋強剛、意識障害、頻脈や血圧変動といった自律神経症状を呈し、放置すれば横紋筋融解症から急性腎障害に至り死の転帰をたどることがあります。パーキンソン病の既往がある傷病者が高熱と意識障害を呈している場合は、直近の服薬状況やお薬手帳の内容を家族から必ず聴取し、受入先医療機関へ迅速に情報提供を行ってください。
病院到着後、医療機関ではパーキンソン病の確定診断や、正常圧水頭症、脳血管障害、他の神経変性疾患との鑑別を行うために、頭部CT検査やMRI検査が実施されます。さらに、ドパミン神経系の脱落を評価するドパミントランスポーターシンチグラフィや、心臓交感神経の異常を捉えるMIBG心筋シンチグラフィなどの専門的な核医学検査が行われ、病態の正確な把握が行われます。
パーキンソン病に対する医療機関での治療の基本は、不足しているドパミンを補充するレボドパ製剤などの薬物療法です。しかし、長期間の治療により薬の効き目が短くなるウェアリングオフ現象や、意志に反して身体が動くジスキネジーなどの運動合併症が出現し、薬物でのコントロールが困難になることがあります。このような重症例に対する根本的な外科治療として、脳深部刺激療法が選択される場合があります。これは脳の深部に電極を留置し、前胸部などに植え込んだ発生装置から電気刺激を送り続けて運動症状を改善させる手技です。救急現場で前胸部にペースメーカーのようなデバイスの植え込みを確認した際は、心臓ペースメーカーだけでなく脳深部刺激療法の装置である可能性も念頭に置き、活動や処置にあたることが求められます。
いいなと思ったら応援しよう!
記事をお読みいただきありがとうございます。ご支援は、今後のより分かりやすい解説コンテンツの作成や、教材充実に向けた書籍・資料代として活用させていただきます。皆様の国試対策や日々の学習のステップアップに少しでもお役に立てれば幸いです。温かい応援をよろしくお願いします!