見出し画像

有料データベースの情報を自社製品のAI学習に利用することはフェアユースに該当するか ー Thomson Reuters GmBH v. Ross Intelligence Inc. No. 1:20-cv-613-SB


1.はじめに

 

デラウェア州地方裁判所が本件裁判管轄を有するこの事件、CRICのツイートにもあるように、有料の法律データベース上で掲載されている要約文(ヘッドノート)を利用して、法律AIデータベースを構築することについて著作権法上許されるのかが問題となっています。

この時点で気づくかと思いますが、よくTwitter(現X)でしばしば論争となっている「インターネット上に公開されているコンテンツを生成AIの学習のために複製する」事例とは相当程度かけ離れていることに注意です。

とはいえ、一般にAI学習のための著作物(コンテンツ)の複製行為がフェアユースに該当するか、そのフェアユースをどのように適用すべきかを丁寧に先例と条文に従ってあてはめを行っています。また、フェアユースの4要件にも序列があることが示唆されており、フェアユースの勉強にもなるかな…?と思います。

【2025年2月28日追記】

本件略式判決の内容を明確に要約した記事がありましたので、本文を読むのが難しそうだな…と思う方はこちらの記事を先に読むことをお勧めします。


【本記事における注意事項(重要)】

※訳語について不備等あればご指摘ください。
※執筆者は米国著作権法のFair useについて専門としているわけではないため、本記事の内容に不備・誤解等があれば忌憚なくご指摘いただけると大変幸いでございます。


2.関連条文

出典はCRICホームページ「外国著作権法 アメリカ編」(山本隆司)(https://www.cric.or.jp/db/world/america/america_c1a.html#107)を参照しています。

【米国著作権法101条】(一部抜粋)

本編に別段の定めある場合を除き、本編において、以下の用語およびその活用形は、それぞれ以下の意味を有する。
・・・
「集合著作物」とは、定期刊行物、選集または百科事典等の、それ自体が別個独立の著作物である多数の寄与物が一つの集合物を構成するものをいう。

「編集著作物」とは、全体として創作的な著作物を構成する方法で、既存の素材またはデータを選択し、整理しまたは配列し、これらを収集し編成して作られた著作物をいう。「編集著作物」には集合著作物を含む。
・・・
著作物は、著作物が最初にコピーまたはレコードに固定される時に「創作」される。著作物が一定期間にわたって作成される場合、特定時に固定されている部分がその時点での著作物を構成する。また、著作物が異なる表現形式で作成されている場合、各々の表現形式が別個の著作物を構成する。

【米国著作権法106条】

第106条 著作権のある著作物に対する排他的権利
第107条ないし第122条を条件として、本編に基づき著作権を保有する者は、以下に掲げる行為を行いまたこれを許諾する排他的権利を有する。
 (1)著作権のある著作物をコピーまたはレコードに複製すること。
 (2)著作権のある著作物に基づいて二次的著作物を作成すること。
 (3)著作権のある著作物のコピーまたはレコードを、販売その他の所有権の移転または貸与によって公衆に頒布すること。
 (4)言語、音楽、演劇および舞踊の著作物、無言劇、ならびに映画その他の視聴覚著作物の場合、著作権のある著作物を公に実演すること。
 (5)言語、音楽、演劇および舞踊の著作物、無言劇、ならびに絵画、図形または彫刻の著作物(映画その他の視聴覚著作物の個々の映像を含む)の場合、著作権のある著作物を公に展示すること。また、
 (6)録音物の場合、著作権のある著作物をデジタル音声送信により公に実演すること。

【米国著作権法107条】

第107条 排他的権利の制限:フェア・ユース
第106条および第106A条の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、以下のものを含む。
 (1)使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)。
 (2)著作権のある著作物の性質。
 (3)著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性、および
 (4)著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。
上記のすべての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合、著作物が未発行であるという事実自体は、かかる認定を妨げない。


3.本判決を読む前に見るべき前提事実

1.WestLawの「ヘッドノート」


Westlaw Internationalの公式ガイドには以下のように定義されています。

Key Numberを用いた論点からの判例等の検索
Key Numberによる論点の分類について
WEST社が出版する判例には、判例中に含まれる全ての法律上の論点に関する要約・関連付けが行われ、それらがヘッドノートに記載されています。また、それぞれのヘッドノートは、論点ごとにKey Numberとの対応関係に応じて分類されています。このヘッドノートを分類する際に、法曹資格を持つ弊社編集者が使用しているのが、Custom Digestと呼ばれる、各論点とKey Numberの対応表です。このCustom Digestを使えば、お調べになりたい論点に対応する ”Key Number”を見つけ出すこともできますし、Key Numberを通じて、論点ごとに分類されたヘッドノートから判例を検索することもできます。

West Key Number Digest にアクセスするには、どの画面からでも最上部に表示されたKey Numbersをクリック後、次のページでWest Key Number Digest Outline をクリックします。Key Numberの番号順に表示された論点対応表が表示されます。プラス(+)やマイナス(-)を使って対応表を閲覧していきます。また、判例系の検索条件入力画面(主にキーワード条件入力の画面)からCustom Digestをクリックしても同様にアクセスできます。

「WELCOME TO WESTLAW(日本語版)」16頁https://www.westlawjapan.com/pdf/wln/comparison.pdf

このKey Number Systemというのは、判例とナンバリングされた法律用語(「離婚」など)と見出し(「性質および救済の形態」など)の組み合わせで分類されたものです。

そしてヘッドノート(Headnote)とは、その判例の要約および法的論点の要約が一文程度でまとまったものです。

Key Number System > 134 DIVORCE > I. NATURE AND FORM OF REMEDY, k1-k11.5(Westlaw Classicよりキャプチャ。本画像の著作権はThomson Reutersに帰属します。)


2.当事者らの主張について

端的に言えばThomson Reutersのヘッドノート文章を複製したことについてのフェアユースが認められるかどうかが中心ですが他にも論点があります。
これについては以下のツイートを参照いただけますと幸いです。

さて、これらの前提を見たうえで判決文へいざ…

4.判決文本文

判決文(裁判官見解)原文は、https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.ded.72109/gov.uscourts.ded.72109.770.0_2.pdf


デラウェア州地方裁判所

原告:Thomson Reuters Enterprise Center GmBH and West Publishing Corp.
被告:Ross Intelligence Corp.
(原告代理人・被告代理人名省略)

No.1:20-cv-613-SB

略式意見

2025年2月11日






(2頁)

BIBAS巡回裁判官、指定により出席。


賢者は自らの正しきを知り、智者は自らの誤りを知る。智慧はいつも私のもとに訪れるわけではない。それゆえに、たとえ遅れてでも訪ねてきたときには、私はそれを受け容れようとしよう―まさに今のように。


したがって、私は本件に関する2023年の略式判決の意見と命令を修正する(連邦規則 R. Civ. P. 54(b); D. I. 547, 548; Thomson Reuters Enter. Ctr. GmbH v. Ross Intel. Inc., 694 F. Supp. 3d 467 (D. Del. 2023) )。私は、(1)著作権の直接侵害および関連する抗弁についての部分的略式判決を求めるThomson Reutersの申立ての概ねを認容する(D. I. 674); (2)Thomson Reutersのフェアユースについての部分的略式判決の申立を認容する(D. I. 672); (3) Rossのフェアユースに関する略式判決の申立てを却下する(D. I. 676); (4)RossのThomson Reutersの著作権主張に関する略式判決の申立てを棄却する(D. I. 683)。


I. Rossが法律AIツールを作成し、Westlawの所有者が提訴する


法律というものはもはや虚空に広がる陰鬱な遍在物などではなく、今や法律研究プラットフォームにというものの中に存在している。Thomson Reutersは、そうしたプラットフォームの中でも最大規模のWestlawを有している(D. I. 752-1 at 4)。 利用者は料金を支払うことで、「判例、州法・連邦法、州・連邦規則、法律雑誌、論文」などのコンテンツにアクセスできる(同頁)。また、このヘッドノートのように「Westlawには編集コンテンツや注釈も含まれている」(同頁)。これらのヘッドノートは、法律および判例の要点を要約したものである。Westlawは、数値分類法であるキーナンバーシステムを使用してコンテンツを整理している(同頁)。Thomson ReutersはWestlawの著作権で保護されうる素材における著作権を保有している(同頁)。


(3頁)

Westlawの新たな競合企業であるRossは、人工知能を使用する法律リサーチ検索エンジンを開発した(同頁)。そのAI検索ツールを訓練するために、Rossは法律上の質問と回答のデータベースを必要としたという(同5頁)。 そこでRossはWestlawのコンテンツのライセンス付与を求めた(同頁)。しかし、Rossは競合企業であったため、Thomson Reutersはこれを拒否した(同4-5頁)。

そこで、AIの訓練用に、RossはLegalEaseと契約を締結し、「Bulk Memos」という形式の訓練用データを得た(同4-5頁)。Bulk Memosは、弁護士が作成した法的質問と、それに対する良い回答集と悪い回答集である。LegalEaseは弁護士らに、Westlawのヘッドノート語を使って質問を作成する方法を説明するガイドを提供したが、その一方で当該弁護士らはヘッドノート語を質問にそのままコピー&ペーストしてはならないことを明確にしていた(D. I. 678-36 at 5–9)。 LegalEaseはAI検索ツールの訓練用に、Ross社に約25,000件のBulk Memosを販売した(D. I. 752-1 at 5; D. I. 769 at 30 (10:48:35) を参照)。換言すれば、RossはBulk Memosを使用して競合製品を構築したが、これはWestLawのヘッドノート語から構築されたものだったということである。Thomson Reutersがこれを知ったため、著作権侵害でRossを提訴した。

2023年、私は著作権侵害とフェアユースの抗弁に関するThomson Reutersの略式判決の申立てをほぼ棄却し、この訴訟は審理に向けて前進した(D. I. 547, 548)。 2024年8月の公判期日に向けた準備期間中、私はこの訴訟資料をさらに詳しく検討し、以前の略式判決では十分な判断ができていなかったことに気づいた。そこで私は審理を継続し、当事者らに略式判決に関する意見書の再提出を求めた(D. I. 663)。

Thomson Reutersは、著作権の直接侵害および関連する抗弁について、再び部分的略式判決を請求した(D. I. 674.)。RossはThomsonの著作権請求に対する略式判決を請求した(D. I. 683)。そして、両当事者はフェアユースに対する略式判決を再度請求した(D. I. 672, 676)。 私は2023年の略式判決における意見の一部を修正する(連邦民事訴訟規則第54条(b)項を見よ)。


(4頁)

「重要な事実について真正な紛争が存在せず、申立人が法律上の問題として判決を受ける資格を有する」場合に限り、略式判決を認めることができる(連邦民事規則56条(a))。私は、申立人でない者に有利なすべての事実を考慮し、すべての合理的な推論を導くものとする(Tundo v. County of Passaic, 923 F.3d 283, 286–87 (3d Cir. 2019))。

Ⅱ.著作権の直接侵害および関連する抗弁に関して、RossではなくThomson Reutersに部分的略式判決を認める

この紛争は、つまるところはLegalEaseによるBulk Memosの問題がThomson Reutersのヘッドノートをコピーしたものなのか、それとも著作権保護されない司法見解から引用したものなのかという点にある。多くの問題をここで決定するには、Bulk Memosの問題、ヘッドノート、見解を並べて比較する必要がある。以下に例として表を記載する。この事例の問題とヘッドノートは非公開である。したがって、下表のヘッドノートと質問は実際の記録資料ではなく、Feist Publications, Inc. v. Rural Tel. Serv. Co., 499 U. S. 340, 345 (1991) に基づいて作成した事例である。


(5頁)

後ほど説明するように、私は次のように考える。

• Rossは2,243件のヘッドノートを侵害した。これらのヘッドノートに関し、残された唯一の事実上の問題は、その著作権の一部が失効しているか否かである。

• Rossの善意の侵害[innocent infringement]、著作権の濫用、マージ、ありふれた情景[scenes à faire]の抗弁はいずれも失敗している。

A. 著作権の直接侵害

Thomson Reutersは、Rossが直接的に著作権を侵害したと主張している。それを証明するには、Thomson Reutersは、(1)自身が有効な著作権を有していたこと、および (2)Rossが著作権のある著作物の要素を複製したことの両者を証明しなければならない(Feist, 499 U.S. at 361)。 第二の要素においては、(2a) Rossが実際に著作物[work]を複製したこと、および (2b) その複製物がその著作物と本質的に類似していることの両者を証明する必要がある(Dam Things from Den. v. Russ Berrie & Co., 290 F.3d 548, 561–62 (3d Cir. 2002))。


(i) 著作権の有効性

著作権の有効性は法律上の問題であり、事実上の問題ではないため、略式判決に適するものである(Silvertop Assocs. Inc. v. Kangaroo Mfg. Inc., 931 F.3d 215, 219 (3d Cir. 2019))。しかし、その基礎となる事実上の争いは依然として残っている。そのため、陪審員がこの問題を判断する必要があるかもしれないが、私が以前の略式判決意見で述べた理由とは異なる理由による。

Thomson Reutersは、有効な著作権を有していたことを証明しなければならない。著作権登録は、「その作品の最初の発行前または発行後5年以内になされた場合」、著作権の「効力の一応の証拠」となる(アメリカ著作権法410条(c))。Thomson Reutersは、Westlawの著作権保護対象コンテンツについて著作権登録を行っている(D.I. 752-1 at 4)。また、1981年から2019年までの登録を登録簿に記載している(D. I. 1-1)。 したがって、有効な編集著作権[complication copyright]を有している。


(6頁)

しかし、Thomson Reutersが全体としての編集物の侵害ではなく、個々の著作物として個別のヘッドノートの侵害という理論に基づいてこの訴訟を試みることを選択した場合でも、Thomson Reutersの登録対象期間内であり、かつパブリックドメインではないヘッドノート語が個別にいずれあるかについては、依然として事実上の争いがある(D. I. 755, 757, 761, 763を見よ)。したがって、Thomson Reutersが特定のヘッドノートの侵害による損害賠償の理論を主張するならば、この証拠上の問題は審理において取り上げられなければならない。

2023年の私の意見では、この問題は陪審員に委ねる必要があると結論付けたが、その理由は異なる。私は、ヘッドノートとKey Number Systemが十分に創作的であるかどうかを陪審が判断する必要があると判断した(694 F. Supp. 3d at 477–78)。

創作性は著作権の核心である。合衆国憲法は著作権保護を創作的な作品に限定している(Feist, 499 U. S. at 346)。したがって、Thomson Reutersが著作権登録により推定上の有効性を得たとしても、Rossはその作品が創作的ではないことを示すことでその推定に反論できる。私は以前、創作性は「そのヘッドノートが[著作権のない言語上の] 意見とどの程度重複するかによるものである」と考えていた(694 F. Supp. 3d at 478)。 そして私は、Key Number Systemの創作性は陪審員の判断に委ねられるべき問題であると説明した。なぜなら、Rossは「組織化を決定するものの多くは単純なコンピュータプログラムによって行われ、高度なトピックについては主にロースクールの講義で教えられる一般的な解釈学上[doctorinal]のトピックを追っている」と主張しているからである(同477ページ(引用符省略))。

しかし、創作性の基準は「著しく低い」ものであり、「一定の最小限度の創造性…創造的なひらめき」さえあればよい(同345頁)。したがって重要なのは、著作物が創作的であるかどうかであり、その開発にどれだけの労力が費やされたかではない(同359-360頁)。そこで、私は以前の意見の該当部分を修正する。現在では、Feist判決での創作性の最小限度の基準をヘッドノートとKey Number Systemが満たしていることについて、真正な争いはないとみる。


(7頁)

1.ヘッドノートは創作的である。 ヘッドノートとは長大な判決文から抜粋された、法律上の要点を簡潔にまとめたものである。判決文の本文は著作権で保護されるものではない(Banks  v. Manchester, 128 U.S. 244, 253–54 (1888) )。また、たとえ著作権で保護されることがあろうとも、Thomson Reutersは判決文を執筆していないため、著作権を得ることはできない。しかし、ヘッドノートは判決の一部を抽出、統合、または説明することで創造性を発揮することが可能であり、著作権で保護されるものとなりうる。これが私が考えを改めた理由である。

まず、ヘッドノートは編集物である。「事実の編集物」は、編集者が「選択と配置に関して選択を行う」際に「最小限度の創造性」があれば、創作的であるとみなされる(Feist, 499 U. S. at 348)。Thomson Reutersによるヘッドノートの選択と配置は、この低いハードルを容易にクリアしている。

それ以上に、個々のヘッドノートは個別に著作権で保護されうる著作物である。このことは、弁護士の編集上の判断を彫刻家のそれになぞらえてみるとよくわかる。判決理由と同様に、大理石の塊には著作権は認められない。しかし、彫刻家は削る部分と残す部分を選択することで彫刻を制作する。その彫刻は著作権で保護されうるものである(米国著作権法102条(a)(5)項)。同様に、ある意見から一言一句そのまま引用したヘッドノートでさえ、全体から注意深く選択された一部である。どの語句が重要であるかを特定し、その周囲の大部分を削り落とすことは、判決の法律上の重要なポイントが何であるかについての編集者の思考を表現している。その編集上の表現は、創作的であるに十分な「創造的なひらめき」を持っている(Feist, 499 U. S. at 345)。したがってすべてのヘッドノートは、法定意見をそのまま引用したものも含めて、個々の作品として創作的な価値を持っている。


(8頁)

この遅ればせながらの洞察が、私の考えの変化を説明している。2023年の私の意見では、私は、ヘッドノートのテキストと法廷意見の重複の程度を創作性の決定的要素と誤って捉えていた(694 F. Supp. 3d at 478)。私はもはやそうは考えていない。しかし、法廷意見を一言一句そのまま抜粋したヘッドノートについては、依然として略式判決を認めるわけにはいかない(理由は以下で説明する)。

2.Key Number Systemも創作的である。Key Number Systemの創作性については、真正な事実上の問題は存在しない。Westlawがこの分類法を使用して資料を整理していることを想起されたい。「ほとんどの整理・決定が単純なコンピュータプログラムによって行われ、高レベルのトピックが主にRossクールの広義で教えられる一般的な解釈学上のトピックをトレースしている」としても、それでもなお、創作性の最小限度の「ひらめき」は残っている(同477頁(引用符は省略), Feist, 499 U. S. at 345)。問題は、そのシステムが創作的であるかどうかであり、Thomson Reutersがその制作にどれほど尽力したかではない(Feist, 499 U. S. at 359–60)。したがって、その作業が単純なコンピュータプログラムによって行われたかどうかは決定的な要素ではない。また、Key Number Systemが、Rossスクール1年生でもわかるようにカテゴリー分けしているかどうかも問題ではない。創作的であるためには、編集物が「新規なもの」である必要はなく、Thomson Reutersによって「独自に作成した」ものであればよい(同345-46頁)。法学上のトピックを粒度レベルによって整理するには、論理的に考えれば多くの方法が考えられる。Thomson Reutersが特定の方法を選んだだけで十分なのである。


(9頁)

したがって、ヘッドノートとKey Number Systemが、Rossが有効性の推定を反証するのを妨げるに足りるに十分な創作性を有するかどうかについて、Thomson Reutersに略式判決を認める。

(ii)創作的要素を複製すること

次に、「創作的である作品の構成的要素の複製」があったか否かについて検討する(Feist, 499 U. S. at 361)。私は、Thomson Reutersが(a)実際に複製されたことと(b)実質的な類似性の両方を証明したかどうかを判断しなければならない(Dam Things, 290 F.3d at 561–62)。

1. いくつかの予備的事項。上記分析を適用する前に、どの部分に適用するかを決定しなければならない。Thomson Reuters が Ross の侵害を訴えるすべての項目について、Ross は略式判決を求めている。すなわち、21,787 件のヘッドノート、500 件の判決理由における編集上の決定、および West の Key Number System である(D. I. 684 at 9–11)。これらすべての項目を陪審員から取り上げるのに十分な証拠はないと私は考える。

Thomson Reutersは、ヘッドノートの2つのサブセットのみについて略式判決を求めている(D. I. 694 at 20 n.8)。この2つのバッチには、それぞれ5,367件と2,830件のヘッドノートが含まれている。

Key Number Systemについては、新たな判断に至っていない。Rossがそれを使用したかどうか、またどのように使用したかについては依然として事実上の争いがあるため、Rossが使用した可能性のある保護された要素を分析することはできない。したがって、このトピックに関するこれまでの裁定は従前のままにしておく。また、Thomson Reutersの編集上の決定を含む500件の判決理由の件[fate]についても判断しない。なぜなら、Rossがその資料にどのように、どの程度アクセスしたかについては依然として事実上の疑いがあるからである。現時点では、Thomson Reutersが特定した2,830件のヘッドノートのバッチのみを考慮するものとする。


(10頁)

私は、そのバッチに関するThomson Reutersの略式判決の主張に欠缺があるため、5,367件を審理に委ねる。Thomson Reutersは、私がRossに判決理由の逐語的またはほぼ逐語的な引用であるヘッドノートの一覧を提出するよう命じた後、Rossがこれらの5,367件を提出しなかったと指摘している(D. I. 675 at 24)。また、Thomson Reutersは、Rossがそれによってこれらのヘッドノートが保護に値することを認めたと主張している(同頁)。 おそらく、これはヘッドノートが判決理由にどれほど類似しているかという点について譲歩したものと見なせるだろう。しかし、Rossが省略したことは、より重要な問題について譲歩したことにはならない。Bulk Memosの質問がこれらのヘッドノートをコピーしたかどうか、あるいは、質問がヘッドノートに近いのか、判決理由に近いのかという問題である。したがって、この理由に基づいて5,367件のヘッドノートについてThomson Reutersに略式判決を下すのは適切ではない。(私はこのバッチを見ていないため、5,367件のヘッドノートに関するThomson Reutersの専門家の意見に対して反論する機会がなかったというRossの異議については言及する必要はない(D. I. 749)。

しかしその他の2,830件については、現時点では略式判決で対応するのが適切である。このバッチについて、なぜ、どのように対応するのかを説明する前に、まず、このバッチが実際に2,830件のヘッドノートを有しているのかどうかを整理する必要がある。[そこには]争点が2つある。まず、Rossの専門家であるBarbara Frederiksen-Crossは、このカテゴリーに3,384件のヘッドノートを挙げたが、そのうち554件が依然として有効な著作権登録の対象となっているかどうかについて、当事者間で意見が分かれている。これを解決するために、私は3,384件すべてを確認したが、2,830件(またはその他の件数)の著作権が依然として有効であるかどうかに関する陪審員の調査結果を前提として、略式判決を下す。


(11頁)

次に、RossはThomson Reutersが2,830件のヘッドノートのうち1,623件が侵害されたと主張したことは一度もないと主張しているため、私は当初、それらに関する略式判決を棄却した(694 F. Supp. 3d at 479)。Rossは、私がThomson Reutersに侵害の疑いのあるヘッドノートのリストの提出を命じた際に、Thomson Reutersがこれらの1,623件のヘッドノートを含めていなかったため、再び略式判決を棄却すべきだと主張している(D. I. 201; D. I. 324 ¶¶ 28–30; D. I. 324-23 (1,623件を特定したRossのスプレッドシート))。しかし、Thomson Reutersが1,623件のヘッドノートを欠く質問状回答を記録した同日、Rossはそれらを認めた専門家報告書を記録した(D. I. 266-1 at 431 (Frederiksen-Cross報告書); D. I. 281-3–2818 (Thomson Reutersの質問状回答))。したがって、Thomson Reutersはヘッドノートのリストを提出する前にRossの専門家報告書を分析する機会がなかった。さらに、Thomson Reutersが略式判決でこれらの1,623件のヘッドノートに言及した際、Rossはそれらに回答する機会があった。また、Rossの専門家もそれらを分析していたため、不公正な不意打ち[unfair surprise]を受ける危険はなかった。私は以前の決定を修正し、現在ではこれらの1,623件のヘッドノートを本件の公正な一部とみなしている。

この難局[morass]を整理した上で、2,830件を含む3,384件のヘッドノートについて、実際のコピーと実質的類似性の分析を行うこととする。

2. 実物のコピー。 実物のコピー[actual copying]とは、「被告が実際に、自身の著作物を制作する際にその著作物を使用した」ことを意味する(Tanksley v. Daniels, 902 F.3d 165, 173 (3d Cir. 2018))。 被告が作品を複製したという証拠を提示することで、直接的に証明できる。あるいは、被告が作品にアクセスし、それと類似する作品を制作した(「証明力のある類似性」)ことを示すことで、間接的に証明することもできる(同頁)。


(12頁)

複製行為を評価する際には、専門家の意見を考慮することも許される(Kay Berry, Inc. v. Taylor Gifts, Inc., 421 F.3d 199, 208 (3d Cir. 2005) )。Frederiksen-Crossは、このバッチのBulk Memosの質問は、ヘッドノートの文章と酷似しており、判決理由の文章とは大幅に異なるという内容の専門家報告書を提出した(D.I. 266-1 at 431, 435; D.I. 675 at 10)。 彼女の調査結果は、これらの質問は基礎となる意見[underlying opinion]の要約ではなく、Westlawのヘッドノートをコピーして作成されたことを示唆している。私は、これはRossの専門家が、2,830件が実際にコピーされたことを認めたものと見ている。

念のため、裁判所は現在、2,830件のBulk Memosの質問、ヘッドノート、判決理由がそれぞれどの程度類似しているかを一つずつ比較してきた。当事者らは、LegalEaseがWestLawにアクセスし、Bulk Memosを作成するためにWestLawを使用したことに同意している。もちろん、アクセスしただけでは証拠とはならない。しかし、Bulk Memoの質問が、その基礎となる意見というよりもむしろヘッドノートに近い場合、実際のコピーであることを示す状況証拠としては極めて有力である。質問、ヘッドノート、判決文を比較すれば、合理的な陪審員であれば異なる結論に達することはないと考える限り、証明力のある類似性が存在するかどうかを判断できる。アクセスと証明力のある類似性は、実物のコピーの証拠となる。確かに略式判決の審理では、RossがすべてのBulk Memosを使用したかどうかについて、若干の混乱があった(D. I. 769 at 30 (10:48:35), 162 (14:36:24) )。Ross側弁護人は、一部のBulk Memosは破棄されたが、Rossが最初の訓練に80%、その後の検証に20%を使用したことを2度確認したと述べた(D. I. 769 at 30 (10:48:35), 162 (14:36:24) )。したがって、弁護人の言葉を額面通りに受け取ると、RossはAIの訓練に実質として100%を使用したことになる。

2,830件のヘッドノートすべてを精査した結果、私は、実物のコピーが2,243件あることを認め、Thomson Reutersに略式判決を下す。この意見書の付録Aは、封印された状態で提出されており、特定のヘッドノートを列挙している。私は、実物のコピーが明白であり、合理的な陪審員であればそう判断せざるを得ないヘッドノートについてのみ、略式判決を下すこととする。


(13頁)

3. 実質的類似性。実質的類似性については、「後発する作品が著作物を実質的に流用しているかどうか」を評価する必要がある(Tanksley, 902 F.3d at 173)。つまり、実際に複製された作品のどの部分が創作的表現であり、著作権で保護されているかを判断することである。実質的類似性はしばしば「極めて微妙な事実上の問題」であり、それゆえに陪審に適している(同書171ページ(引用符省略))。しかし、「合理的な陪審員がそう判断しない」場合、略式判決は「適切」である(同頁(引用符は省略))。問題は、その製品の一般利用者が著作物と実質的に類似していると判断するか否かである(Dam Things, 290 F.3d at 562)。 弁護士であり裁判官でもある私自身は、Westlawのヘッドノートの一般利用者である。したがって、私はここで実質的類似性を判断する立場にある。私は慎重に判断するが、それは私が合理的な陪審員であればそう判断しないと確信するヘッドノートに限られる。

Rossは、Bulk Memosの質問はヘッドノートと実質的類似性があるだけでなく、事実上も同一でなければならないと主張している。第9巡回区は、「保護されるべき…表現の範囲は狭い」ため、「薄い」著作権に対してこのようなアプローチを取っている(Apple Comput., Inc. v. Microsoft Corp., 35 F.3d 1435, 1439, 1446 (9th Cir. 1994) )。 しかし、著作権が「薄い」か「厚い」かに関わらず、実質的類似性は常に多種多様なもの[spectrum]である。「争点たる保護されうる要素が少なければ少ないほど、より高い類似性が要求される」(4 Nimmer on Copyright § 13D.32[A])。 この概念を表すその他の用語としては、Nimmerの「超実質的類似性」や、第2巡回区の「より厳密な」通常の観察者のテストなどがある(同頁;Knitwaves, Inc. v. Lollytogs Ltd., 71 F.3d 996, 1002–03 (2d Cir. 1995) )。私は第9巡回区控訴裁判所のテストを明示的に適用するわけではないが、これらの用語のすべてに共通する概念を適用するものといする。すなわち、ある著作物が保護に値しない表現を含めば含むほど、被疑侵害物はその著作物により類似していなければならない、というものである。


(14頁)

この基準を適用し、私は、付録Aに列挙された2,243件のヘッドノートについて、Thomson Reutersに実質的類似性に基づく略式判決を認める。Bulk Memosの質問は、それらと実質的に類似していると判断する。繰り返しになるが、私が略式判決を下すのは、実質的な類似性が明白であり、合理的な陪審員がそう判断しないことはあり得ないと思われるヘッドノートのみである。実際には、これらはBulk Memo の質問の文言に非常に近い文言であり、法廷意見の文言ではないヘッドノートのみについて略式判決を下すことを意味する。残りのヘッドノートは公判とならなければならない。私は、合理的な陪審員が侵害を見いだせないと確信できるヘッドノートがないため、どのヘッドノートについてもRossに略式判決を下さない。どのヘッドノートが依然としてThomson Reutersの既存の著作権で保護されているかという事実問題については略式判決では判断せず、この問題は審理に委ねるものとする。


B. Rossの著作権侵害に対する抗弁は失敗している

Rossが主張しうる抗弁はどれも説得的でない。私はそれらすべてを棄却する。

まず、善意の侵害は適用されない。Rossは、いかなる侵害も善意であったと主張している。当事者が同意しているように、善意の侵害は責任を制限するものではなく、損害賠償があるのみである(米国著作権法 504条(c)(2))。しかし、Westlawのヘッドノートのように侵害された作品に著作権表示が付されている場合、この制限は適用されない(米国著作権法401条(d))。


(15頁)

第二に、著作権の濫用も該当しない。RossはThomson Reutersが著作権を濫用したと主張している。著作権の濫用は、著作権保有者が著作権を公益に反する目的で濫用した場合の抗弁であり、通常は「反競争的行為」が該当する(Video Pipeline, Inc. v. Buena Vista Home Ent., Inc., 342 F.3d 191, 203–06 (3d Cir. 2003) )。しかし、私はすでにRossの反トラストに基づく反訴に対する略式判決で裁定したように、RossはThomson Reutersが競争を抑制するために著作権を濫用したことを証明していない(D. I. 669)。

第三に、マージの抗弁は適切ではない。Rossは、アイデアが表現にあまりにも近すぎて、表現と一体化し、著作権で保護されえないものとなったと主張している(Educ. Testing Servs. v. Katzman, 793 F.2d 533, 539 (3d Cir. 1986) )。しかし、判決理由から法的論点を表現する方法は数多くあるため、この抗弁も却下する。

第四に、「ありふれた情景」[scenes à faire]の抗弁は適合しない。この抗弁は、歴史ロマンス小説の苦境に立つ乙女のごとく、その作品の本質から導かれるありふれた要素をカバーするものである(Atari, Inc. v. N. Am. Philips Consumer Elecs. Corp., 672 F.2d 607, 616 (7th Cir. 1982) )。しかし判決理由については、Thomson Reutersのヘッドノートに縮小すること、あるいはキーナンバーで分類するすることを求めるものは一切ない。

III. フェアユースの抗弁ではRossではなくThomson Reutersが優越する

もう1つの抗弁が残っている。私の2023年の意見では、フェアユースに関する略式判決を棄却した(D. I. 548; 694 F. Supp. 3d at 482–87)。しかし、新たな情報と理解に基づき、私はその命令およびそれに付随する意見書のフェアユースに関する部分を取り消す。フェアユースは積極的抗弁であるため、Ross社が立証責任を負う(Video Pipeline, 342 F.3d at 197)。


(16頁)

私は少なくとも4つのフェアユースの要素を考慮しなければならない。すなわち、(1)営利目的か非営利目的かを含む使用の目的と性質、(2)著作権のある著作物の性質、(3)著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性、(4)Rossの使用が著作物の価値または潜在的市場にどのような影響を与えたか(米国著作権法107(1)–(4))。 その分析においては、第1および第4の要素が最も重視される(Authors Guild v. Google, Inc., 804 F.3d 202, 220 (2d Cir. 2015) (Leval, J.))。

「フェアユースは、法律と事実の混合問題である」(Harper & Row, Publishers, Inc. v. Nation Enters., 471 U. S. 539, 560 (1985) )。しかし、「この事例では、究極の『フェアユース』の問題は主に法律上の作業に関わるものである」(Google LLC v. Oracle Am., Inc., 593 U. S. 1, 24 (2021) )。ここでの争いのない事実によって、この訴訟を明確に法的領域に位置づけている。実物のコピー[の当てはめ]を乗り越えた後の残された問題は、歴史的事実、意図、あるいは事実上の予測 [factual prediction] の問題ではない。これらは、事実に対して法律をどのように適用するかという問題である。したがって本件では、フェアユースは陪審員ではなく裁判官が判断すべき問題である。Thomson Reutersは、最も重要で、かつ全体的な2つの比較において優越している。

A. 第1の要素はThomson Reutersに有利なものとなる

まず、Rossの使用の目的および性質を検討する(米国著作権法107条(1))。主に、それが商業目的であったか、また、それが「変容的」であったかを検討する(Andy Warhol Found. for the Visual Arts, Inc. v. Goldsmith, 598 U.S. 508, 529–31 (2023) )。RossとThomson Reutersが、ヘッドノートのような著作権で保護された素材を非常に類似した目的で使用し、Rossの使用が商業的なものである場合、この要素はフェアユースに不利に働く可能性が高い(同532-33頁)。


(17頁)

1. Rossの使用は商業的である。Rossもこれを認めている(D. I. 727 at 29)。「慣習的価格を支払うことなく、著作権のある素材を搾取することで利益を得ようとしている」のである(Harper & Row, 471 U. S. at 562)。しかし、営利目的性は決定的要素ではない。この著作物の目的や性格においてどれほど異なるかとのバランスを考慮しなければならない(Warhol, 598 U. S. at 525)。

2. ロスの使用は変容的使用ではない。変容的使用性とは、その使用の目的を指す。「原著作物と二次的利用の目的が同一または極めて類似しており、二次的利用が商業的性質のものである場合、複製行為を正当化する他の理由がない限り、第1要素はフェアユースに不利に働く可能性が高い」(Warhol, 598 U. S. at 532–33)。ここでは、フェアユースに不利に働く。Rossの使用はThomson Reutersのそれとは「さらなる目的や異なる性格」を持たないため、変容ではない(同529頁)。

RossはThomson Reutersのヘッドノートを、Westlawと競合するリーガルリサーチ・ツールを作成するためのAIデータとして使用していた。RossのAIが生成AI(新たなコンテンツを自ら作成するAI)ではないことは争いがない。むしろ、利用者が法律上の質問を入力すると、Rossはすでに書かれている関連の判決理由を突き返す[spits back](D. I. 723 at 5)。このプロセスは、WestlawがヘッドノートとKey Numberを使用して、該当するヘッドノートを持つ判例のリストを返答する方法に似ている。Thomson Reutersは、主に法学研究者がWestlawをナビゲートするのを支援するために、また(当事者間で争いがあるが)Westlawの内部検索ツールを改善するために、ヘッドノートとKey Number Systemを使用している。当事者らは、RossとWestlawが競合企業であることには同意している(D. I. 752-1 at 4)。 したがって、一見するとこの要素は単純そうに見える。

しかし、Rossが主張するように、ヘッドノートはRossが消費者に示す最終製品の一部として表示されるわけではない。複製は中間段階で発生する。すなわち、Rossはヘッドノートを法律用語間の関係に関する数値データに変換し、これをAIに読み込ませるという(D. I. 727 at 22)。ゆえにこの[第1]要素ははるかに複雑なものとなる。


(18頁)

コンピュータプログラムの分析におけるフェアユースの第1要素について、中間複製が許されているというRossの主張は正当である(Google, 593 U. S. at 30–32; Sony Comput. Ent., Inc. v. Connectix Corp., 203 F.3d 596, 599, 606–07 (9th Cir. 2000) (ソニー製のゲームをパソコンでプレイできる製品を作成するためにソースコードを複製することは、ソニーのゲーム機ではなくパソコンでソニーのゲームをプレイできる製品を作成することであり、これは「変容」にあたるという判断)Sega Enters. Ltd. v. Accolade, Inc., 977 F.2d 1510, 1514–1515, 1522–23 (9th Cir. 1992) (既存のゲームシステムと互換性のあるゲームを作成するためにソースコードを複製することは、変容的であるという判断))。

しかし、これらの事例は[本件には]適切ではない。何よりもまず、これらの事例はすべてコンピュータコードの複製に関するものである。しかし、本件はそうではない(Rossはコンピュータ・プログラミングを行っていたが、Thomson Reutersから複製したとされるものはコンピュータコードではなかった)。著作権において、「コンピュータプログラムは、書籍、映画、およびその他の多くの文学作品とは異なり、ほとんど常に機能的な目的を果たすものである」(Google, 593 U. S. at 21(文中引用符省略)。したがって、これらのプログラムに対するフェアユースの考慮は、記述された言語の複製に関する事例に必ずしも該当するわけではない。

第二に、そしてこれに関連して、中間複製に関するこれらのコンピュータ・プログラミングの事例は、競合他社がイノベーションを行うために複製が必要であったという、ここでは考慮されていない要素によるものである。Google判決では、Googleはコンピュータ・プログラミング言語―具体的には、プログラマーが特定の方法でソフトウェアと対話できるようにするコードである―の一部を複製していた(同6, 29-33頁)。その複製行為は、「異なるプログラムが互いに通信するために必要」であった(同31頁)。


(19頁)

Sony判決における複製もまた必要であった。 第9巡回区控訴裁判所は、「プログラム内の保護されていない機能的要素にアクセスするために必要な中間的複製にフェアユースを適用[した]」という(同22頁)。「中間的複製は、…ソニーのソフトウェアの保護されていない要素にアクセスする目的においてはフェアユースであった」という(Sony, 203 F.3d at 602)。 同様にSega判決は「互換性に必要な機能的要件を特定する目的のみ」で生じた複製に焦点を当てた(977 F.2d at 1522)。 しかし本件では、その表現を複製することによってのみ到達できる根本的なアイデアを持つコンピュータコードは存在しない。「複製行為は利用者の新たな目的を達成するために合理的に必要であるとは言え[ない]」のである(Warhol, 598 U. S. at 532)。

私の以前の見解は、この要素を陪審員に移管しなければならないと誤って結論づけていた(694 F. Supp. 3d at 483–84)。私はその結論をSony判決とSega判決に基づいていた。それ以来、私は中間的複製の事例は、(1)コンピュータ・プログラミングの複製事例であり、(2)根本的なアイデアに到達するために複製する必要性があることに部分的に依存していることである、という理解に至った。本件はいずれもこれらには当てはまらない。このため、本件はWarhol判決が提唱したより新たな枠組により適切に当てはまるものである。したがって、私はRossの使用の目的および性質を広範に見ることにする。Rossはヘッドノートを、競合するリーガル・リサーチツールの開発を容易にするために使用した。そのため、Rossの使用は変容的なものではない。[なお、] AIの取り巻く状況は急速に変化を続けるものであるため、私の前に今日存在するのは非・生成AIのみである、ということに読者は注意されたい。

3. たとえ関連性があったとしても、悪意は[その判断の]針を動かさない。連邦最高裁は、「フェアユースの分析において悪意が果たす役割があるかどうかについて、若干の懐疑的な見解を示している」と述べた(Google, 593 U. S. at 32.)。もしそうであるならば、合理的な陪審員は、Thomson Reutersがコンテンツのライセンスを拒否した後、RossがLegalEaseの複製を誘導したと見なすかもしれない。しかし、Rossの使用は商業的であり変容的なものではないため、このありうる要素を考慮する必要はない。たとえ悪意が見出されなかったとしても、その判断は他の2つの考慮に勝るものではない。


(20頁)

B. 第2要素はRossに有利となる

次に、原著作物の性質について尋ねる(アメリカ著作権法107 条(2))。これには、「著作物に内在する創造性の程度に着目する」ことが含まれる(4 Nimmer on Copyright § 13F.06)。 より創造的な著作物はより多くの保護を受ける(同 § 13F.06[A])。

Westlawの素材には、著作権の有効性のための必要最小限度の創造性のひらめき以上のものがある。しかし、その資料はそれほど創造的なものではない。ヘッドノートには編集上の創造性と判断が必要であったとはいえ、その創造性は小説家や芸術家がゼロから作品を起草する場合の創造性には及ばない。そして、Key Number Systemは事実の編集物であるため、その創作性には限界がある。

私は以前にも同様の傾向を示した(694 F. Supp. 3d at 484-85)。しかし私は、どの程度創造性が関わるかという事実上の争いに基づいて略式判決を認めることには踏みとどまった。今、私が上記で結論づけたように、ヘッドノートに創造的要素があることは事実上争いがないが、最も創作的な著作物とは程遠い。それゆえ、第2要素はRossに有利なものとなる。ただし、この要素は「フェアユース紛争の判断において重要な役割を果たしたことはほとんどない」ことに注意されたい(Authors Guild, 804 F.3d at 220)。

C. 第3要素はRossに有利なものとなる

第三に、著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性に注目する(アメリカ著作権法107 条(3))。私はその利用が「複製行為の目的との関係において合理的なものであったか」否かを問う(Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc., 510 U. S. 569, 586 (1994) )。同裁判所は 「使用された素材の量」および「その品質と重要性」の両方を考慮する(同587頁)。この要素で勝るためには、被告たる複製者はその著作物の「核心 [heart]」を取り除いてはならない(同頁)。


(21頁)

私の以前の意見では、第3要素については判断しなかったが、Rossに有利に傾くことを示唆した。この意見は、エンドユーザーへの出力はWestのヘッドノートではなく判決理由であるため、「原文の意味をほとんど伝えていない」というRossの主張に焦点を当てたものである(649 F. Supp. 3d at 485 (Authors Guild, 804 F.3d at 223を引用))。

私はこの論証[reasoning]を支持するが、さらに一歩踏み込んで、第3要素をRossのために判断する。エンドユーザーに対するRossの出力には、Westのヘッドノートは含まれていない、という事実関係に争いはない。重要なのは、「コピーを作成する際に使用される部分の量と実質性ではなく、それによって競合する代替物となりうる公衆がアクセスできるようになるものの量と実質性」である(Authors Guild, 804 F.3d at 222(内部引用符省略))。RossはWestのヘッドノートを公衆に利用可能にしていないため、Rossは第3要素において有利となる。

Rossはその準備書面において、持ち出されたとされるヘッドノートの数は、Westlawが所有するヘッドノート全体のわずかな割合に過ぎないと強調した。[しかし、]この主張は適切ではない。フォード大統領の回顧録から300語を抜粋することが著作物の中心を抜粋したことになりうるのであれば、Westlawから数千のヘッドノートを抜粋することもそのようになりうるだろう(Campbell, 510 U. S. at 587)。複製された著作物全体の割合は、第3要素を決定するのに必要でもなければ十分でもない。しかし、Rossはいずれにせよこの要素においては有利となる。


(22頁)

D. 第4要素はThomson Reutersに有利なものとなる

第4要素は「フェアユースの唯一で最も重要な要素であることに疑いはない」(Harper & Row, 471 U. S. at 566)。この要素については、「(Rossの複製が)原著作物の市場に与えるであろう影響」を考慮する(Campbell, 510 U. S. at 590)。私は、現在の市場だけでなく「原著作物の創作者が一般的に開発する、あるいは他者に開発を許諾するような」、潜在的な二次的作品の市場も考慮しなければならない(592頁)。また、「複製行為によってもたられうる公共の利益」も考慮しなければならない(Google, 593 U. S. at 35)。原著作物の市場は明らかである。すなわち、リーガルリサーチ・プラットフォームである。そして、少なくとも1つの潜在的な二次的作品の市場もまた明らかである。すなわち、リーガルAIの訓練用データである。

私の以前の意見は、この要素を陪審員に委ねた。私は、「Rossの使用は、Westlawとは異なる目的を果たす、全く新しいリサーチ・プラットフォームを生み出す、変容的なものであるかもしれない」と考えていた(694 F. Supp. 3d at 486)。もしそれが真だとすれば、RossはWestlawの市場代替にはならないであろう。さらに、Thomson Reutersが自社データをAIツールの訓練に使用するか、あるいは自社のヘッドノートを訓練データとして販売するかにという重大かつ真正な実体的事実の問題があるかどうかも懸念していた(同頁)。そして、陪審員は「クリエイターと複製者のいずれを保護するのが公共の利益となるか」を選別すべきだと考えたのである(同頁)。

現在だからわかることではあるが、こうした懸念は説得的ではない。Rossに有利な事実をすべて考慮したとしても、Rossは市場の代替品を開発することでWestlawと競争することを意図していた(D.I. 752-1 at 4)。また、Thomson Reutersが自社のリーガルリサーチ・ツールの訓練にデータを使用したか否かは問題にはならず、AI訓練データの潜在的市場に与える影響だけで十分である。Rossは[この点について]立証責任を負う。Rossは、こうした市場が存在せず、影響を受けないことを示すのに十分な事実を示していない。


(23頁)

また、公衆に利益をもたらす可能性があるからといって、Rossが救済されるわけでもない。むろん、法律にアクセスすることには公共の利益がある。しかし、法的見解は自由に入手可能であり、「その内容[subject matter]に対する公共の利益」だけでは十分ではない(Harper & Row, 471 U. S. at 569)。公衆はThomson Reutersにって法律の解析を受ける権利はない。著作権は、優れたリーガルリサーチ・ツールのように、社会に役立つものを開発することを奨励するものである。その開発者は、それに応じて報酬を得る権利を得るのである。本件は「プログラマーを含む利用者がそれを扱うことに慣れていたにすぎない[ものであった]」APIに価値があったGoogle判決とは区別できる(593 U. S. at 38)。Thomson Reuters が作成したもので、Ross が Thomson Reuters の著作権を侵害することなく、自社で作成できなかったもの、または LegalEase に依頼して作成してもらえなかったものは存在しない。

E. 諸要素を比較してRoss のフェアユースの抗弁を棄却する

第1要素と第4要素は Thomson Reuters に有利である。第2要素と第3要素はRossに有利である。第2要素は他の要素よりも重要度が低く、第4要素はより重要なものである。これらを総合的に判断し、フェアユースに関するThomson Reutersの略式判決を認める。

*******************

付録Aのヘッドノートに対する著作権の直接侵害については、Thomson Reutersに略式判決の一部を認める。これらのヘッドノートについて、法的責任に関して唯一残された事実上の問題は、これらの著作権の一部が失効しているか、または尚早に作成された可能性があるということである。著作権の有効性に関するこの事実上の問題は、陪審員のためのものである。私はまた、善意の侵害、著作権の濫用、マージ、ありふれた情景、およびフェアユースというRossの抗弁に対するThomson Reutersの略式判決を認める。私は、著作権の直接侵害およびフェアユースに関するRossの略式判決申立を棄却する。私は、この意見と矛盾する従前の意見のすべての部分を修正する。寄与的責任、代位責任、および不法行為による契約の妨害に関する命令など、本見解で取り上げていない部分は従前のままとする。


まとめと若干のコメント

裁判所の検討スキームである、
①ヘッドノートとその検索ツールに著作物性はあるか?
②被告の行為は複製行為に該当するか?
③被告の複製行為はフェアユースに該当するか?

について、この順にコメントしたいと思います。

①ヘッドノートの著作物性(→編集物)について
たとえ判決文本文の要約文ヘッドノートであっても、必要最小限度の創造的なひらめきがあれば創作性を認めるあたり、意外に著作物性が認められるハードルは低いのだろうなと思っています。
とはいえ、長く分量の多い判決文の要点を抽出する作業は、まさに法学研究者・実務家そして法律系出版社の編集者の腕が試されるくらいに編者の創作性が出るものなのかな?と判例評釈や日本の法律系データベース(LEX-DBなど)を見ても思うところはあります。

②複製行為について
判決理由12頁では、Rossは対象となる判決文を自ら要約したわけではなく、Westlawのヘッドノートをコピーして作成されたことをRoss側専門家の提出した証拠により認めてしまったということが記述されています。
もっともRossは、25000以上のWestLawヘッドノート集Bulk MemosをLegalEaseから購入したという事実はありますが、提供時の契約にBulk Memosの内容に書かれているものに基づいて良問集・悪問集を作成する場合にはそのままの状態で複製してはならない旨に同意しているともありました(判決理由3頁)。

実際に判断されているヘッドノートは、Thomson Reuters側が侵害を主張しており、判決期日時点で著作物性が認められる2830件・著作権登録の対象となるか否かで争っている554件、併せて3384件のヘッドノートにしぼってはいますが、Bibas裁判官はそのうち2243件が複製されたと認定しています(12頁)。

そして「実質的類似性」の判断においては、「ある著作物が保護に値しない表現を含めば含むほど、被疑侵害物はその著作物により類似していなければならない」(13頁)と、Apple Comput., Inc. v. Microsoft Corp., 35 F.3d 1435, 1439, 1446 (9th Cir. 1994)の判断枠組をほぼ踏襲する形で判断し、実質的な類似性が明白であり、合理的な陪審員がそう判断しないことはあり得ないと思われる2243件のヘッドノートについて実質的類似性を認めました(14頁)。

よって、RossはThomson Reutersが著作権を有する2243件のヘッドノートを複製したと認定しました。

③被告複製行為のフェアユース該当性

(一応被告はフェアユースの抗弁以外にも、善意侵害・著作権濫用・マージ(アイデアと表現が融合しているため著作権で保護されない)・「ありふれた情景」(その著作物の本質から導かれるありふれた要素は著作権で保護されない)の抗弁もしていますがいずれも否定されています(15頁)。

さて、フェアユースの抗弁について、かの著名なフェアユースの4要件…

(1)使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)。 
(2)著作権のある著作物の性質。 
(3)著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性 
(4)著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響

については、⑴・⑷が特に優先される旨をGoogle Books判決(The Authors Guild, Inc., et al., v. Google, Inc., 804 F. 3d 202 (2d Cir. 2015))により示しています。

⑴使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)

(商業的利用については簡単に認められている一方、)被告側はSega判決やSony判決を引き合いに、あくまでヘッドノートの複製はリバースエンジニアリング的使用(中間複製)であると主張していました。
特に、「ヘッドノートを法律用語間の関係に関する数値データに変換し、これをAIに読み込ませる」過程での複製でできるものは中間複製物であるという主張は見過ごせません。

この点において、中間複製が許されるとした判例、
・Sony Comput. Ent., Inc. v. Connectix Corp., 203 F.3d 596(9th Cir. 2000)
:Playstation用ゲームをPC(Mac)でプレイできる製品を製作するためにソースコードを複製することは、PlaystationではなくパソコンでPlaystation用ゲームをプレイできる製品を作成することであり、変容的使用とした事例。ここでは、「中間的複製は、…ソニーのソフトウェアの保護されていない要素にアクセスする目的においてはフェアユースであった」とされた。

・Sega Enters. Ltd. v. Accolade, Inc., 977 F.2d(9th Cir. 1992)
:Sega社が製造販売するテレビゲームコンソール機(ジェネシス)で互換作動するAccolade社のゲームカートリッジの開発行為、すなわちジェネシスとの互換性の必要条件を探るリバース・エンジニアリング行為について、そのソースコードを複製することは、商用目的ではあるものの、直接目的は互換の機能要件の研究であることを認めた事例。

の二つを考慮して、
(1)コンピュータ・プログラミングの複製事例
(2)根源的アイデア[underlying idea]に到達するために複製する必要性があることに部分的に依存している
ことを中間複製が認められる必要条件というようにBibas裁判官は理解されています。

本件では、そもそもその表現を複製することによってのみ到達できる根源的アイデアを持つコンピュータコードの事例ではなく、さらにWarhol判決(Andy Warhol Found. for the Visual Arts, Inc. v. Goldsmith, 598 U.S. 508, 529–31(2023))を引用しつつ「複製行為は利用者の新たな目的を達成するために合理的に必要であるとは言え」ないといいます。
ゆえに、Rossは当該ヘッドノートを競合するリーガル・リサーチツールの開発を容易にするために使用したため、その使用は変容的なものではない、とし、Thomson Reutersの有利となるように解釈しています(19頁)。

ただし本段落の結びにはBibas裁判官からの注意書きとして、

Because the AI landscape is changing rapidly, I note for readers that only non-generative AI is before me today.

AIの取り巻く状況は急速に変化を続けるものであるため、いま私の前に存在するのは生成AIでないAIのみである。

判決文19頁

…と、本判決の判断枠組とあてはめが必ずしも生成AIに及ぶわけではない旨が示されていることに要注意です。

⑵著作物の性質
・Westlawの素材には、著作権の有効性のための必要最小限度の創造性のひらめき以上のものがあるが、その素材はそれほど創造的なものではない。
・ヘッドノートには編集上の創作性と判断が必要であったとはいえ、その創造性は小説家や芸術家がゼロから作品を起草する創作性には及ばない。
・Key Number Systemは事実の編集物であるため、創作性には限界あり。
…として、創作性の観点からはRossに有利なように解釈します。

ただし、Google Books判決を引用しつつ、「フェアユース紛争の判断において重要な役割を果たしたことはほとんどない」としています。

⑶著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性
・Campbell判決(Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc., 510 U. S. 569, 586 (1994))
を引用しつつ「複製行為の目的との関係において合理的なものであったか」を判断するところ、証拠上、RossはWestのヘッドノートを公衆に利用可能にしているわけではないため、Rossに有利に解釈します。

⑷著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響
Harpar&Row判決(Harper & Row, Publishers, Inc. v. Nation Enters., 471 U. S. 539, 560 (1985))
でも「フェアユースの唯一で最も重要な要素であることに疑いはない」とされるこの要件について

現在の市場だけでなく「原著作物の創作者が一般的に開発する、あるいは他者に開発を許諾するような」潜在的な二次的作品の市場も考慮しなければならない。

判決文22頁

としたうえで、
原著作物の市場リーガルリサーチ・プラットフォーム
二次的作品の市場リーガルAIの訓練用データ[Training Data]
…というように位置づけます。

そしてBibas裁判官は、
・Rossに有利な事実をすべて考慮したとしても、Rossは市場の代替品を開発することでWestlawと競争することを意図していたことが証拠上分かる。
・Thomson Reutersが自社のリーガルリサーチ・ツールの訓練にデータを使用したか否かは問題にはならず、AI訓練データの潜在的市場に与える影響だけで十分。
・Ross上記事実の立証責任を負うところ、こうした市場が存在せず、影響を受けないことを示すのに十分な事実を示していない。

判決文22頁

として、Rossの主張では第4要素を満たさないと言います。

なお、当審理において陪審員が言及していた、「クリエイターと複製者のいずれを保護するのが公共の利益となるか」を選別すべきだとしていた点を一応考慮しても、

・法律にアクセスすることには公共の利益があるが、法的見解は自由に入手可能であり、「その内容[subject matter]に対する公共の利益」だけでは十分ではない(Harper & Row, 471 U. S. at 569)。
・公衆はThomson Reutersにって法律の解析を受ける権利はない。
・著作権は、優れたリーガルリサーチ・ツールのように、社会に役立つものを開発することを奨励するものであり、その開発者はそれに応じて報酬を得る権利を得るのである。

判決文23頁

…として、本件においては、
・プログラマーを含む利用者がそれを扱うことに慣れていたにすぎないものであったAPIに価値があったGoogle判決とは別物である。
・Thomson Reuters が作成したもので、Ross がその著作権を侵害することなく、自社で作成できなかったもの、または LegalEase に依頼の上作成してもらえなかったものは存在しない。

として、なおThomson Reutersに有利に解釈しました。

よって、
第1要素(重要):Thomson Reuters
第2要素:Ross
第3要素:Ross
第4要素(最重要):Thomson Reuters

という構図になり、結果としてRossのフェアユースの抗弁は認められませんでした

なお、その他の主張である、与的責任、代位責任、および不法行為による契約の妨害に関する命令など、本見解で取り上げていない部分は据え置きとなりました(23頁)。

日本法への示唆?

本判決の判断枠組は、何かと話題になる著作権法30条の4や47条の5とも対応するところがあるかなと思います。
それこそが、両条文に存在する但書要件である
「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」
「当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」

であると思います。

ここでは、対象となった著作物の利用市場との衝突の程度が考慮されるところ、最も重要というフェアユース第4要件と通底するのかな…?と考えています。

・・・ただ、この続きは偉大なる先達に任せようと思います。これ以上はこの記事のキャパを超えてしまいますので…。

本判決における参考文献

〇高木憲章・大谷卓史「コンピュータプログラムの調査・解析に伴うプログラム著作物の物理的複製または変形の著作権法上の位置づけ―学説と裁判例からの考察―」吉備国際大学研究紀要(人文・社会学系)23号(2013年)105‐147頁

〇平嶋竜太「情報イノヴェーション促進と著作権エンフォースメントの調整法理としてのfair use-Google v. Oracle事件連邦最高裁判決を起点とした検討」パテント75号11巻(2022年)171-197頁

〇奥邨弘司「生成AIと著作権に関する米国の動き」コピライト747号(2023年)31-51頁


いいなと思ったら応援しよう!