日本人の物語00078【神代】稲羽の素兎*
オオアナムジが兎に事情を尋ねると、兎は話し始めました。
淤岐島(おきのしま)に住むその兎は本州に渡ろうとしていたのですが、良い方法がありません。そこで、海の和邇(わに)たちを騙して並ばせ、その上を渡ろうと考えました。和邇というのは、現在のサメに当たる生き物と考えられています。
兎は
「僕ら兎と、君たち和邇のどちらが多いか競ってみよう。一族を集めて並んでくれないか」
と声をかけます。これに騙されて和邇たちが並び、兎はその上を数えながら跳ねていき、本州に辿り着きました。地面に着くまさにそのとき、兎は
「やーい、騙された」
と叫びました。するとそれを聞いた和邇は怒って兎の足を捕まえ、よってたかって皮を剥いでしまったというのです。
話を聞いたオオアナムジは、
「河口の真水を浴びて、ガマの花粉を付けて風に当たると良いよ」
と教えてあげました。そのとおりにすると、兎の容態はすぐに良くなりました。
傷が癒えた兎は、
「あなたこそが八上比売と結ばれるでしょう」
と予言し、去っていきました。
以上が有名な「稲羽の素兎」というお話なのですが、元々は「素兎(しろうさぎ)」、つまり皮を剥がれた兎という意味だったのが、いつの間にか「白兎」つまり白い兎と捉えられて定着したようです。鳥取市内には兎が倒れていたとされる伝承地があり、「白兎神社(はくとじんじゃ)」が建てられています。その神社の向かいには、兎が住んでいたという「淤岐島」があります。島というより岩に近く、とても動物が住めるものではないので、「淤岐島は別にあるのではないか、島根県の隠岐諸島ではないか」という説もあります。
さて、八十神たちはヤガミヒメに会いに行きますが、ヤガミヒメは
「私はオオアナムジと結婚するつもりです」
と言って求婚を断ってしまいます。
八十神たちは嫉妬に怒り狂い、オオアナムジを殺すことに決めました。
八十神たちはオオアナムジを手間山(鳥取県南部町)に連れていくと、
「あの山の上に赤い猪がいる。俺たちが猪を下に落とすからお前はそれを捕まえろ」
と命じました。
八十神たちは崖の上から、真っ赤に熱した岩を転がします。
崖の下で待ち構えていたオオアナムジは、その岩を猪と思い込んで立ち向かっていきました。そして岩に押しつぶされ、死んでしまったのです。





