日本人の物語00651【鎌倉中期】御成敗式目の内容
この際、御成敗式目にはどんな規定があるのか、本文も見ていきましょう。
例えば第8条は土地の時効取得に関する規定です。
【第8条】
「御家人が20年間支配した土地は、元の領主に返す必要はない。ただし、実際には支配していないのに支配していたと偽った者にはこの規定は適用されない」
現代の民法第162条を見ますと、「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する」とあり、ほとんど同じ内容であることが分かります。御成敗式目は現代にも生きているのですね。
第19条と第22条は、相続トラブルに対応する条文です。
【第19条】
「主人を敬いよく働いたために、財産やその譲り状を与えられた家来が、主人死亡の後にその恩を忘れて財産を奪おうとするなど子供等と争った場合、その財産を取りあげて主人の子供等に全てを与えることとする」
【第22条】
「家のためによく働いたにもかかわらず、後妻やその子らに追い出されてしまった者には、相続の際に嫡子相続分の五分の一を分け与えること。ただし、離縁前に多少なりともその子に財産が分けられていた場合はその分を差し引いても良い。しかし、その子が怠け者であったり不孝者のときはその必要はない」
道徳的・常識的な判断を条文に落とし込んだものと評価できるでしょう。全ての裁判官に同じ判断をさせるために条文化したのでしょうが、このようなことをわざわざ法令で定めずとも、普通の裁判官が考えれば同じ結論にたどり着きそうなものですが……。
第29条と第30条は、裁判制度に関する条文です。
【第29条】
「裁判を有利に進めるために担当の裁判官をさしおいて他の裁判官に頼むことが分かった場合は、調査の間しばらく裁判を休廷する。そのようなことがあってはならないからである。係の者はそのような二重の取り次ぎをしてはならない。また、裁判が長引き20日以上かかった場合は問注所において苦情を述べることができる」
【第30条】
「有力者を知るものは得をし、そうでないものは損をするという不公平な裁判は問注所そのものが信頼を失ってしまうので禁止する。それぞれの言い分は裁判中に述べること」
こうした事態が頻発していたので、禁止したのでしょう。
条文を見ていると、鎌倉時代にどのようなトラブルが起きていて、どのような裁判がなされていたのかがよく分かります。これを初めて法制化した泰時は、やはり偉大な為政者であったと思います。
