日本人の物語00674【鎌倉中期】悦子内親王のなぞかけ
後嵯峨上皇には悦子内親王(1259~1332)という娘がいました。徒然草第62段に、彼女が幼い頃に父の御所に赴く人に伝言として託したなぞかけ歌が取り上げられています。なかなか面白いなぞなぞだと思うので、紹介します。
そのなぞかけ歌とはこんなものです。
「ふたつ文字 牛の角文字 直ぐな文字 ゆがみ文字とぞ 君はおぼゆる」
この「ふたつ文字」「牛の角文字」「直ぐな文字」「ゆがみ文字」がそれぞれ、ある平仮名文字を表しており、答えは4文字の言葉になります。
一つ一つ考えていきましょう。
・ふたつ文字
これは、「ふたつ」というのを漢字に直してみればわかります。
「二」という漢字は、ひらがなの「こ」に似ていますね。というわけで、「ふたつ文字」とは「こ」を意味します。
・牛の角文字(うしのつのもじ)
これが一番難しいですね。牛の角に見えるような平仮名って何でしょうか。
ちょっと無理があるんですが、答えは「い」です。牛の角は2本、縦に並んでいるので「い」という文字に近いでしょう。
・直(す)ぐな文字
まっすぐな文字って何でしょう。「一」は横一線でまっすぐですが、平仮名でまっすぐというと、ちょっと思いつかないかもしれません。
答えは「し」です。「し」という文字は、現代でこそ、最後の下のあたりがくいっと右に曲がっていますが、鎌倉時代にはほとんど縦一本の線でした。
・ゆがみ文字
ゆがんだ文字といえば、おわかりですね。「く」です。
以上、4文字を並べると、「こいしく」となりますね。そう、父親のことを「こいしく」おぼゆると言っているわけです。
なかなか風流ななぞかけで、おそらくは幼い悦子内親王が自分で考えたものではなく、誰かから聞いたものでしょう。
この時代の仮名遣いだと、本来は「こひしく」と書くべきとも思われますが、そこはなぞなぞですから、厳密に考えなくてもよいのでしょう。
