【ビーキーパー】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)
結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。
まあ結末を知ってても、何度でも楽しめるタイプの映画のような気もしますけど、サプライズ的な展開も複数あるので。
登場人物
アダム(ジェイソン・ステイサム):養蜂家。秘密組織の元工作員。
ヴェローナ(エミー・レイヴァー=ランプマン):FBI捜査官。
マット(ボビー・ナデリ):FBI捜査官。ヴェローナの相棒。
デレク(ジョシュ・ハッチャーソン):詐欺組織を統括する若き資産家。
ウォレス(ジェレミー・アイアンズ):元CIA長官。デレクの警備主任。
エロイーズ(フィリシア・ラシャド):元教師で慈善団体の理事の老婦人。
まずは、物語を三幕8場構成に分解します。
一幕
1)過去に何やら訳がありそうな陰気な男アダムは、田舎の小さな農場で静かに養蜂を営んでいた。ある日、恩人であるエロイーズがフィッシング詐欺の被害に遭って、200万ドルの財団資産を全て奪われて、ピストル自殺してしまう。
2)エロイーズの娘ヴェローナからフィッシング詐欺の被害と司法では裁けない現状を聞いたアダムは、過去に所属していた秘密組織「ビーキーパー」の力を借りて、エロイーズに電話したのはUDG社のコールセンターだと特定し、フォードトラックで乗りつけてガソリンを撒いてビルごと爆破する。

二幕
3)UDGコールセンターの支配人はデレクに命令されてアダムへの報復を図るが、逆にアダムは納屋で待ち伏せして撃退する。ヴェローナとマットは焼け落ちたエロイーズの納屋を見てコールセンターを爆破したのはアダムだと勘づく。アダムは支配人の電話でデレクを恫喝しつつ支配人をフォードトラックに縛り付けて海に捨てる。
4)デレクの報告内容で元ビーキーパーによる手口だと悟ったウォレスは、現CIA長官に極秘で連絡して現役ビーキーパーをアダム暗殺に派遣させるが、アダムはガソリンスタンドでこれも撃退する。

5)CIAが関与を中止したのでウォレスは自前の傭兵を雇う。アダムは現役ビーキーパーの隠れ家でCIAのシステムを使って、コールセンターの本拠地がボストンのNSU社だと特定する。ヴェローナはアダムの情報を提供してFBI副長官からSWATチームの指揮権限を付与される。
6)アダムはNSU社に侵入して、支配人にデレクが元締めだと白状させる。実はデレクの母は米国大統領だがアダムは容赦しない。傭兵チームとSWATチームが完全包囲するもアダムは脱出する。ウォレスとデレクは大統領の私邸に避難して籠城する。同じくデレクが詐欺グループの元締めでCIAの特殊詐欺検出システムを悪用していたらしいと掴んだヴェローナも、FBI副長官に報告して私邸に向かう。

三幕
7)アダムは大統領の私邸に潜入し、そこでウォレスの傭兵軍団やシークレットサービスと死闘を繰り広げる…というか、正確にはアダムが一方的に敵を殲滅して屋敷の奥へと進む。大統領はデレクの詐欺を知って国民に正直に語り審判を仰ぐことを覚悟するが、諦めがつかないデレクはピストルで大統領を人質に取って立て篭もる。
8)アダムは一瞬の隙をついてデレクの頭部を銃で撃ち抜き、屋外へ逃亡する。ヴェローナはアダムを見逃す。アダムは砂浜に隠していた潜水道具を装備して海へと逃げる。
FIN

原題または英題:The Beekeeper
配給:クロックワークス
劇場公開日:2025年1月3日
▼解説・感想:
●構成
1-1:恩人が詐欺に遭う
1-2:コールセンター爆破
2-3:黒幕に宣戦布告
2-4:後任の養蜂家と対決
2-5:状況の再整備
2-6:黒幕を特定
3-7:黒幕を追い詰める
3-8:黒幕を殺して逃亡
一幕
一場:状況説明
二場:目的の設定
二幕
三場:一番低い障害
四場:二番目に低い障害
五場:状況の再整備
六場:一番高い障害
三幕
七場:真のクライマックス
八場:すべての結末
基本的に教科書通りの構成でした。
2-4で後任の養蜂家が現れる展開が独特で面白いですね。

●総括
めちゃめちゃ面白かったです!20年前に「たまたま劇場でやってた」から予習ゼロで観たトランスポーター1から受けた「新しい衝撃」みたいなものを、本作からは強く感じました。
デヴィッドエアー監督は最高だ!
早くエアーカット公開実現してくれー!
(*いつもと同じ結論でスミマセン:笑)
割と冗談抜きでビーキーパーは令和版コマンドーって感じがします。主人公の強さと、残酷とユーモアの混ぜ具合と、脚本のスケールのデカさと、気の利いた台詞と、意外と一般市民に歩み寄ってくれる距離感が、よく似ています。

そして、その大前提としてシネマトグラフィー(撮影)が非常に良かったです。まあ、これはエアー監督の全ての作品に言えることですけども。

●美しい映像
ビーキーパーは画面構図と色彩が美しく、スクリーンで映画を観る醍醐味を味わえる作品でした。
本作はMGM制作ですから、割と早めにアマゾンプライムビデオで配信されることが予想できます。昨年公開の『レッド・ワン』と同じパターンですね。
でも、だからこそ、ドルビーシネマのようなPLFで上映してくれるのはありがたいです。映画館に馳せ参じる意義がアップするので。

米国ではIMAX上映もあったのですが、日本では実現できなかったようですね。でも人気フランチャイズでもない作品でドルシネがあっただけで快挙だと思います。
ステイサムの新作『養蜂家』(原題The Beekeeper)米国ではIMAXとDolbyCinemaの上映あり。
— まいるず James Miles ⚒️ (@james_miles_jp) January 10, 2024
YouTubeでトレイラーやクリップを観る限り、HDR映えを意識した色使いになっているようなので、ぜひ日本でもPLFで上映していただきたいところ! pic.twitter.com/HIAH76jCND
一年前の私はこんなツイートをしていた。教えてあげたいですね、ビーキーパーは日本でもドルビーシネマは実現するよって。(笑)
映画館の数を考えると、IMAXが無いのは残念でしたね。たぶん劇場的にはスピルバーグで洋画枠を使い切った感じかな。最近リバイバル上映の客入りがかなり良いですから。同じタイミングでインドの大型SF映画もあるし、あと日本映画からもグランメz…おっと、ここらへんで止めておくか。(笑)

●物語と脚本の面白さ
最初にアダムの恩人の老婦人がフィッシング詐欺にかかるシーンが長尺なのが個性的で面白いです。窓からアダムの姿は見えているのに、どんどん悪いヤツに騙されていく老婦人を眺めているのは、結構心が痛む展開でした。実際の詐欺被害の現場とも重なるのではないでしょうか。すぐそばに居たのに、何も出来なかった悔しさとか。この描写があるので、その直後にアダムが問答無用でコールセンターを爆破するのが最高の快感になります。

この詐欺グループについては、アダムが手を出す前に、FBI捜査官が特定までしてるけど尻尾を出さないから弁護士に「違法性は無い」と言われてしまって、司法では裁けないと説明しているのも巧いです。こうなると、自力でお仕置きするしかありませんからね。(笑)
この問いは第二幕の最後に、アダムに殺されなかったマットとヴェローナの会話にも現れていました。本作の根底にある最大のテーマであり、それが主人公のキャラクターの存在意義に完全に反映された見事な脚本でした。
Anisette: You don't have to do this, you know? Why not let Clay do his thing? Your mom is dead because of these people.
Agent Verona Parker: Wherever it's headed... I swore an oath. I can't stand by and watch it happen.
Anisette: Even if he's right?
Agent Verona Parker: [looking unsure] Even if he's right.
「そんなことしなくてもいいんだよ。クレイにやらせたらどうだ?この人たちのせいで君のお母さんは死んだんだ」
「それがどこへ向かおうとも...私は誓った。ただ傍観することはできない」
「たとえ彼が正しくても?」
「たとえ彼が正しくても」
映画が進むにつれて、FBIとCIAを巻き込んでどんどん話が大きくなり、後任のビーキーパーとのタイマン勝負という異色の一手を挟みつつ、最終的には大統領本人まで行くスケールの大きさに圧倒されました。
最後の最後に大統領本人は遵法精神に従い正義を貫こうとする描写も素晴らしかったです。アホな息子のワガママよりも、合衆国の全国民の利益と正義を優先するという、軍人出身のエアー監督らしい理想の大統領像だったと思います。

●魅力的な台詞の数々
本作を語る上で見逃せないのが、キレッキレの台詞でしょう。
Lazarus: To bee or not to bee? Isn't that the bloody question?
Adam Clay: I think I'll take to bee.
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だろう?」
「俺は生きる(ビー)を選ぶね」
これは一番ニンマリしてしまった名台詞です。見るからにラスボス感のあるヴィランが、シェイクスピアで遊ぶな。(笑)
その後、顔を撃たれたのに、普通に走り回ってて、それもめちゃ面白かったですけどね。タフすぎるし、運が良すぎるやろ。(笑)
Adam Clay: I know you're the middleman. Who's above you?
Rico Anzalone: No -- they'll kill me.
Adam Clay: I'll torture you, then kill you.
「お前が中間管理職なのはわかってる。ボスは誰だ?」
「言えない。殺される」
「俺はお前を拷問する。その後で、殺すぞ」
これもかなり笑いました。サイコパスすぎて爆笑です。周囲に人が居ない席を選んだので、そこそこ豪快に笑いました。劇場がホッチキスの男の悲鳴で大音量だったので、他のお客さんには聞こえてないはずです。(笑)
Lewis: Buddy I'm counting to three.
Adam Clay: One. Two. Three. There, I did it for you.
「三つ数えるぞ!(それまでに立ち去れ)」
「ワン、ツー、スリー。ほれ、俺が代わりに数えたったぞ」
こええええ。(笑)
このシーンは公式予告編でも観られますけど、本編では編集されて別のカメラアングルになってましたね。本編の方がそっけなくて怖さマシマシだったと思います。

Adam Clay: [Spoken twice, to the call-centre staff] Repeat after me, "I will never steal from the weak and the vulnerable again".
「俺の言う通りに復唱しろ。もう私たちは弱者から盗みません、セイ!」
英会話レッスン以外の場所で「リピートアフターミー」を聞くことがあるなんて、思いもよらなかったよ。(笑)

Adam Clay: I was bringing her a jar of honey.
Agent Verona Parker: Who are you - Winnie the Pooh?
「エロイーズには瓶詰めにしたハチミツを運んでる」
「あんた誰よ、くまのプーさん?」
マジでこのシーンだけステイサムの顔が熊に見えました。(笑)
コマンドーにおける「筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ」に匹敵するパワーフレーズだと思います。
Derek Danforth: You're scared.
Wallace Westwyld: Dead right I'm scared. Terrified. So should you be.
Derek Danforth: Wallace, just tell me what the fuck this guy is.
Wallace Westwyld: He's probably the last pair of eyes that you're going to sneer at.
「お前、ビビってるだろw」
「全くその通りビビってる。怯えている。君もそうするべきだ」
「ウォレス、その男は何者なのかだけでいいから教えてくれよ」
「彼はおそらく、君があざける最後の二つの目になるだろう」
つまり、一度その男と顔を合わせたら最後、お前の命は無いぞ。
こええええ。これをジェレミーアイアンズが言うのが最高です。
ダイハード3での凶悪かつエレガントな演技を思い出しましたよ。

Wallace Westwyld: The honeybee has always had a special relationship with humanity. A sacred relationship. Why? No bees, no agriculture. No agriculture, no civilization. Our nation is not unlike a beehive, with its complex systems of workers, caretakers, even royalty. If any of the beehive's complex mechanisms are compromised, the hive collapses.
「ミツバチは人類と常に特別な関係を築いてきた。神聖な関係を。なぜか?ミツバチがいなければ農業はなく、農業がなければ文明もなかった。私たちの国は、労働者、世話人、さらには王族の複雑なシステムを持つミツバチの巣と似ている。もしミツバチの複雑なメカニズムのどこかで綻びが生じれば、巣は崩壊する」
こういう単なるこじつけを絵面の格好良さで押し切る演出、大好物です。(笑)

President Danforth: You're a good looking kid. You really are. You know that?
Derek Danforth: [suspiciously] What does that mean?
President Danforth: It means that God doesn't give with both hands.
「あなたは可愛い子。本当に。この意味がわかる?」
「わからないよ、ママ」
「天は二物を与えず、ってことよ」
これは深いですね。ジェスチャー的には頭にキスしながらなのでポジティブに見えますが、これ「お前はなんて出来の悪い子だ」と呆れてますからね。大統領になるほどの人物の息子がどうしてここまでバカに育つんですかね。
Agent Verona Parker: I believe you. But there are laws for that.
Adam Clay: There are laws for that. Until they fail. Then they've got me.
「あなたのことを信じてる。でも世の中には司法がある」
「司法がある、ね。だが役に立たない時もある。そしたら俺の出番だ」
Adam Clay: You decide who you work for. For the law ... or for justice.
「何のために働くか、自分で決めろ。司法か、それとも正義か」
まあ、ベタだけど、この映画のキラーフレーズは上記2つでしょう。
面白さではやや劣りますけど、映画の主題ですから。
最強のダークヒーロー爆誕ということで、大いに楽しめた映画でした。
今回は字幕版にしましたが、吹替版でもぜひ観てみたくなりました。珍しく劇場公開してるし、ゲスト枠でゆりやんレトリィバァも参加してるし、これは期待できそうですね!
(了)
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