日本人の物語01395【アイヌ神話】アイヌラックルの冒険
「出てきた地名を現在の市町村に直して括弧書きで記す」ということをずっとやっているのですが、アイヌ神話に登場する地名は現在のどこに当たるのか分からないケースが多く、残念です。
アイヌラックルは成長し、妻を娶る年齢になりました。育ての母である日の女神は、アイヌラックルの妻にふさわしい者として、チワシベツ(北海道登別市鷲別か)の女神を選びました。
ところがこれを妬んだシノツベツ(場所不明)の魔女がチワシベツの女神を誘拐し、六重の木の柵、六重の金の柵、六重の岩の柵、六重の木の箱、六重の金の箱、六重の岩の箱を重ね、その中にチワシベツの女神を閉じ込めてしまいます。
日の女神はアイヌラックルに婚約者を救い出すよう指示しましたが、その際
「敵の魔女はいくら斬られても傷が治ってしまう。一方お前は6回までは傷が治るがその後は治らない。7回以上斬られてはならぬぞ」
と忠告するとともに、かつて父が使ったという黄金作りの鎧と焦げた太刀・兜を与えて送り出します。
アイヌラックルはシノツベツに赴き、風に身を変えて幾重にもなった柵の中に忍び込み、見事チワシベツの女神を救い出しましたが、追ってきたシノツベツの魔女と斬り合いになって6回傷を受けてしまいます。
7回目の斬り合いとなりました。アイヌラックルは下にかがんで敵の刃を避けた後、魔女の両足をつかんで引き裂き、片方の足を
「山の妖精よ。この足を与えるから、決して手放してはならぬぞ」
と言って山に投げ、もう片方の足を
「海の妖精よ。この足を与えるから、決して手放してはならぬぞ」
と言って海に投げました。これにより、魔女は生き返ることができなくなり、永久に封印されました。
このエピソードはあくまで一例であり、アイヌラックルが姫を救う話には多くのバリエーションがあります。他にも人間を襲う大鹿を退治する話もありますが、それも姫と結婚するための試練として描かれます。多くのエピソードに共通する特徴は、
「妻を得るためには敵と戦わねばならない」
という点です。
ユーカラは長年に渡って口伝のみで伝わっていたためか、地域ごとの差は実に大きく、主人公の英雄の名前すら「アイヌラックル」「オイナ」「オイナカムイ」「オキクルミ」などがあり一貫していません。明治時代に国語学者の金田一京助(きんだいちきょうすけ:1882~1971)がユーカラの採集活動を始め、徐々にその全体像が明らかになっていったのです。
金田一京助といえば、私が小学生の頃使っていた『新明解国語辞典』の初代監修者でした。京助氏・春彦氏・秀穂氏と父子3代に渡る国語学者として有名ですね。
