【ウィキッド/ふたりの魔女】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)
結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。
登場人物
エルファバ(シンシア・エリヴォ):緑色の肌の娘。後の悪き魔女。
グリンダ(アリアナ・グランデ):大富豪のお嬢様。後の善き魔女。
フィエロ(ジョナサン・ベイリー):プレイボーイな王子。
ボック(イーサン・スレイター):マンチキン出身の芋臭い少年。
ネッサローズ(マリッサ・ボーディ):エルファバの妹。足が不自由。
モリブル先生(ミシェル・ヨー):シズ大学の魔法学部長。
オズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム):偉大なる魔法使い。
まずは、物語を三幕8場構成に分解します。
一幕
1)西の悪い魔女が死んで、歓喜するマンチキンの村。
2)グリンダは西の魔女の出生の秘密と過去に学友だった事実を明かす。

二幕
3)グリンダとエルファバはシズ大学の入学式で運命的な出会いをする。ネッサローズの付き添いで来ていたエルファバはモリブル先生に才能を見込まれて入学する。グリンダは成り行きでエルファバとのルームシェアを了承するが、性格が真逆の二人は連日激しく対立する。
4)転入生のフィエロが学園を掻き乱し、グリンダはフィエロの恋人になる。グリンダの差金でボックはネッサローズをナイトパーティーに誘い、エルファバはグリンダへの感謝から魔法レッスンへの加入をモリブル先生に進言する。パーティーでグリンダはエルファバとダンスバトルの末に和解する。
5)エルファバとグリンダは親友になり学園生活を送る。エルファバはネッサローズが生まれながらに足が不自由だった理由をグリンダに告白する。
6)オズの国で動物教師が禁止される。ライオンの子供が虐待されるのを見てエルファバは逆上し、眠りの魔法を発動し、フィエロと協力してライオンを森に逃がす。エルファバはフィエロへの恋心に気づくが自分は相応しくないと諦める。

三幕
7)エルファバはオズの魔法使いに招待される。エルファバはグリンダと二人でエメラルドシティを訪れて、そこで魔法使いの正体が普通の人間であることを知り、動物排除の陰謀への協力を要請されて、反発して逃亡する。
8)グリンダの制止を振り払い、エルファバは古文書を読んで魔女に覚醒し、西の森へと身を隠す。一方で凶報を聞いたフィエロは馬に乗ってシズ大学を飛び出し、またボックの真の想い人がグリンダだと見抜いたネッサローズは悲しみに暮れる。
TO BE CONTINUED…

原題または英題:Wicked
配給:東宝東和
劇場公開日:2025年3月7日
▼解説・感想:
●構成
一幕
一場:状況説明
二場:目的の設定
二幕
三場:一番低い障害
四場:二番目に低い障害
五場:状況の再整備
六場:一番高い障害
三幕
七場:真のクライマックス
八場:すべての結末
1-1:状況:西の悪い魔女が死んだ!
1-2:目的:出生の秘密と友達の事実
2-3:障害:出会いと対立
2-4:障害:ナイトパーティー
2-5:状況:親友になる
2-6:障害:動物虐待の本格化;叶わぬ恋
3-7:佳境:オズの正体に気づく
3-8:結末:古文書を読んで魔女として覚醒
本作は、「西の悪い魔女」のオリジンですね。

終映時間をよく確認してなくて、2時間40分あったことに驚きました。私は観覧中にも「今は何幕の何場かしら」と意識しているので、腕時計(光らない)をチラチラ見ながら「こんなにたっぷり時間をかけるんだ、すごいな」と思いながら観ていました。
●2部作
恥ずかしながら知らずに映画館に行って、冒頭のタイトルで「Wicked」の文字に少し遅れて「Part 1」と追記された時に知って、びっくりしました。(笑)
オタクじゃない人たち、ウィキッドが二部作で、そして続編は一年後に公開って知ってるか心配してる。
オタクじゃない人たち、ウィキッドが二部作で、そして続編は一年後に公開って知ってるか心配してる。
— ペギ🔔🌸 (@nica514) March 6, 2025
でもすごく面白かったから完全に許しましたよ。むしろたっぷり観れて嬉しい!…というか続編は一年後にはもう観られるのか!思ってたより早くてさらに嬉しい!だってアバターは3年待たせるじゃないですか!(本当に何も知らなかった私ww)
●感想
映像美術と音楽の素晴らしさは期待通りでした。
私は最高の画質と最高の音響を求めて埼玉のドルビーシネマで観覧しましたが、非常に満足しました。本当に良かったです。MOVIXさいたまはスクリーンサイズがスコープ規格なので劇場の設計ともバッチリあっていましたね。

物語も学園恋愛ドラマとして良かったと思います。登場人物の想いがすれ違う感じとか、チー牛には厳しいスクールカーストとか、厄介な男を遠ざけるために車椅子の女を誘うように斡旋する悪女っぷりとか、優しさから声をかけた理由として嘘をついてしまうウブさとか、本当の想いに気づいてしまい傷つく描写とか。大満足で、お腹いっぱいです。

子供ライオン相手に心を開いていた直後だったからか、半ば無意識にフィエロの頬を撫でてしまい、親友への気遣いからか、過去からのコンプレックスなのか、すぐに不相応だと諦めてしまうエルファバの歌も良かったですねー。
そして世界的なアイドル歌姫としての実力を最大限に発揮するアリアナ・グランデが素晴らしかったです。あんなに上手いのに、キュートで、コミカルで、もう反則でしょう。(笑)

ヤギの先生の声がどこかで聞いたことあるはずなのですが思い出せなくて、エンドクレジットでピーター・ディンクレイジの名前があって、アハ体験しました。

ディズニーの実写版『白雪姫』でドワーフを演じたが後からCGアニメに差し替えられた小人症のピーター・ディンクレイジが、ユニバーサルの『ウィキッド』で喋るヤギの声優になってるのには、なにか因縁のようなものを感じます。日本では公開時期も近くて、作品の雰囲気も似ていて、そこで負け馬から勝ち馬に乗り換え成功したようにさえ見えますね。
▼オズの魔法使いからの引用:
以下は、イースターエッグ的な要素についての解説と考察です。
●バケツの水

最初に登場する床に転がるバケツは、『オズの魔法使』でドロシーがカカシを消火するために水をぶちまけたものです。この時に水を浴びた魔女は溶けてしまいます。水に何か特殊なものが混ぜてあったのか、それともバケツに魔法がかかっていたのかなど詳細は不明です。

『ウィキッド』の中でも、急に雨が降り出した時に、モリブル先生が傘をさしてさりげなくエルファバを守りながら「濡れたら大変」と発言していました。かなり意味深ですねー。続編映画でモリブル先生がエルファバに「水に濡れたら溶ける呪い」みたいな魔法をかける伏線になってるのかしらと予想できます。

しかし「魔女は水を浴びたら溶ける」って、現実的に考えると、めちゃ臭そうな設定ですね。(笑)
風呂にも入れないし、下手したら顔を洗うことさえできませんよ。少し調べた限りでは魔女伝承一般ではなくて『オズの魔法使』に特有の設定らしいですが、なんというか1900年に書かれた原作小説では「加齢臭がする老人への揶揄」も含まれているのかしら、なんて思いました。
●オズの魔法使いの正体

実は普通のおじさんで魔法は使えません。1939年版『オズの魔法使』では犬がカーテンをスーッと開けると両手でハンドルをぐるぐる回すおじさんが見えてしまう、おもしろポイントです。

『ウィキッド』でも同じくジェフ・ゴールドブラムがインチキおじさんを好演していますが、この装置のデザイン(ハンドルの位置や数など)は1939年を見てるとニンマリした人が多いのではないでしょうか。

こういうデザインの良さがアカデミー賞獲得(美術賞)に繋がっているのでしょうね。
●空を飛ぶ猿

『オズの魔法使』で西の悪い魔女が家来にしている「羽が生えた猿」は『ウィキッド』にも登場します。進化したCG技術で超クールになりました。というか、VFXの印象が『猿の惑星』みたいになりました。(笑)

今年のアカデミー賞最優秀VFX賞ノミネート5本のうち『ベターマン』『猿の惑星キングダム』『ウィキッド』の3本が猿ジャンルだったんですね。いや、ウィキッドの立場になって戦略的に考えると、ここでリアルな猿を登場させればライバルである猿の惑星やベターマンよりも追加要素があるということでアカデミー賞で勝つ確率を上げられるのか?(笑)
●ケシの花

『オズの魔法使』で西の悪い魔女は魔法を使って、ケシの花の香りでドロシーを眠らせて妨害します。この魔法は人間のドロシーと動物のライオンに効果がありました。ブリキとカカシには効きませんでした。

『ウィキッド』ではエルファバがヤギの先生とライオンが虐待を受けた時に、ケシの花を使って教室中の生徒を眠らせました。
この時の魔法で眠らなかったフィエロは、同じく『オズの魔法使』でドロシーと旅するブリキかカカシのどちらかになると予想します。だから西の魔女の魔法が効かなかったんじゃないかと。

まあ、ドラマ的には「エルファバへの愛を消すためにハートを無くしてブリキになる」という線が濃厚ですかね。(これ、原作やミュージカルを知ってる方なら既知なのでしょうけど、私は未履修なので予想が楽しいです:笑)
●自転車のカゴ

『オズの魔法使』では冒頭に西の魔女のモデルになるガルチ婦人がドロシーの飼い犬トトを連れて行ってしまう場面があるのですが、ここでトトが自転車のカゴから脱走します。

カゴから飛び出すワンコが可愛いですね。
これと同じようなシーンが『ウィキッド』にもあります。

エルファバはケシの花の魔法で教室中の人を眠らせて、檻に囚われたライオンを連れて逃げます。シズ大学の門付近に止めてあった自転車を拝借しますが、この時にカゴから顔だけ出すライオンがそっくりです。
おそらく、この時に森に放ったライオンが、将来『オズの魔法使』でドロシーと一緒に旅をするライオンなのでしょうね。

●黄色いレンガの道

エメラルドシティへは黄色いレンガで道が通じていて、オズの国の各地からでも迷わず辿り着けるようになっています。

『ウィキッド』ではグリンダがレンガの色を決めていたことが描かれました。
●エメラルドシティの門番

『オズの魔法使』のエメラルドシティの門番の俳優に顔がよく似ている俳優が、『ウィキッド』のエメラルドシティにも出てきます。詳しくはここに書きませんのでご自身で確かめてください。(というか、予告に出てこなかったのでスクショが撮れませんでした:笑)
●マンチキンの村

マンチキンという名前の小人族の村です。オズの国にあります。1939年版の映画では子供や小人症の大人がマンチキンを演じていて、服装やメイクや歌い方や喋り方のクセがかなり強いです。
現代の感覚で見ると正直少し気色悪いと感じます。そもそもマンチキンって日本語訳したら「ニワトリ人間」ですからね。日本語で意訳するなら「コケコッコ族」って感じですかね。ニワトリみたいに小さくて、高い声で鳴いてそうな、変な人達というニュアンスです。このような描写は、現在では特定の人種やハンディキャップへの差別的な表現だと見なされるリスクがありますが、1939年版はそういうコンプラお構いなしで直接的に描かれています。今じゃできないでしょう。(個人の感想・意見・論評)
これが2024年に制作された映画では、どのように変更されたか?…を観るのは『ウィキッド』の一つの注目ポイントだと言えるでしょう。

容易に予想できることでしたが、『ウィキッド』のマンチキン村では、子供に似合わない衣装やメイクを着せたり、小人症の俳優を集める19世紀ごろまでの見世物小屋(フリークショー)のような演出は避けられましたね。ただし、なんとなく小柄で可愛らしく見えるように、衣装や建物のデザインは工夫されているように見えます。

まあこれも時代の変化でしょうね。コンプライアンス重視。
●東の悪しき魔女

西の魔女の妹は『オズの魔法使』で登場した時点で事故死しており、足元のみが画面に映ります。
『ウィキッド』では重要人物として登場します。姉と同様にネッサローズもまた将来的には「東の悪しき魔女」と呼ばれて、マンチキン族から恐れられていたので、彼女がどのようにして闇堕ちするのかもまた注目ポイントになるでしょう。流石に失恋のショックだけが原因じゃないと思いますが、続編を待ちたいと思います。
あ!…もしかして、ネッサローズは自分を騙したボックを怒りのまま魔法でカカシに変えてしまって、そのまま逆恨みでマンチキン族に意地悪するようになったんですかね?(これ、原作やミュージカルを知ってる方なら既知なのでしょうけど、私は未履修なので予想が楽しいです:笑)

映画を観ている間はすっかり忘れていましたが、後から冷静に考えるとこの妹ちゃんが、最終的には空から降ってきたドロシーの家に押し潰されて死んじゃうんだよなー💀と気づくと、気持ちがしんどくなりました。
『ウィキッド』
— まいるず James Miles ⚒️ (@james_miles_jp) March 7, 2025
すんばらしい!アカデミー賞2冠の衣装と美術も見所だが、肌色の見せ方などライティングも超絶技巧で良い意味で観ててクラクラした。アリアナグランデのコミカルな演技&歌唱が素晴らしい。直前に1939年版『オズの魔法使い』を復習しておいたから、イースターエッグ的な楽しさも堪能。 pic.twitter.com/9YL8TLimT8
原作を知らない私のウィキッドパート2予想:
フィエロ:恋を忘れるためにハートを捨ててブリキ男になる。
ボック:ネッサローズに恨まれて魔法で記憶を消されてカカシになる。
ライオンの子供:成長して臆病なライオンになる。
モリブル先生:エルファバに水で溶ける魔法をかける。
▼日本語字幕に難あり:
石田泰子の字幕が違和感だらけで観ててキツかったです。大意は違わないけど、ニュアンスが異なる翻訳が多くてストレスが溜まりました。歌詞は付け足しや文字数が多くてウザかったです。
石田靖子といえば私は以前にもオッペンハイマーの字幕を批評しましたが、この方はよく戸田奈津子の後継者みたいな評価をされることに改めて納得しました。しかも戸田奈津子と同じくユニバーサル配給の大作で起用が多い印象があります。事務所の付き合いなどで専属契約の後釜に入った感じなのでしょうか。
歌詞だけでも劇団四季が歌ってるバージョンの歌詞をそのまま持ってくるとか出来なかったのでしょうか。字幕版はメロディと文字数が全然あってなかったと思います。*日本語吹替ではそこらへん上手くやれてるのかもしれませんね、流石に声に出して歌うと誤魔化せないので。
例えば、最後の曲である『Defying Gravity』の一番盛り上がるところなどは酷かったです。この部分は主旋律をエルファバが歌い、それに応答するコーラスを魔女を恐れる人々が歌う形式になっていて、字幕に起こすのがとても難しいのは理解できるのですが、最後のコーラスが一単語「ダ〜〜ウン」と叫ぶところで字幕は「取り押さえろ」と書いてあって、いやいや違うだろ、という脳内ツッコミを禁じ得ませんでした。
I hope you're happy (look at her, she's wicked, get her)
あなたが幸せであることを願っています
(彼女を見ろ、邪悪なやつめ、捕まえろ)
Bring me down! (No one mourns the wicked, so we've got to bring her)
私を倒せ!(誰も邪悪な者を悼まない、だから彼女を倒さなければ)
Oh! (Down)
ああ!(倒せ)
個人のnoteですが、上記の記事では「(倒せ)」と書いてあります。そう、この文字数なら「ダウン」という音にもハマります。しかも、こうやって括弧でくくるだけでずっと解りやすくなるじゃないですか、なぜ石田泰子はそれすらしないのか。
更に文字数を考慮するなら、私だったらこういう字幕にするかな:
I hope you're happy (look at her, she's wicked, get her)
あなたの幸せを願う(見ろ 悪い魔女だ 捕まえろ)
Bring me down! (No one mourns the wicked, so we've got to bring her)
私を倒せ!(魔女を倒せ)
Oh! (Down)
ああ!(倒せ)
(了)
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!
