日本人の物語00118【人代前期】オトタチバナヒメの犠牲
相模を平定した後、ヤマトタケルはさらに東進して、走水海(はしりみずのうみ)を渡ろうとしました。現在の浦賀水道のことです。三浦半島から房総半島に渡ろうとしたのですね。
ところが、海峡の神がヤマトタケルを妨害しようとして船をぐるぐると回してしまい、渡ることができません。
ここで、ヤマトタケルの妃であるオトタチバナヒメ(弟橘媛)が
「私が生贄となって海に飛び込みます」
と言って飛び込んでしまいました。そうすると荒波がおさまり、ヤマトタケルは房総半島に渡ることができたのです。
ここで、「あれ? ヤマトタケルはミヤズヒメと婚約したんじゃなかったっけ?」と思いますよね。どうやらそれとは別に奥さんがいたようです。
オトタチバナヒメはこれが初出で、妃としてのエピソードは何もありません。初出でいきなり生贄になって死にます。もう少しキャラを立ててから死なせた方が読者も感動すると思うのですが。
7日後、オトタチバナヒメの櫛が打ち上げられ、ヤマトタケルはその櫛を墓におさめました。現在、神奈川県横須賀市にはオトタチバナヒメを祀る走水神社があります。
房総半島に渡ったヤマトタケルは、さらに東国を次々と平定して帰途につきました。
この「次々と平定」というあたりを詳しく書けよと思いますが、古事記には具体的なエピソードは何もありません。
帰り道、尾張国に寄ったヤマトタケルは、約束通りミヤズヒメと結婚します。
このときミヤズヒメは生理中だったのに2人は交わった、という要らん情報が書かれています。いや、要らん情報に見えますが、これこそが後にヤマトタケルに災いをもたらすという伏線なのでしょう。
ヤマトタケルは次に伊吹山の神を討つために出かけます。伊吹山は滋賀県米原市にある山で、近畿地方の最高峰です。スキー場で有名ですね。
出かけるに当たって、ヤマトタケルは
「剣を使わずに素手で殺そう」
と言い、草薙の剣をミヤズヒメのもとに置いていってしまいます。このために草薙の剣は現在、愛知県名古屋市の熱田神宮に安置されているわけですね。
剣を置いて行ったこともまた、災いの伏線でしょうね。
ヤマトタケルが伊吹山を登っていると、麓の方で白い猪が現れました。ヤマトタケルは
「山の神の使いだろう。こいつは後で殺せばいい」
と言って無視して登ろうとしました。しかし、この白い猪こそが伊吹山の神だったのです。
山の神は怒って雹を降らせました。ヤマトタケルはこの雹に当たって気絶してしまいます。
