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映画『オールド』はホラーじゃないコメディだ(ツッコミどころ&エンディング考察)

この感想はネタバレを含みます。

▼まずはざっくり感想(ネタバレなし):

まるで『ジョジョの奇妙の冒険』の特殊能力バトルのような不気味な雰囲気にワクワクが止まらない予告編でしたが、期待通りの素晴らしい映画でした!安心してください。予告編詐欺はありません。

これ以上書くと大なり小なりネタバレになってしまうので、未見かつ新鮮な気持ちで鑑賞されたい方は今すぐこのnoteの「スキ」だけ押して、ページを閉じて映画館に走ってください。スクロールするときにうっかり読まないようにだけ気をつけてくださいね。画像などは貼りませんので、そこはご安心ください。笑

以下、ネタバレ注意。

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▼映像の美しさは快感に直結する:

概ね満足しました。少なくとも私がM・ナイト・シャマラン監督に求めるものは堪能できました。あの緊張感と不安、そして観賞後の開放感と安堵は病みつきになりますね。映像はどのショットも構図がバッチリ決まっていて、フォーカスと光彩に優れた職人技が発揮されていて、4K画質で上映している劇場で観て正解でした。調べてみたら撮影監督はマイク・ジオラキスで、近年のシャマラン監督作品では同じみになりつつあるようです。道理で「期待した通りの」映像だった訳です。

同監督では『スプリット』のアニャ・テイラー=ジョイやジェームズ・マカヴォイの顔も美しかったですが、本作の俳優も皆さんお顔が美しく、また基本的に水着なので特に女性陣の皆さんのお身体の美しさも前面に押し出されており、多大な眼福になりました。笑

一方で登場人物の多さから死体がよく出てくる映画でもあり、そこはなかなか精神的にキツイものがありました。演技や人形だと分かっていても見る瞬間は嫌ない気持ちになりますね。ナイフで人体を斬る場面はシチュエーションを微妙に変えて何度も繰り返され、最後のシーンを除いて非常に見ていて痛々しいものがありました。

スプラッターもハダカも脳内物質が出るという意味では快感に繋がります。私には良いストレス解消になりました。

▼なぜコメディと言えるのか:

ホラー的な演出であり、なおかつ奇怪な設定のために、日本の文化圏ではあまり認識されないと思いますが、この作品は明らかにコメディだと私は思います。アメリカ・ヨーロッパ圏のユーモアのセンスは日本のそれと異なるので分かりにくいところはありますが、シャマラン監督の過去作とは一線を画すほどブラックジョークばかりで構成されていました。

何某かの精神疾患を抱えた登場人物が異常な状況に放り込まれて、あっけなく死んでしまうのもそうですが、生き残った人々が極限状態で人間性を取り戻す(そしてすぐに死ぬ)という展開も強烈なブラックジョークになっています。主人公家族の両親であるガイとプリスカが絶命したとき私は不謹慎だと思いながらもマスクの下に隠れて大いに笑っていました。

そして首謀者たるマッドサイエンティストが何十億の人類のために一部の人々を犠牲にするという歪んだ正義感のタネ明かしも、この手のミステリーでは使い古されたお決まりの展開であり、現在の社会構造が抱える問題を皮肉ったジョークでしょう。この胡散臭いオチで成立するのは本作がコメディだからです。

いずれも日本的な勧善懲悪の思考で観ると、恐怖したり感動したり怒りを覚えたりするのが素直なリアクションでしょう。しかし西洋的な価値観を持って、一歩下がって神の視点から俯瞰的に観察すると、これらはいずれも悲しい人間の業を悪意を以って描いた後味の悪いコメディだと考えて間違いないと思います。(もしくは監督は倫理観を排除して科学的な関心だけで本作を制作したのではないかと思われます)

個人的には人間の醜さをトロピカルな島国を舞台にブラックユーモアで描くという点で日本の特撮ホラー映画『マタンゴ』と同じ匂いを感じました。同作は1963年の本多猪四郎監督の超名作ですが、シャマラン監督と彼の撮影チームが最新の映像技術でリメイクしてくれたらどんなに素晴らしいものになるだろうと期待せずにはいられませんでした。

▼ツッコミどころ解説(笑):

面白かったので、あまり大きな問題ではないのですが、本作を観ていて気になった設定のアラについて考察しみてようと思います。このような細かいアラを多く放置しているように見えるのが、私が本作をコメディだと断言する理由でもあります。

出産について

まず6歳の男の子がセックスのやり方を知っていたのに驚きました。さすがに無理がないか?そしてマカロニサラダを食べただけで十分に栄養が採れて、超あっさり産まれるところ。そりゃ一般的な出産のように何時間もかければ数年分成長してしまうので仕方ないのですが。ただいくら素早く産めたとしても母親は消耗するし服も汚れると思うのですが、そのような描写は一切なく。物語として必要なエピソードだったのは理解できるのですが、いささか都合が良すぎるのではないでしょうか。笑

本作では重要そうな場面で長回しにしつつあえてカメラを向けない演出を序盤から多用するのですが、それは途中までは「見せないで想像させることで観客の恐怖を煽る目的」でやっているのかと私は思っていたのですが、この出産シーンを観ながら「視線を変えて誤魔化すのが不自然に見えないための周到な作戦」だったのではないかとさえ思うようになりました。笑

溺れた女の死体

日が昇る前に泳ぎに行って気絶して溺死した女の死体は、なぜ腐敗が進まなかったのでしょうか。陸にあげるとすぐに白骨化してしまったのに。これは助けを求めて沖に向かったジャリンにも言えることです。

水死体は腐ると数日で体内でガスが発生して膨らみます。例の島のように急速に生体反応が起きるならガス爆発が起きてもおかしくないような気もします。しかしトレント少年にぶつかったとき女の身体は生きていたときと同様に美しいままでした。こちらも映画を魅力的に見せるための嘘でしょう。

死体はあっという間に腐る。しかしながら水死体は腐らない。これは都合が良すぎるというかダブルスタンダードになっていると思います。劇中の台詞で髪や爪は死んだ細胞だから伸びないと予想しているので、死体は腐らないのが正解だと思います。映画制作者が「ガイコツの画」を撮りたくてここだけルールをわざと逸脱したのかなと思われます。

ナイフで刺殺できるのか?

腫瘍を取り除く手術で切った直後に塞がってしまう傷の描写はなかなか興味深かったですが、直前に同じくナイフで何度も刺されたマイルドサイズ・セダンはなぜ死んでしまったのが不自然に思えます。彼には血が止まりにくいという持病があったからでしょうか。

あのビーチの中で数分間血が止まらないというのはビーチの外では数ヶ月でも血が流れ続ける可能性があることを指しています。しかしそうなると、島の外では薬を常用していたとはいえ、興奮するとすぐに鼻血が出てしまうような体質で11歳の少女でも知るようなトップミュージシャンに上り詰めるという設定には少し無理があるよな気がします。

なぜ到着の翌日にてんかんの発作が起きたのか?

被験者はリゾートに到着直後にウェルカムドリンクを飲んでいます。しかしパトリシアがてんかんの発作を起こしたのは翌日の朝食時でした。すでに治療は施されていた筈なのに何故でしょうか。

単純に彼女は到着時に飲まなかった、または分量が足りなかった、なども予想できますが、これについては別の仮説を思いついたのでもう少し後で改めて考察します。

80年代B級映画の系譜のクリーチャー

見るからに整形手術っぽい美女が、加齢と共に顔が崩れていくのは相当酷いブラックジョークだと思いましたが、もともと骨が曲がる持病があるせいで体が歪曲していくのは大変に不気味な演出でした。研究施設ではてんかんの治療が成功したと盛り上がっていましたが、彼女のカルシウム不足の病気も救ってやれよと思いました。

主人公が夜の岩場で襲われるシーンは大変に気持ち悪くて最高でしたね。暗闇で姿が見えない演出は古典的でクールですし、正気を失って身体を破壊しながら迫り来る様子は完全に「古き良き昭和時代の特撮クリーチャー」でした。アメリカでも日本でも80年代まではああいう見た目の怪物が出てくる映画が多くありました。93年の『ジュラシック・パーク』がモンスター映画の常識をCGで一変してしまった後の殆どのクリーチャーはリアル路線になってしまったので、本作のグロさ最優先のクリーチャーは観ていて痛快でした。(このポイントもまた『マタンゴ』のリメイクを期待してしまう理由でもあります)

水中の時間が長すぎる

海中の珊瑚礁から脱出を図ったトレントとマドックスでしたが、いったい何分間水中で息を止めていたのでしょうか。あの運動量は『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズをかるく凌駕していると思います。笑

劇中でも監視員が「以前に珊瑚礁から脱出を図った者も溺死した」という台詞の解決にもなっていません。彼の「見失ってから1分半見張っていた」というのも短かすぎる気がします。逃走された時のリスクに鑑みれば5分以上見るのが普通だと思うのですが。これまでに何年もこの仕事をしてきて気が緩んでいたのでしょうか。

ゴーグルなしで水中であんなに遠くまではっきり目視できるのも不自然だと思います。そもそも海に遊びにきていたのだから、持参したゴーグルをつけるくらいの描写はあっても良かったと思います。

第一発見者と施設完成までの沿革を知りたい

そもそも黒幕はこのビーチをどうやって発見したのでしょうか。普通に考えると脱出は不可能で、おそらく本人が入った訳ではないですし、同様に中に入った者から情報が外に出てくることもほぼ考えられないのでちょっと理解ができません。入ったら戻れなくなる秘密のビーチがあるという噂が先行していて、最初から誰かを生贄としてぶち込んで遠くから観察することであの場所の怪奇現象の内容を正しく理解したということなのでしょうか。

トレント少年に珊瑚礁の暗号文を渡した子供は黒幕とどういう関係なのでしょうか。実は黒幕の子供で、年が離れているように見えるのは彼が過去に一度ビーチに入ったことを示唆しているのでしょうか。

などなど疑問は尽きず、エピソードゼロでドラマシリーズが作れるくらいの物語ができそうです。

▼本作はハッピーエンドなのか?:

本作は黒幕のマッドサイエンティストの逮捕という形で一応ハッピーエンドに見えるような終わり方をしますが、本当にそうなのでしょうか。これを論じるために黒幕の設定について考えてみます。

まず黒幕は、この臨床試験って本当に秘密裏に進める必要があったのでしょうか。利益を独占できるからというのは一見正しいように見えて、一方で世界に公開した方がもっと出資してくれる国家や投資家が現れそうな気がします。ビーチで長期的な問題が検出されなかった治療薬はその後に通常の臨床試験に回すということを研究者が言っていたと思うので、これだと新薬開発までの時間短縮にもなっていないので(むしろ前行程が1つ増えただけです)私はいまいち旨味が理解できません。

もし黒幕の彼が純粋に科学の進歩と人類の健康に貢献する目的で当プロジェクトを進めているのだとしても、情報をオープンにした方が良いと思われて、いまいち腑に落ちません。結局は自分だけが所有している特別な施設で特別な実験をしていることに快感を得ているだけのキチガイだと理解するのが一番筋が通っていそうです。

とはいえ安全保障の観点も考慮すると、黒幕が自身の母国の政府(アメリカ合衆国かな?)にだけは情報を流していると考えるのが自然なのかもしれません。だとしたら最後に主人公が警察に通報したことで黒幕は一度は逮捕されましたが、それはあくまで地方警察が対応したからであって、FBIやCIAが関与した時点で黒幕は釈放されて、主人公らはあのままヘリコプターで隔離施設に連行されて監禁または殺処分されるというバッドエンドもあり得そうです。そういう話として終わらせてくれた方が個人的にはスッキリ納得できたかなあ。ただし後味は最悪でいわゆる「トラウマ映画」になっていたでしょうが。笑

以上から、描かれていないだけでこの映画はバッドエンドだと私は思います。(意地悪な笑顔)

▼食べ物が腐らない理由:

これは記事を執筆中に気になったのですが、死体がとんでもないスピードで白骨化していたのに、同じく死んだ有機物である食料がすぐに腐らなかったのが不思議でなりません。私がここで鍵になると思うのは食料を包んでいたアルミホイルです。劇中でトレントが金属で包めば加齢を抑えられると予想していましたが、この推測は正しいと思われます。食料を包んでいたアルミホイルを全部広げて体を覆うくらいの面積にできれば良かったのですが。

また逆に考えれば、スタッフは全身アルミホイルの防護服を着ていれば、加齢効果の影響を受けずにビーチで活動でき、被験者が散らかした物資を片づけることができますね。ビーチの片隅に埋めるだけというのは杜撰すぎる気もしますが。笑

▼試験薬の効果が長すぎる理由:

昨今のコロナワクチンの臨床検査でも議論になっていることですが、本来は何年もかかる経年調査を超短時間で実現できるというテーマは、本作が2021年に於いて非常に興味深いポイントだと言えるでしょう。しかし一方で前日に飲んだグラス1杯のウェルカムドリンクでどうして何年・何十年も効果が持続するのでしょうか。消化を通じて生体に作用するのでワクチンによる抗体とは別のメカニズムのはずです。

ここで思い出されるのが研究施設で机の上に大量に置かれていたシャーレで栽培されていた謎の植物です。これらは、研究施設で生成する治療薬が化学的(ケミカル)に合成されたものではなくて、生物学的(バイオロジカル)に生成されたものであることを示しています。

おそらく被験者がウェルカムドリンクによって飲まされていたのは、一種のバクテリアか微生物の類なのだと思います。それらが被験者の体内に共生することで、継続的に病気の発症を抑える物質を分泌などするのでしょう。

この仕組みだと微生物が宿主の体内に十分に行き渡るまで、ある程度の時間がかかると予想されます。先に述べたパトリシアがリゾート到着の翌日朝に発作を起こしたのも、このように効果が行き渡る前だったからだと考えれば説明がつきますね。

▼20歳のマドックスが可愛い件:

美人な上にナイスバディで本作のビジュアルを牽引していた彼女は、どこかで見たことがあると思ったら『ジョジョ・ラビット』の人でしたか。

▼精神病の心臓外科医:

本作のヴィランと呼べるでしょう病める心臓外科医。ジャン=クロード・ヴァン・ダムとホアキン・フェニックスを混ぜたような顔立ちの彼は、既視感がありましたが『ROCK YOU!』の人でしたか。

▼シャマランを探せ:

こんなことを書くのは不適切かもしれませんが、私はインド系の顔を見分けるのに慣れていないようです。東アジア人と白人・黒人なら結構見分けがつく方だと思うのですが、インド人や中央アジアはいまだに精度が上がりません。これまでの人生で出会った人数や映像作品で観た人数が少なすぎて。

監督はいつもチョイ役で出演するのがお決まりになっているので、本作でも私は意識して観ていました。主人公をビーチに運んだ(そして監視活動も行なっていた)運転手の男が監督のようにも見えたのですが、それにしては若すぎる気もして、あと出番も台詞も多かったので違うように思えて、そこだけは混乱したまま映画が終わってしまいました。もしかして『オールド』という映画のテーマを逆手にとって若返りメイクして出演していたりしましたかね?笑

Wikipediaによると監督本人ということで正解だったようです。

劇中の台詞にある通り有色人種は加齢が目立たない、ということか。。。

了。

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