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占い師が観た膝枕2【最終回】雨とリケジョと卒業(?)編

※こちらは、脚本家 今井雅子さんが書いた【膝枕】のストーリーから生まれたアナザーストーリーです。

◆占い師が観た膝枕season1はこちら💁‍♀️◆

この「占い師が観た膝枕」シリーズの舞台となっております、占いの館が先日閉店いたしました。
season1から5年半。膝枕界隈では他の外伝でも登場させてくださったり、話題にしていただいた場所でもありました。

実際に「聖地」としてご来店くださる方も多くいらっしゃり、とても楽しかったです!
本当にありがとうございました!

これを機に、占い師が観た膝枕season2もそっと締めることにいたします。

【最終回です】

今井雅子さん作の「わにのだんす」に出てくるワニが出てくる外伝、占い師が観た膝枕〜ワニと箱入り娘編〜〜春の嵐編〜
あと、〜イベント鑑定編〜 リケジョの受難編 〜〜大晦日の特別な夜編〜に出てくる登場人物が出てきます。
特に、今井雅子作「箱入り娘白雪姫」、season2第一話のリニューアルオープン編は必須です?
ぜひ!一緒にお楽しみください。

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登場人物がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️

できれば、SNSなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)
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サトウ純子 作  占い師が観た膝枕 2

【最終回】雨とリケジョと卒業(?)編


急に雨が降り出した。

雨というのはいろいろなものを運んでくる。
おまけに突然降り始める雨というのは、招かざるものを連れてくることがあるので特に注意が必要だ。

「家を出る時は陽が射していたのに」

占い師は天井の窓枠に映るビニール傘を目で追いながら、軽くため息をついた。

「先生、お客様です」

ブースの入り口で受付票を差し出している女性。受付の女の子だ。

「いつもの方です。ただ…」

鑑定表に目を落とし、少し困ったように入り口の方を振り返る。

「大丈夫ですよ?どうぞ」

占い師は首と肩をクルッと回すと、背筋を伸ばして椅子に座り直した。

「それが…そのぉ…」

裏から軽快なリズムが聴こえてくる。
近所の教会で歌を歌い出したようだ。
そのリズムに合わせて、受付の方からもバンバンという音が響いてきた。

「…たぶん、いつもの方だと思うのですが」

「はい?」

受付の方から『驚かない…ワニか?』という声と共に、受付バイトの子の笑い声が聞こえてくる。

「あの…あの。赤のハットを被り、黄色のジャケットを羽織って二本足で立っているワニさんは、いつも通りなんです!あと、膝だけの方も。」

受付の女の子は、目を大きく見開いて受付票を差し出した。そこには、大きく「ワニ」とだけ書いてあった。

『もうすぐ閉店しちゃうワニか。残念ワニ』
聴き慣れた声が響き渡る。

「ただ、ですね…お連れさまが…。いつもの方だと思うのですが。お二人とお膝さま、一緒に大丈夫ですか?」

受付の女の子は、また、困ったような顔をして入り口の方を振り返る。

「大丈夫ですよ」

占い師は、覗き込むように入り口の方を見た。

「こんばんワニー」

ワニは軽い足取りで占い師の横を通り過ぎると、グレーのパンツスーツを着た女性の手を引きながら椅子に腰掛けた。

「お久しぶりワニ。今日は冷えるワニなー」

ワニは赤いハットを椅子に置きながら、口から白い息を吐く。

「お久しぶりです。来ていただけて嬉しいです」

占い師は相変わらずワニの口元に釘付けだ。 

女性の膝の上で正座の形で座っている女の腰から下しかないオモチャのようなモノ。占い師は、それが膝枕の『しーちゃん』であることを知っていた。

占い師に向かって片方の白い膝頭をグイッと上げている。

ただ、しーちゃんを抱えている女性に心当たりはあるのだが、いまいち確信がもてないでいた。

「なんか、すみません」

その声で、占い師は大きく頷いた。

やはり、リケジョだ。

「この子が、そこの居酒屋でしーちゃんを抱えて泣いていたワニよ。放っておけなくて連れて来ちゃったワニ」

また、拾って来ちゃったのか。
占い師は心の中で軽く突っ込んだ。

しかし、今日のリケジョはいつものリケジョではなかった。

ピシッとしたスーツ姿に膝枕を抱えて座る姿は明らかにリケジョなのだが、化粧気がなく、トレードマークのメガネをしていない。

なにより、その目が、泣き腫らしたせいなのか『まんじゅうに切れ目』状態で、原型を留めていなかった。
これではリケジョだとはわからない。

戦隊モノの悪役そっくりだが、もっとしっくりする表現があるような気がして、占い師は一瞬視線を宙に這わせて考えをめぐらせた。

雨が強くなってきた。
受付の子が、慌てて空気の入れ替えの為に開けていた扉を閉める。

それと同時に、いきなり、占い師の脳裏に、ある言葉が浮かんできた。

『整形のダウンタイム』

占い師は瞬間的に横を向いて肩を揺らす。

「私…振られちゃったんです」

リケジョは俯いたまま、小さく呟いた。

「あー。つまりワニな。結婚を断られたらしいワニ」

ワニは手にしていたペットボトルの水を、高い位置から上手に口に落とし込むと、『飲むワニか?』と、リケジョにそれを差し出した。

椅子に座り直したしーちゃんが「どんまい」というようにリケジョの腿の辺りを膝頭で突くく。

「あの方とお茶をしている時に、勇気を振り絞ってプロポーズしたのです」

カードをシャッフルする占い師の手が一瞬止まった。リケジョの横で、しーちゃんが台本のようなものを広げ出す。

「私、高学歴で高収入ですし、なんでもできますから、相手にとってメリットでしかないのです」

だから、彼が私を選ばないわけが無い。
リケジョは当前のように小刻みに頷いた。

「で、すぐに結婚、でいいかと」

占い師はまた、首をかしげながら、視線を宙に這わせる。

外で車のクラクションが鳴り響く。

「付き合ってもいないのに、いきなり結婚を迫られたら引くワニよ」

肩を震わしているリケジョの背中を、ワニがポンポンと優しく叩く。

「だって『不器用なところもあるけど、いつも一生懸命なのが君の魅力だね!』って言ってくれたんです!これって、私のこと好きってことですよね?」

前を通り過ぎるカップルの笑い声が、雨音と一緒に響き渡る。

「幸せなんて、私にはやって来ないんだわ…」

リケジョは、カバンからメガネ拭きを取り出すと、今度は容赦なく目をこすり始めた。

ワニがギョッとして首にかけていたタオルを差し出す。

「カードを観ますと『まだ始まってもいない』と出ていますよ。何か勘違いしている可能性があるようです」

横で大きく膝頭を弾ませたしーちゃんから、台本が滑り落ちた。ワニがその台本をそっと持ち上げる。

「『箱入り娘白雪姫』…今度の舞台の台本ワニな!」

ワニがめくれたページを閉じようとすると、しーちゃんがそっと膝頭を乗せてきた。

「えっと…白雪姫がいてくれたら、それだけで幸せワニ。朝目が覚めて白雪姫がいたら幸せワニ。仕事を終えて家に帰ったときに白雪姫がいたら幸せワニ。…と、小人たちが言うワニな。」

横でしーちゃんは膝頭をぱちぱち合わせている。

「そうです。それを聞いた白雪姫が『これが幸せというものの温度なのだろう』と気付く、大事な場面です」

リケジョが反射的に言葉を挟むと、その後すぐに口元で「ああ、そうか…」と、小さく呟いた。

「素敵な話しワニな!完成が楽しみワニ」

「そうですね。私、まだ、始まっていないですね」

リケジョは背筋を伸ばし、カバンからいつものメガネを取り出すと、ワニに向かって『いつもいろいろとありがとうございます』と、丁寧に頭を下げた。

「しかし。よくできた着ぐるみですね。ずっと着ていて肩凝らないですか?」

帰り際、リケジョが人差し指でメガネを押し上げながら言った。

「で、彼のことはどうするワニか?」

リケジョの話しを聞いているのか、聞いていないのか。ワニはリケジョと肩を並べて尻尾をバンバン道に打ちつけながら歩く。

「同棲を申し込もうかと!」

雨はもう止んでいた。

占い師は、遠ざかる二人の背中と、背負子で膝頭をバタバタさせているしーちゃんに手をふると

「春はまだまだ先だなぁ」

と、空に向かって白い息を吐いた。


ー ENDー


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ということで、season1、season2は終了したわけですが……

『占い師が観た膝枕』は、今後ものんびり更新予定です(^_^)

どんな形になるかはまだ、未定ですが。

引き続きお付き合いいただけたら幸いです!



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