【サブウェイ】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)
最初に想いを述べておくと、私が一番好きな映画です。すごく良い作品なので多くの人に観てもらいたいと思います。
結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。最初のコメントと矛盾するんですけどね。(笑)ジレンマです。私を信じて、先に映画を観て欲しいですねー。
登場人物
フレッド(クリストファーランバート):金髪の怪盗。
エレナ(イザベルアジャーニ):大富豪の若く美しい妻。
警部(ミシェルガラブリュ):地下鉄警察を統括指揮する警察官。
花売り(リシャールボーランジェ):地下街で暮らすよろず屋の男。
スケート男(ジャンユーグアングラード):地下街で暮らす窃盗常習犯。
ドラマー(ジャンレノ):地下街で暮らす無口だが陽気な男。
ベーシスト(エリックセラ):地下街で暮らすベース弾きの男。

1984年製作/102分/フランス
原題または英題:Subway
配給:角川映画
劇場公開日:1986年12月20日(日本初公開)
まずは、物語を三幕8場構成に分解します。
一幕
0)フレッドは4人のタキシード姿の男達との激しいカーチェイスの果てにサブウェイ(地下街)に身を隠す。
1)フレッドは大富豪のパーティー会場で強盗して逃げてきたのだった。エレナが書類を取り戻しに来るが、フレッドは要求金額に足りなかったので返却を拒否する。遠くから監視していたエレナの護衛が取り押さえようとするが、フレッドは迫り来る地下鉄の線路の下に滑り込んで逃げる。
2)地下街ではスケート男の被害が深刻化しており、警部はチームを強化する。フレッドはエレナに電話して愛を告白し、出会ったばかりの男からの求愛にエレナは動揺する。フレッドは地下街の奥深くへと進み、個性豊かな社会のはぐれ者たちと仲間になり、ベーシストの演奏に触発されてバンドを作ることを決意する。

二幕
3)翌朝、フレッドは花売りにタキシードを売って着替える。スケート男は地下鉄の売上金を強盗する計画を立てる。エレナは地下鉄警察に行き、フレッドの捜索を願い出る。スケート男は警察に見つかるが、なんとか逃げ切る。
4)警部はタキシードを着ていた花売りを見つけて厳しく尋問し、花売りはフレッド捜索への協力を約束させられる。閉店時間を過ぎてもエレナは地下街に迷い込んでいたが、何も知らないスケート男に助けられて隠れ家に行きフレッドと再会する。エレナは拳銃を突きつけて書類を要求するが、フレッドの咄嗟についた嘘に騙されて楽器屋を襲撃する。落胆したエレナは、花売りと話して自身の生活への疑念を強める。エレナはフレッドとスケート男とドラマーと一緒に真夜中の地下街で食事して、ダンスを踊り、工事現場を花火の代わりに眺めて過ごす。

5)翌朝、エレナは高級なジャケットを脱いで、花売りの安物の私服に着替えて、洗面所でメイクを落とす。書類を手に入れた花売りからの脅迫状が届いた大富豪が地下街に現れてエレナを糾弾する。エレナは愛の無い結婚生活への不満を吐露するが、大富豪は構わずエレナを連れ戻す。エレナが消えてフレッドは途方に暮れるが、気持ちを打ち消すようにバンドづくりの仕事に邁進する。
6)大富豪の食事会で無礼極まる態度を取り、エレナは家出する。大富豪はフレッドを殺すように部下に命令する。エレナは警部に大富豪の部下よりも先にフレッドを見つけるように懇願する。フレッドは友人のボーカルを連れてきて遂にバンドが完成する。一方で警部はスケボー男を逮捕する。フレッドは花売りと二人で地下鉄強盗を決行し、大金を得る。

三幕
7)フレッドは大金を全て使って会場をレンタルし、バンドに地下街の大ステージで演奏させる。客席では老いも若きも楽しく踊り狂う。警察がスケボー男の逮捕で脅迫事件を解決と見なしたことにエレナは強く失望し、フレッドに危機を伝えるためにライブ会場へと走る。
8)エレナとフレッドはライブ会場で再会を果たすが、そのとき大富豪の部下が撃った銃弾にフレッドが倒れる。エレナはフレッドからの愛の告白を受け入れるも遅過ぎた自分の決断に涙し、大富豪の部下を激しく罵倒する。一度意識を失ったはずのフレッドは倒れたまま、不意に目を覚まし不敵に笑う。
FIN
▼解説・感想:
●構成
三幕八場構成で分析するときに、誰を主人公とするかで二通りに書けます。
一幕
一場:状況説明
二場:目的の設定
二幕
三場:一番低い障害
四場:二番目に低い障害
五場:状況の再整備
六場:一番高い障害
三幕
七場:真のクライマックス
八場:すべての結末
フレッド
1-1:状況:地下街に逃げる
1-2:目的:バンド結成を決意する
2-3:障害:地下鉄強盗の計画を立てる
2-4:障害:エレナに拳銃で脅される
2-5:状況:エレナを失うも仕事に打ち込む
2-6:障害:地下鉄強盗を決行する
3-7:佳境:バンドに演奏させる
3-8:結末:凶弾に倒れる(そして復活?)
エレナ
1-1:状況:書類を怪盗に奪われる
1-2:目的:怪盗に愛を告白されて戸惑う
2-3:障害:怪盗の逮捕を要求する
2-4:障害:地下街で過ごして心が揺れる
2-5:状況:愛の無い結婚生活に失望する
2-6:障害:愛の無い結婚生活を拒絶する
3-7:佳境:愛すべき人のもとへと走る
3-8:結末:愛すべき人を失う
映画に最初に登場するのがフレッドですし、ベッソン監督も男性なのでフレッドを先に書きましたが、この映画の本質的な主人公はエレナだと私は思います。
怪盗が盗んだのは書類だけではなくて、もっととんでもないものを盗んでいました。それはエレナの心だったのです。
…って、もうこれ、完全に『カリオストロの城』じゃないですか!(笑)

●重要なのはお金か、それとも愛か?
個性的な舞台とキャラのせいで見えにくくなってますけど、映画を通じて描かれているのは普遍的なテーマなんですよね。
金持ち男に拾われた下町育ちの美しい娘が、自分の気持ちに正直になって走り出す。
警察と資産家の双方から追われる女と男。
そして、ラストでは儚くも愛すべき人を失ってしまう。
西部劇の要素もあり、ヌーヴェルバーグの文脈も感じさせる秀逸な脚本です。

それを彩る音楽が『人生はミステリー』と『ピープル・キル・ピープル』というハードロック曲なのが、また面白いですね。それもアメリカじゃなくてフランスだというのが良い味を出してます。
●最後のアレは何?

死んだと思ったら不意に目覚めてファンファーレのようなものを口ずさむフレッド。あれは何だったんでしょうか。
素直に読み解くと「フレッドは奇跡的に生きていた」ということになるのでしょうが、少し違う気がします。
それまでの物語とは次元が違うというか、唐突に作り手の目線(神の目線)で悲しくて滑稽な人間模様を嘲笑するような、一種のデウス・エクス・マキナの体裁を取っているように見えますね。
デウス・エクス・マキナ(deus ex machina、羅: deus ex māchinā デウス・エクス・マーキナー)とは、演出技法の一つである。古代ギリシアの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法を指した。
●若き日のスター大集結
若きフランスのスター俳優がみんなフレッシュで楽しいです。
日本人もみんな大好き広末涼子とも共演してるジャンレノ。

野生的な雰囲気が格好良いクリストファーランバート。

甘いマスクが魅力のジャンユーグアングラード。

美しすぎるイザベルアジャーニ。

ベッソン監督の第一作からずっと二人三脚で音楽を担当してるエリックセラもベーシスト役で出演しているのが面白いです。

日本フリークなシャツを着てるのも注目ポイントですね。当時フランスでは日本ブームだったのでしょうか。日本のアニメがフランスで放映されるようになったのは1980年代後半らしいので、この映画はその直前に撮影されています。エリックセラは流行に敏感だったのか。それともYMOとかを聴いていたのでしょうか。
私は、リュックベッソン監督の映画の中では本作が一番好きで、オールタイムベスト映画TOP10にも入れるほどです。ベッソンは最新の作品も好きですけど、やはり監督第2作だった本作では感性が瑞々しくて良いですね!
(了)
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