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【小説】怪異は連鎖する 第五話


夜の学校の怪異

 
その日は、地元のお祭りが開催されるということで私の学校もそこに参加することになっていた。というのも、私の学校は動物介在活動に力を入れており、地元の保育園や介護施設に訪問して動物との触れ合いを楽しんでもらったり、動物に関するクイズを出すレクリエーションを行うなどの活動をしていたのだ。
そしてその一環として、今回のお祭りも参加することになった。

とはいえ、生徒全員が参加するわけではない。お祭りは土日の開催になるし、あくまでも自由参加という形で参加者を募っていた。
しかし…そうなれば当然、不参加が多数になる。
学校に通っている生徒の中には、家が遠く電車通学の人が多くいたため、わざわざ休みの日に電車に乗って来て、活動に参加するなど面倒くさいと考える人が大半だということだろう。

そうなると、学校の寮に住んでいる私たちに先生方から声がかかる。
地元に住んでいるのだから、協力してくれとのことだ。
私はどうせ暇だし行っても良いと思い、同じく寮生活のKちゃんに一緒に行かないかとお誘いをすると、彼女も来てくれることになった。
結局、参加者の8割は寮生活の生徒という結果であった。 
  
 
当日、学校に集まって必要な道具であったり、触れ合いに協力してくれる犬やウサギを車に積み込み、それらを乗せた軽バンと生徒を乗せたハイエースの二台で会場へと向かった。

会場へ着くと、時刻は正午を過ぎていたこともあり既にお客さんが大勢いた。
私たちも直ぐに設営に取り掛かり、呼び込みや案内係、触れ合い係とそれぞれ役割に分かれて仕事を始めた。
しかし私は、お客さんはお祭りに来ているというのに、その最中に果たして犬やウサギに触れ合いになど、来てくれるものだろうか?人気は出ないのでは?と疑心を抱いていた。
だが、やってみるとこれが意外にも好評で、子どもたちが次から次に集まって来ては喜んでくれていたし、中には自身が飼っているペットについての困り事を相談しに来てくれる人もいて、わりと盛況なのであった。

途中、交代交代に休憩をもらい先生にかき氷を奢ってもらったりして、私たちもそれなりにお祭りを満喫することができた。

そう、ここまでは楽しく過ごしていた。
  
   
夕方6時過ぎ、いくらか気温も低くなったような気がする。お祭りは夜の部が始まって、浴衣を着た若い子たちなんかもやって来て、一層客足も増えて賑わいもまた増していた。
そんな中、私たちは撤収作業に取り掛かっていた。もともと、日中のみの出店ということになっていたし、休憩を入れているとはいえ犬たちも疲れている。
このへんで御仕舞にすることになった。

来たときと同じように軽バンに道具を積み込んでいく。
すると、軽バンを運転する先生が友達のKちゃんに声をかけた。
「私たちが使ったブースのゴミ拾いとか最終チェックは皆に任せて、こっちは先に出発して学校で荷物の片付けをしないといけないから、Kちゃんも一緒に来て手伝ってくれない?」
Kちゃんはそれに承諾して助手席に乗り込み、一足先に学校へ向かった。
 
残った私たちはゴミ拾いや、私物の片付けを終わらせてハイエースに乗り込み、学校へと向かったのだった。
 
 
学校に着いたのは夜8時近かった。
日中、外で立ちっぱなしだったのに加え、接客や犬たちのケアに気を遣って、体力的にも精神的にも流石に疲れていた。
早く帰りたいな…と思いつつ車から降りて、駐車場から校舎へと歩みを進める。

校舎の前に来たときだ。次々に生徒が玄関から校舎の中へと入っていく。
私もそこに並んで順番を待つ。その間ぼんやりと玄関の様子を眺めていたのだが、今日は星が出ているだろうか?などと考えて空を見上げてみた。
天気が良かったこともあり、それなりに見えてはいたが、月が満月に近いせいであまり綺麗には見えなかった。

見上げるのを止めて、視線をそのまま下ろしてくると校舎が視界に入る。
すると、二階の窓に人影が見えた。
そこは廊下で、非常口へ誘導する案内看板によってぼんやりと照らされて、中の様子が少し見える。
そこを、黒い人影が、右から左に移動した。
サッと通過したので、走っていたのだろうか?しかし人影は頭が揺れるわけでもなく、一定の高さを保ちながら通過していった。

私以外にも見ていた人がいるかも!と思い、後ろを振り向いて友人らの様子を見たが、其々みんなお喋りに夢中で校舎を見ている人はいなかった。

きっと、二階に誰か上がっていたのだろうな。でもそれならせめて電気を点けたらいいのに。
そんなことを思いながらエントランスに入ると、椅子にKちゃんが座っていた。
下を向いて…泣いている?

声をかけると、辛うじて泣いてはいなかったものの…今にも泣き出しそうな様子で、何があったのか話し始めた。
「荷物を仕分けしていたら保冷剤や余ったジュースが箱に入っていたから、冷蔵庫に入れに行ったの。あの冷蔵庫、上の小さめな段が冷凍庫で、下の大きな段が冷蔵庫でしょう?
先に保冷剤を冷凍庫に入れて、次にジュースを冷蔵庫に入れたの。
でも、ジュースの下からまた保冷剤が出てきたから冷凍庫に入れなくちゃいけないと思って顔を上げて、目線を向けたんだよね…。
そしたら…開けっ放しだったはずの冷凍庫の扉が閉まっていたの…。」

それは確かに驚く。目の前、それも超至近距離での出来事である。
でももしかして、無意識に自分で閉めていたんじゃないの?と聞くとKちゃんは、そんなはずはない!絶対に開けたままにしていた!と言う。

Kちゃんの目の前のテーブルには保冷剤が乗っている。
「それでこれ、入れられなかったの?」
「開けられるわけないじゃん!もう扉を触りたくもないよ。冷蔵庫の扉閉めて速攻で逃げて来た!」
「それでずっとここで待ってたのね?どのくらい待ってたのさ?」
「うーん、20分くらい待ってたかも。」
そんなやり取りをしていたら、この話を既に聞いていた様子の先生が職員室から現れて、
「そんなの、ただの見間違いでしょー!早く片付けてきて頂戴よね!」
と、笑われた。
それに対して怒り始めるKちゃん。
「じゃあ、二人で行ってみようか。」
私はKちゃんと一緒に冷蔵庫へと向かった。  
 

冷蔵庫のある部屋は二階のロッカールームだ。
実習着に着替える際に利用されているのだが、ここに冷蔵庫もあり生徒は自由に使えるようになっていた。
ただし、使う際には自分の物には自分の名前を書くのが鉄則。誰かに貰われてしまわないように。

電気を点けると、いつものように部屋の奥に冷蔵庫はあった。
Kちゃんが状況を再現し始める。
「保冷剤を入れた後にこうやって、しゃがんでジュースを入れていたの。」
私は最初エントランスでKちゃんの話を聞いた際に、扉はひとりでに閉まってしまったのではないだろうか…と考えていた。
だが今、再現してもらっているところを見ていると、開かれた扉は全く動かない。

「で、保冷剤がまた出てきたから冷凍庫に入れようと思って顔を上げたら…この扉が閉まってた。途中、扉が動いてるような気配も無かったし、パタンって閉まる音すらもしなかったんだよ。」

現象としては然程、派手ではない。
派手ではないが…
ふと目を向けると空いてた扉がいつの間にか閉まっている…
それも、自分のすぐ目の前での出来事なのだから自分に置き換えて想像すると、ゾッとする。
ましてや、Kちゃんのように怖がりの人にとっては戦慄の体験かもしれない。
私は鳥肌が立つのを感じつつ、入れそこねた保冷剤を冷凍庫に入れて、扉を閉めた。
  
  
 
そして、私が見た二階の黒い人影であるが、Kちゃんが二階のロッカールームに行っていたならば、Kちゃんの可能性があると思った。
しかし、Kちゃんは私たちが到着する20分前には既に一階のエントランスにいて、私の到着を待っていた。第一、怖がりなKちゃんが電気を点けないで廊下を歩くというのは…有り得ない。
では先生か?いや、先生は職員室にいた。
それでは他の生徒か?私より先に校舎に入った生徒が二階に行ったのだろうか…しかし、それならば当然もう一度階段を使って下りてくるはずだ。
エントランスからは唯一の階段が見える。Kちゃんと話してる間、下りてくる人は誰もいなかった。
勿論、二階でも誰にも会わなかった。

身体を一定に保ったまま、速いスピードで通り過ぎた黒い影…それは一体何だったのだろうか?

 
そして実は、このロッカールームでの怪異の話はもう一つある。 

 
 
 
ロッカールームの怪異


これは、違う学科の友達から聞いた話。仮にBちゃんとしておく。

Bちゃんはその日、友達のCちゃんより実習が一足先に終わり、ロッカールームでCちゃんが来るのを待つことにしたそうだ。
ロッカールームには長机が二台と椅子が数脚あるので、そこに座って携帯を弄り時間を潰していた。

そんなことをしているうちに、段々と眠くなってしまい机に顔を突っ伏して眠ってしまったBちゃん。

すると、右の肩を'トントン'と2回叩かれた。

Cちゃんが来たのだと思い、振り向くと…そこには誰もいなかった。
 
念のため、ロッカールームから出て廊下を見渡してみる。
だが、やはり誰もいない。
Cちゃんはどうしているだろう?と気になり、実習室を見に行ってみると、そこにはまだ実習に取り組んでいるCちゃんの姿があった。
するとCちゃんは、実習室の扉の窓から覗いていたBちゃんに気が付き、近寄って来てくれた。
「ごめんね、もう少しで終わるから待っていてほしいのだけど…」
「うん、大丈夫だよ。」
「ありがとう。終わったら直ぐに行くね。どこで待ってる?」
「ロッカールームで待ってるよ。」
「わかった!」
約束をして再び実習に戻るCちゃんだったが、先ほどロッカールームに来たような様子はなかった。
 
肩を叩いたのは誰だったのだろう?
そういえば、ロッカールームの扉が開く音も聞こえなかった。
Bちゃんは怖くなり、ロッカールームで待つと言ったものの、とてもそこには居られなくてエントランスで待つことにしたという。

 
 
 
 
#創作大賞2024 #ホラー小説部門

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