【フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)
結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。
登場人物
ケリー・ジョーンズ(スカーレット・ヨハンソン):敏腕の広報担当者。
コール・デイビス(チャニング・テイタム):航空管制官の主任。
モー・バーカス(ウディ・ハレルソン):政府に勤める謎の男。
まずは、物語を三幕8場構成に分解します。
一幕
1)1968年、NASAのアポロ計画は、爆発事故とベトナム戦争の影響で予算縮小されて存続の危機だった。ケネディが宣言したタイムリミットも迫る。そんな折にモー・バーカスは政府の特命で、過去に犯罪歴を抱えているが複数の偽名を使って大企業で活躍する広報担当のケリー・ジョーンズをNASAにスカウトする。
2) ケリーは画期的な企業タイアップで資金と国民の関心を集めることに成功し、やがてソ連にはできなかった「宇宙からのテレビ中継」という未曾有の計画を提案する。管制室主任のコール・デイビスは反対するが、モーとニクソン大統領の後ろ盾を受けてプロジェクトは開始する。
二幕
3)政府で宇宙開発の予算を確保するために、ケリーとコールは議員の説得に奔走する。一方で、モーはアポロからのライブ中継が失敗した時に備えて、バックアップ用に極秘でフェイク画像を撮影することを要求する。神話のアポロの双子の姉の名前にちなんでアルテミス計画と名付けられる。
4)コールがメディア対応で失敗するなどトラブルもあったが、なんとか賛成多数の議員票の獲得に成功する。
5)ケリーは罪悪感に耐えられなくなり、発射の前夜に夜逃げを図る。モーは止めなかったが、アポロの成功失敗を問わずテレビ放送は全てアルテミスを使うと告げられてケリーはNASAに戻り、コールに計画を打ち明けて事態の打開を図る。
6)ケリーは若手職員と協力して部品を調達するなどして、モーが細工させたハンディカメラを修理して、ロケット打ち上げに間に合わせる。
三幕
7)カメラの修理を知らないモーを出し抜いて、ケリー達は実際のライブ映像を全国放送することに成功する。
8)スタジオに黒猫が乱入したことでモーにバレるが、命令に背いてまで正しいことをしたケリーをモーは「アメリカの真のヒーロー」だと褒める。モーはケリーの過去の犯罪歴を政府の記録から抹消することを約束する。
FIN

原題または英題:Fly Me to the Moon
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
劇場公開日:2024年7月19日
▼解説・感想:
●構成
1-1:困るNASA、雇われる訳あり女ケリー。
1-2:宇宙から放送したるで!
2-3:一応予備でフェイク映像も準備して。
2-4:議員票が集まるかピンチ!
2-5:逃げ出そうとしたけど、私が直さなきゃ。
2-6:テレビカメラ修理ミッション!
3-7:モーを騙すためだけに撮影。
3-8:逆に感謝されて、晴れて自由の身へ。
一幕
一場:状況説明
二場:目的の設定
二幕
三場:一番低い障害
四場:二番目に低い障害
五場:状況の再整備
六場:一番高い障害
三幕
七場:真のクライマックス
八場:すべての結末
物語の基本は
①月面撮影ミッション
②①のフェイク映像作成
③②をやってる振りして実際は①を放送
という三層構造になっていて、観客にメタ認知をさせる面白さがあります。

ここに加えて、クセが強すぎる無名監督とか、ケリーとコールの恋愛要素を上乗せして、磐石のラブロマンス・コメディ映画として完成しています。制作チームはうまく2時間にパッケージしましたね。

●感想
都市伝説として有名な月面着陸捏造説(アポロ計画陰謀論)をうまく取り入れてますね。
アポロ計画陰謀論(アポロけいかくいんぼうろん)とは、アメリカ合衆国が航空宇宙局(NASA)を中心として1960年代から1970年代に行ったアポロ計画(人類の月面着陸計画)に関して、NASAが公式に行った発表とは異なる真実があったとする説のことである。
フィクションやジョークの類ではなく、事実としてアポロ計画捏造説を主張した最初の出版物はビル・ケイシングが1974年に出版した “We Never Went to the Moon”(我々は月に行ってなどいない)であるとされている。自費出版系の出版社から発行されたこの本は、著者の主張によれば3万部が売れたという。
キリスト教根本主義の一派である地球平面協会(地球は球ではなく聖書にあるとおり平らであると主張する団体)は、月着陸が捏造だとNASAを弾劾した最初の組織であり、1972年から2001年の協会代表だったチャールズ・ジョンソンは「SF作家のアーサー・C・クラークが脚本を書いて、ハリウッドのスタッフがアリゾナで撮影した」と主張していた。
テレビ朝日は、2003年の大みそかに放送した『ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?』の中で、フランスのテレビ局が制作した『Opération Lune』という番組を紹介した。その内容は、アメリカ合衆国国防長官ドナルド・ラムズフェルドを始めとするアメリカ高官が、アポロ計画を捏造するために『2001年宇宙の旅』を監督したスタンリー・キューブリックに月面の映像作成を依頼したと告白するというものであったが、この番組はアメリカの高官の発言の合間に役者の演じる架空の人物(名前は映画の登場人物名や俳優の本名をもじったもの)の発言を挟むことで、高官が実際には言っていないことを言っているかのように錯覚させる「フェイク・ドキュメンタリー」と呼ばれるフィクション作品である。『ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?』司会の江口ともみも、『Opération Lune』の紹介が終わったあとで「この番組はエイプリルフール用に作られた冗談番組です」と明言している。日本の陰謀論者の中には、自分の著作やコラムでこの番組を論拠とし、中華人民共和国が予定する嫦娥計画が人類初の月面着陸となるであろう、と主張する者もいる。
引用した通り、1969年の月面着陸の映像はキューブリックが撮影したという説の人気は根強いですが、本作もケリーが初めてロケットを見る時にBGMが『ツァストラはかく語りき』のメロディを拝借してたり、監督の選出についてケリーが「やっぱりキューブリックに依頼するべきだった」と愚痴をこぼしていたり、カメラマンの風貌がどことなくキューブリックに似ていたり、などなど随所に『2001年宇宙の旅』へのオマージュがあって面白かったです。

(了)
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!
