見出し画像

日本人の物語00112【人代前期】サホビメの悲劇

 サホビメが兄の陣営に入った直後、サホビメの妊娠が発覚しました。垂仁天皇はそのために討伐を躊躇してしまい、開戦が遅れている間に子が産まれました。
 サホビメは垂仁天皇に対して使者を立てて、
「この子を天皇の御子と思うならば、どうか引き取ってください」
と言いました。戦国時代ならば、こういうときこそ赤子も人質として利用するのが常識だと思うのですが、サホビメはなかなか人道的です。
 かくして、垂仁天皇側も使者を立て、サホビメから赤子を引き取ることとなりました。
 赤子を引き取るに当たり、垂仁天皇は派遣する使者に対して
「赤子だけでなくサホビメも連れてくるように。髪や服をつかむなりすれば良い」
と命じました。垂仁天皇からしてみれば、憎らしいのはサホビコだけであって、サホビメに対しては今も愛情があり、どうにかして取り返したいと思っていたわけです。
 ところがサホビメはそれを察知して、対策を練ります。あらかじめ髪を剃ってカツラをかぶり、酒に漬けて服を腐らせておきました。
 さて、垂仁天皇方の使者がやって来ました。使者は赤子を引き取ると同時にサホビメを捕らえようとしますが、髪をつかむとずるっと取れてしまい、服をつかむと破けてしまいます。こうして、使者たちは赤子を手にするも、サホビメを捕らえることができませんでした。
 報告を聞いた天皇は深く悲しみました。再びサホビメに対して使者を立てて
「赤子の名前はどうすれば良いか」
と相談しました。
 サホビメは
「火の中(戦争中といったくらいの意味でしょう)で産まれたので、ホムチワケ(誉津別)と名づけると良いでしょう」
と答えます。こうして赤子はホムチワケと名づけられ、これが次の天皇に……と思いきや、そうはならないんですよね。天皇になったのは別の兄弟です。ちょっと意外な感じがします。
 この後、いよいよ戦いが始まります。垂仁天皇は完全に城を取り囲み、火を放ちました。サホビコ方は敗北し、サホビコは城の中で戦死しました。
 一方、サホビメは天皇方の兵の前に立ちはだかり、
「私が兄の城にやって来たのは、もしかすると兄の罪が許されるかもしれないと期待したからです。それが叶わないならば、自害をいたします」
と宣言し、そのまま兄を追って自害しました。兄と夫の板挟みとなる哀れな生涯でした。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集