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ショート小説2          「お決まりの展開」


ある大学生の4人は別荘のゲートに入っていく。今は8月の上旬、彼らは最終日の大学講義を休み、汗を吹き流しながら歩いてこの別荘にやって来たのだった。彼らはヒデキに誘われ、人が住んでいないと言われる別荘にやって来たのだった。
「本当に、うちのパパが知ったら私はもうあんたたちと遊べないからね」
「大丈夫、サボったことがバレるれることはないさ。ミサのお父さんは確かに怖いが、君が髪の色を金髪に染めても何も言わなかったじゃないか」
「金髪のくせにミサには威勢がなんだネ」
「みんなして何よ。みんな私に優しくないわね。このアイデアはヒデキが考えたのよ。あんたが責任とってね」
「僕は確かに君を誘ったが、来たのは君自身じゃないか。僕は実験のために来たんだ」
「実験ってなんなんだよ」
「今にわかるさ」

別荘は中に人が1000人隠れることができるくらいの大きさであるが、その全貌は周りの森林によってうまく隠されている。時よりカラスの声が聞こえ、それ以外は彼らの呼吸音と地面の落ち葉を踏む音しか聞こえない。4人は人里離れた別荘の大きなドアの前。
「誰が開けるんだ?」
「ここは別に重要じゃないんだ。ダリが開けてくれ」
「俺かよ、そもそもどうしてお前はその実験を教えてくれないんだよ」
「そうカリカリするんじゃない、ダリ。それは後に取っておいてくれ」
「みんな変なコね」
「ミサはその調子だ。」
ダリが重いドアを開け、先陣を切って入る。屋内は意外と涼しく、ここまで来るときにかいた汗は引き、肌寒さを感じるほどであった。屋内は綺麗にしてあるが、壁にかかっている趣味の悪い絵画や廊下のオブジェはほこりをかぶっている。そこで一同はリビングに向かう。


「私トイレに行きたいわ」
「さっきいったばかりじゃない、先に帰ろうとしているんじゃないわよネ」
「ルミコったら、私はトイレに行きたいだけなの!」
「落ち着け、俺がついて行ってやろうか?」
「私は1人で行けるわ、ダリ。女の子だからってビビってるんじゃないわ」
「気をつけてね。僕らはリビングにいるから」
トイレを探すためミサは1人別荘の奥へと進んでいく。その間、3人はリビングのソファでくつろぐ。
「俺は科学の授業で単位を落としちまったなあ」
「あら、全部出席したのにかわいそうネ」
「だろ、俺は全部出席して、課題も全部やったてのに。おいヒデキ、お前は単位とれたのか?」
「ああ、僕はテストの点数が良かったからね」
「何だよ」
彼らはくつろぎ、羽を伸ばす。リビングから大きなガラスを通して見える庭には大きなプールがあるが、そこの水は透明ではなく古そうに見える。
「おい、一緒にプールに入ろうぜ」
「あの色を見てごらんなさいヨ。入りたくないわ」
「僕も。あのう、みんなで映画でも見ないか?そこにテレビがあるし、僕はビデオを持って来たんだ」
「何のビデオを持ってきたの?」
「サマリトールの殺人鬼2」
そこへ女性の声が響きわたる。

「助けて!」

「ミサの声だわ」

「何があったんだ、行こうぜ」

「やはり…僕の考えた通りだ」

彼らはリビングを出る。すると額から血を流したミサが走ってくる、彼女は3人と合流する。後ろからミサを襲った人物の足音がどんどん近づいてくる。
「大丈夫?何があったのヨ」
「斧を持った男…私を追ってきたのよ!」
「そんなことより早く逃げるぞ!」
「リビングに戻ろう」

4人はリビングに入り、テーブルを使ってドアを封鎖する。
「何だよ、警察に通報するぞ」
「そんなことしても意味ないよ、電話は繋がらないはずだ」
「そんな遊びに付き合ってる暇はない」
ヒデキは電話を掛けたが電話が繋がることはなかった。
「くそーなんで繋がらないんだ」
その時ドアを蹴る音が。
「あいつが来たわ!私たちを殺す気よ!」
ドアを蹴る勢いは大きくなる。
「そいつが入ってきちゃうわヨ!」

ダリは突然、ヒデキに掴みかかる。
「おい、さっきから電話が繋がらないとか、考えた通りとか、どういうことだよ?そもそも実験ってなんだ?」
ヒデキは動揺せず、息が詰まった声で話す。
「落ち着け、これはお決まりの展開だよ。僕はそれを確かめるために来た。他にもお決まりの展開はいっぱいある。そしてホラー映画において仲間割れは禁物だ、よしてくれ。」
「何だよ」
「奴は殺人鬼ボーリだ。彼はここの別荘に一人住んでいて、冷やかしに来た若者を襲っているんだよ」
「とにかく逃げましョ」
「そこのガラスを割ってプールを通って逃げよう。しかし何があっても絶対に落ちたらだめだよ。」
その間もドアの前のバリケードはどんどん崩れ、ドアが蹴られる音はしきりに響く。ヒデキは椅子をガラスに投げつけガラスを割る。
「おい!逃げるぞ!」
みんなはプールサイドを通って逃げる。ついにボーリはドアを突破し、うなり声をあげる。その声はリビングに響き、逃げる4人の耳にも響き渡る。思わず足がすくみバランスを崩すミサであったが、ルミコに支えられ、プールに落ちることなかった。そのまま4人は森に逃げ込む。
「このままどうするんだよ!」
「逃げるしかないよ、でもコケない限り、奴には追いつかれないから足元に気を付けるんだ」
「わかったワ」

ボーリもプールサイドを早足で抜け森に入り、執拗に4人を追いかける。
足を取られないように逃げる4人であったが、ヒデキは木のつるに足を取られよろけてしまい、ビデオを落としてしまう。
「何やってんだ!行くぞ!」
「僕のビデオが!」
「ほっときなさいよ、今は逃げるわよ!」
「僕はお決まりの展開が本当にあるのか確かめたかっただけなんだよ!」
彼らは息を切らして逃げる、振り返って、足元を見て、必死に逃げる。
その頃ボーリはヒデキが足を取られたあたりに着く、そしてあるものが目に入る。ヒデキが落としたビデオ。

「サマリトールの殺人鬼2」
ボーリはそのビデオを拾い上げ、じっと見つめる。そして何を思ったのか、ボーリは薄っすら笑みを浮かべ、踵を返して帰っていく。



「あいつ、なぜ追いかけてこない?」
「知らないわヨ、見失ったんじゃないの?」

ボーリは、なぜか追いかけるのを止め、別荘に帰っていく。手に持っているのは、
「サマリトールの殺人鬼2」
そしてヒデキが言っていたお決まりの展開、そんなものは本当に存在するのか?そしてボーリは何を思ったのだろうか?もしホラー映画で彼が好きな展開があるとすれば、恐らくそれはホラー映画には必ず続編があることだろう。



「また会おう」



お決まりの展開、ボーリは帰っていく。彼はもう4人を追う必要はない。なぜかって?それは続編があれば、必ず彼ら4人はこの別荘に帰ってくる。4人は必ず戻ってくる。彼はきっとそう思ったのだろう。


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