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日本人の物語00095【神代】海幸彦と山幸彦

 今回から、ホデリとホオリの物語が始まります。
 長男ホデリには「海幸彦」、三男ホオリには「山幸彦」という別名があります。私が子供の頃には童話全集の中に「うみさちやまさち」という本があり、まさに古事記のホデリとホオリの章が絵本化されていたのですが、最近は児童教育の中に古事記が取り上げられる機会は少なそうですね。
 ホデリは「海幸彦」の名のとおり、海で魚をとって暮らしていました。
 ホオリは「山幸彦」の名のとおり、山で獣をとって暮らしていました。
 ある日、弟のホオリは
「お互いに獲物をとる道具を交換してみないか」
と提案しました。ホデリは嫌がりましたが、ホオリがしつこく頼むので、仕方なく提案に乗ってみることにしました。
 さて、ホオリは兄からもらった釣り針を使って魚を釣ろうとしましたが、ちっとも釣れません。それどころか、大事な釣り針を海になくしてしまったのです。
 一方、兄のホデリもまた、弟の弓矢を使って山で狩りをしてみたものの、ちっとも獲物がとれませんでした。
 ホデリはホオリに対し、
「やはり自分の道具でないと獲物はとれなかったな。さあ、道具を元に返そう」
と言います。ホオリは正直に釣り針をなくしてしまったことを告白しました。ホデリは激怒して、「釣り針を探してこい!」と責め立てます。器の小さい男ですね。
 困ったホオリは、自分の剣を砕いて500本の釣り針を作って差し出しましたが、ホデリは受け取ろうとしません。ホオリはさらに1000本の釣り針を作って差し出しましたが、ホデリはなおも受け取ろうとしません。「元の釣り針を返せ」の一点張りです。
 どうしようもなくなったホオリは、海辺で独り泣いていました。するとそこにシオツチ(塩椎)が現れ、どうしたのかと聞いてきました。シオツチは潮の流れを司る神と考えられます。
 事情を聞いたシオツチは、竹かごの小舟を作り、
「海の先にワダツミ(綿津見)の宮殿があります。その宮殿の前に桂の木があります。その木の上に座っていれば、ワダツミの娘がきっと取り計らってくれるでしょう」
と言いました。海の神であるワダツミとその娘に助けてもらえるというのです。
 ちなみに、太平洋戦争で戦没した学徒兵の遺稿集で『きけ、わだつみのこえ』というタイトルの本がありますが、この「わだつみ」というのは戦没者を指す比喩表現です。海で死んだ学徒兵を海の神になぞらえたのですね。
 さて、ホオリはワダツミの宮殿へと向かいます。何だか浦島太郎を彷彿とさせるストーリーです。

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