日本人の物語00082【神代】オオクニヌシの国作り
オオアナムジには「オオクニヌシ」という新たな名前が与えられました。ここからはオオクニヌシと呼ぶことにしましょう。
さて、オオクニヌシには既にヤガミヒメという妻がいましたよね。因幡の素兎を助けた結果、娶ることができたあのヤガミヒメです。そもそも兄たちに命を狙われた原因は、ヤガミヒメとの結婚をめぐる騒動でした。そのヤガミヒメがいるのに、オオクニヌシは新たにスセリビメを正妻として連れ帰ったわけです。その結果、ヤガミヒメは正妻への遠慮から、実家に帰ってしまったと記録されています。
さて、オオクニヌシは正妻だけでは満足せず、さらに別の姫にも手を伸ばし始めます。高志国(こしのくに)にヌナカワヒメ(沼河比売)という美しい姫がいると聞き、会いに出かけたのです。高志国とは後に「越の国」と書かれ、その後「越後」と呼ばれるようになります。新潟県のことですね。
ここから古事記は突如として歌物語になってしまいます。オオクニヌシがヌナカワヒメに対して詠んだ恋歌が書かれ、それに対するヌナカワヒメの返歌が書かれます。歌を何度もやり取りした結果、2人は結ばれます。一方、家で待っているスセリビメは悲しみます。悲しむ正妻との間でも、オオクニヌシが歌を詠み交わします。
歌の内容を紹介してもつまらないので、ここでは省略しますが、とりあえず古事記には歌物語のような部分があるということを知っておいていただければと思います。
古事記は、その後オオクニヌシが次々と姫を娶って次々と子を作っていく過程を描いていきます。ストーリーらしいストーリーはありません。ひたすら姫の名前と子の名前が羅列されていくだけです。退屈なところなので飛ばしてしまいましょう。
さて、オオクニヌシが出雲の美保崎(みほのさき)に来たとき、海の彼方から船でやって来る神がありました。手乗りサイズの小さな神です。オオクニヌシが名を尋ねても、その神は答えてくれず、また周囲の神に聞いても誰もその名を知りませんでした。そこでクエビコ(崩彦)に聞いてみたところ、「その方はカムムスビの子で、スクナビコナ(少名毘古那)という神です」との答えを得ることができました。カムムスビは古事記の中で3番目に登場した神ですね。過去に2度登場していますが、覚えている方は少ないでしょう。
オオクニヌシがカムムスビにお伺いを立ててみると、
「それは確かに私の子のスクナビコナである。お前と兄弟になって一緒に国作りをせよ」
との仰せがありました。こうしてオオクニヌシは、スクナビコナとともに国作りをしました……と書いてあるのですが、この国作りとやらが一体どんな作業だったのかがあまり書かれていません。自己紹介すらできないスクナビコナに、国作りとやらができるのでしょうか。
なお、スクナビコナがやって来たという美保崎は、島根半島の北東端の岬にあり、現在は「美保関(みほのせき:島根県松江市)」と呼ばれています。世界の灯台100選にも選ばれる美保関灯台があり、遠く隠岐諸島を眺めることができます。
